1965年、神戸市長と海上幕僚長が取り交わした文書

1965年、神戸市長と海上幕僚長が取り交わした文書© zakzak 提供

小笠原理恵氏寄稿

自民党の上畠寛弘(うえはた・のりひろ)神戸市議が先月末、日本の安全保障が心配になる文書を確認した。神戸市長と海上幕僚長が1965(昭和40)年、海上自衛隊阪神基地隊に「火器・弾薬を持ち込まない」とも受け取れるような文書を取り交わしていたのだ。これで国民の生命と財産を守れるのか。国防ジャーナリスト、小笠原理恵氏が緊急寄稿した。

「自衛隊の装備や弾薬が制限されたままでは、外国からの武力攻撃や大規模テロで阪神基地隊や神戸市が襲撃された場合、防御のすべがない。東灘警察署に通報する話になる」

上畠市議は問題の文書について、こう語った。

神戸市は64(同39)年12月の市議会で、海自阪神基地隊を開設するため、「神戸港東部海面第3工区埋め立て地についての売却議案」を可決した。翌年2月、問題の確認文書が取り交わされた。次のように記されていた。

《埋立地の利用計画は変更しない。なお、火器・弾薬を集積しない》

《将来、利用計画を変更する必要を生じた場合は、あらかじめ、神戸市長と協議したのち実施する》

神戸市の人口は現在、約154万人である。日本で唯一、潜水艦を製造している川崎重工と三菱重工もある。文書をそのまま読むと、他国の弾道ミサイルから国民を守る地対空誘導弾パトリオット(PAC3)の配備もできないのではないのか。

地元では、「反戦活動家の影響で、この地区の自衛隊は弾を持ち込めないはずだが…」という噂を聞くという。

上畠市議は先月29日の市議会で、前出の文書の存在を市に確認し、「神戸市は見直しを行うべき協議に応じるのか?」と質問した。

神戸市は「利用計画変更の申し出が自衛隊側からあれば、協議を受け入れる」と回答したという。

全国瞬時警報システム(Jアラート)の訓練は神戸市でも行われている。神戸市は国民保護計画を策定して市民生活を守るために動いている。それなのに「昭和の文章」が足かせとなるとすれば本末転倒だ。

上畠市議

上畠市議© zakzak 提供

防衛省には、全国で同様の文書がないか調査してほしい。あれば早急に協議を行い、国民を守る自衛隊の能力を最大限に発揮できる態勢を整えてほしい。

■小笠原理恵(おがさわら・りえ) 国防ジャーナリスト。1964年、香川県生まれ。関西外国語大学卒。広告代理店勤務を経て、フリーライターとして活動。自衛隊の待遇問題を考える「自衛官守る会」代表。現在、「月刊Hanadaプラス」で連載中。2022年、第15回「真の近現代史観」懸賞論文で、「ウクライナの先にあるもの~日本は『その時』に備えることができるのか~」で、最優秀藤誠志賞を受賞。著書に『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』(扶桑社新書)。

小笠原理恵氏

小笠原理恵氏© zakzak 提供