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【152】過剰債務や政治問題、中国「一帯一路」で膨らむリスク

2018/09/04 11:42

 

【AFP=時事】中国は習近平(Xi Jinping)国家主席が掲げる大経済圏構想「一帯一路(One Belt One Road)」で大規模なインフラ輸出を進めてきたが、ここに来て、それを減速させる障害に遭遇している。中国に対する多額の債務を抱える一部の国では反発も生じ始めた。

 一帯一路は2013年に習氏が提唱したもので、「新シルクロード構想」とも呼ばれている。多くの国に数十億ドルを貸し付け、世界中で鉄道、道路、港湾の建設を推進する構想だ。

 しかし5年後の今、一帯一路は返済能力がない他国に中国が仕掛けた「債務のわな」ではないかとの懸念が広がっており、習氏は自らの肝煎りの構想を弁護する状況に陥っている。

 8月27日、一帯一路提唱から5年に合わせて行われた演説で習氏は、「一帯一路は『中国クラブ』ではない」と述べ、「開放的で誰でも参加できる」事業だとアピールした。習氏によると、一帯一路事業に連なる国々との貿易額は5兆ドル(約555兆円)を超え、これらの国々への中国の対外直接投資額は600億ドル(約6兆6600億円)を上回っている。

 だが、その価値に疑問を呈する声も上がり始めている。

 マレーシアのマハティール・モハマド(Mahathir Mohamad)首相は8月に北京を訪問し、200億ドル(約2兆2000億円)相当の高速鉄道計画を含む中国関連3事業を中止すると述べた。

 パキスタンでは、数十億ドル規模の中国・パキスタン経済回廊(CPEC)事業に関し、中国への債務を返済できるのかという懸念が広がる中、新首相に就任したイムラン・カーン(Imran Khan)氏が透明性を高めることを約束した。

 一方、インド洋上の島国モルディブの元大統領で、亡命中のモハメド・ナシード(Mohamed Nasheed)氏は、インド洋地域における中国の行動は「土地の収奪」であり「植民地主義」だと批判している。モルディブの債務の80%を占めているのは、対中国債務だ。

 また、スリランカはすでに中国から多額の借り入れをしたことに対する重い代償を払っている。昨年、14億ドル(約1550億円)の事業に対する中国からの融資を返済できなくなり、戦略上重要な港を中国に99年間貸し出すことになったのだ。

■「野心的なパートナー」

「中国はソフトパワーを拡大しているが、対外援助を担う高度な国際機関がない」と指摘するのは、米投資コンサルティング会社ジェイ・キャピタル・リサーチ(J Capital Research)の共同創業者でリサーチ部門を統括するアン・スティーブンソンヤン(Anne Stevenson-Yang)氏だ。「だから中国の対外援助が上手くいかないのは驚きではないが、マレーシアのように政治的問題が持ち上がることは誰も予期していなかった」

「人民元安が進む中、世界で中国は野心的なパートナーだと認識されつつある。各国はむしろ一帯一路事業を疑いの目で見るようになっている」と、同氏はAFPの取材に述べた。

 一帯一路で、開発途上国は切望するインフラ整備を手に入れ、中国は自国の過剰な生産能力の放出先と原材料の保管施設を手に入れる。

 だが、米シンクタンク「世界開発センター(Center for Global Development)」の調査によると、シルクロード基金を受け取っている8か国(パキスタン、ジブチ、モルディブ、モンゴル、ラオス、モンテネグロ、タジキスタン、キルギスタン)は、公的債務の持続可能性に「深刻な懸念」を抱えている。

 この調査によると、中国とラオスを結ぶ鉄道の事業費は67億ドル(約7400万円)だが、これはラオスの国内総生産(GDP)のほぼ半分に当たる。

 また、ジブチについて国際通貨基金(IMF)は、2014年には50%だった公債の対GDP比が、2016年は85%と大幅に増加しており、「過剰債務」に直面していると警告している。

 アフリカは長年にわたり中国投資を受け入れてきた。アフリカ大陸の過去10年間の最大の貿易相手国は中国だ。アフリカ各国は3日から北京で開催されている「中国アフリカ協力フォーラム」の首脳会議で、「一帯一路」事業についても協議する。

■批判にいら立つ中国

 中国外務省の華春瑩(Hua Chunying)報道官は8月31日の定例記者会見で、中国は各国に厄介な負債を負わせているわけではないと述べ、スリランカとパキスタンに対する中国の融資は両国の対外債務全体から見ればわずかだと主張した。さらに「欧米諸国からの融資は善意によるものだと称賛され、中国からの融資は邪悪なわなだと言われるのは理不尽だ」と述べた。

 スベンソンヤン氏は、中国の融資はドル建てとなっているが「実際にはトラクターや石炭輸出、技術サービスなどの形で貸し付けられ、受け入れ国には通貨での支払いを求めている」と指摘する。

 米格付け大手スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は、中国のインフラ事業は自国企業に20~30年にわたる設備運営など長期的な特権を付与し、現地の企業や政府と利益を分け合うよう設計されていると指摘する。

 IMFのクリスティーヌ・ラガルド(Christine Lagarde)専務理事は4月、潜在的債務問題に懸念を示し、透明性を大幅に高めるべきだとの見解を示し、「これは無料ランチではない。皆が拠出しているものだ」と指摘した。

【翻訳編集】AFPBB News