全世界のRPE読者の皆様、こんにちは!

北野です。



プーチンがウクライナ侵攻を決断した理由の一つは、


・NATOの拡大を止めること


でした。

ところが、「正反対」の結果になっています。

伝統的な中立国だったフィンランドとスウェーデンが、


「いきなり主権国家を侵略するプーチンはクレイジーだ!
NATOに入らなければ国をまもれない!」


となり、NATOに加盟してしまった。


ウクライナ侵攻がはじまった2022年2月24日、NATO加盟
国は


30ヶ国


でした。

戦争がはじまって2年ちょっとすぎた現在、NATO加盟国
は、


32ヶ国


になってしまった。

これも、プーチンの【 戦略的敗北 】の一つです。



▼NATOとロシアのパワーバランス



NATOは1949年、「対ソ連軍事同盟」として成立しました。

一方ソ連は1955年、「対アメリカ、対NATO軍事同盟」
としてワルシャワ条約機構を設立しました。

冷戦時代、欧州では、西の軍事同盟NATOと東の軍事同盟
ワルシャワ条約機構が対峙していたのです。

その後、冷戦は「アメリカ勝利で終わる」ことが明らかに
なってきました。

ワルシャワ条約機構は1991年7月に解散。

ソ連が崩壊したのは1991年12月でした。

これで、NATOは存在意義がなくなりました。


ところがプーチンがロシアを復活させ、NATOの存在意義
が徐々に戻ってきました。

特に2014年3月のクリミア併合。

もちろん、ウクライナはNATO非加盟ですので、NATOに
ウクライナを守る義務はありません。

しかし、NATO加盟国の隣にある国の領土を、ロシアがサ
クッと奪った。

そしてNATOは、事実上何もできなかった。

このことは、欧州のNATO加盟国を目覚めさせました。


欧州NATO加盟国の軍事費の総額は、2014年2350億ドル
(1ドル150円計算で35兆2500億円)でした。

(@欧州のNATO加盟国の数字です、アメリカ、カナダは
含まれません)


クリミア併合を受けてグングン増加し、2024年は3800億
ドル(57兆円)になる見通しです。

(@欧州のNATO加盟国の数字です、アメリカ、カナダは
含まれません)


10年でなんと60%以上増加しています。


さらに2014年、「NATO加盟国は、軍事費をGDP比2%ま
で引き上げよう」ということになりました。

2014年、GDP比2%以上の国は、3か国だけでした。

ところが10年経ち、2024年初時点で加盟31か国中18か国
が目標に到達しています。

(@NATOは今年スウェーデンが加盟し32ヶ国になりまし
た。)

さらに欧州のNATO加盟国全体の平均は今年、GDP比2%に
到達する見通しなのです。


このようなNATO加盟国の「軍事費爆増現象」。

これは、プーチンの侵略行為がなければ起こらなかったこ
とです。


ロシアの軍事費は2024年度、約18兆円になるそうです。



〈来年の予算案では、国防費は10兆8000億ルーブル、日
本円でおよそ18兆円でことしの当初予算の2倍以上に膨ら
みました。
また、予算案全体の3分の1近くを占め、ウクライナに対す
る軍事侵攻の長期化を見越したものとなっています。〉

(『NHK NEWS WEB』2023年11月18日)



ちなみに日本の防衛費は2024年度、約8兆円です。

ロシアは、GDPの規模が日本の約半分で、軍事費は日本の
倍以上。

どれだけ大変な負担か想像できるでしょう。


ロシアの軍事費18兆円というのは、確かに大きな数字です。

しかし、それでも欧州のNATO加盟国の軍事費57兆円の3分
の1以下。

欧州NATO加盟国57兆円にアメリカの軍事費8769億ドル(
約131兆円)を足すと188兆円になる。

これは、ロシアの10倍以上ですね。


もちろん、金はすべてではありません。

しかし、【 金=力 】というのもまた事実。


ロシアは現在、ウクライナの戦場で優勢なようです。

ですが、プーチン自身が強調しているように、この戦争は


ロシアとウクライナの戦いではなく、


ロシアと西側全体の戦い


です。

そう考えると、プーチンロシアは、かなりヤバイ戦いをし
ていると言えるでしょう。

プーチンは、しばしば核兵器による恫喝を繰り返していま
す。

最近も、

『NHK NEWS WEB』3月14日。



〈ロシアのプーチン大統領は13日に公開された国営メディ
アへのインタビューで、国家存続の危機にさらされれば



核兵器の使用を辞さない



との立場を改めて示し、ウクライナへの支援を続ける欧米
側に対して核戦力を誇示して威嚇しました。〉
ーー



これは、プーチンの「余裕のなさの表れ」と言えるでしょ
う。


そして、最重要の事実は。


プーチンがウクライナに侵攻しなければ、こんな苦境に陥
ることはなかったということです。


2018年10月、ペンス副大統領の「反中演説」から「米中覇
権戦争」がはじまりました。

2021年大統領に就任したバイデンは、「米中覇権戦争」を
継承しました。

彼は、

・クアッドを強化し
・AUKUSを立ち上げ
・IPEFを立ち上げ
・民主主義サミットを立ち上げ

着々と「反中包囲網」を築いていったのです。

「二正面作戦」を嫌うアメリカには、中国とロシア二国を
同時に敵に回す意図はまったくありませんでした。


「軍産複合体を儲けさせるためにアメリカがウクライナ戦
争を起こした」


というのは、クレムリン情報ピラミッドが流しているフェ
イク情報です。

ひっかからないように気をつけましょう。

ちなみに、ウクライナ侵攻前、アメリカ、ウクライナ側か
らの挑発がなかったこと、

故プリゴジンですら証言しています。

『TBS NEWS DIG』 2023年6月24日。



<ロシアの民間軍事会社「ワグネル」の創設者は、ウクラ
イナ侵攻について


「ロシア国防省がプーチン大統領をだまして始めた」


と主張する新たな動画を公開しました。


「ワグネル」創設者 プリゴジン氏

「国防省は国民と大統領をだましている。
特別軍事作戦は全く異なる理由で開始された」


プリゴジン氏は23日に公開した動画で、プーチン大統領が
侵攻開始にあたり、


ウクライナがNATO=北大西洋条約機構の支援を受け、ロシ
アを攻撃する脅威が高まっているなどと主張したことにつ
いて、


「そのような異変はなかった」


と否定しました。

そのうえで、ショイグ国防相や「オリガルヒ」と呼ばれる
新興財閥が「自分たちの利益のために戦争を始めた」と強
調しました。

これまでもショイグ国防相らを厳しく批判してきましたが、
今回は侵攻そのものをめぐる政権の主張を否定した形で波
紋を呼びそうです。>
.ーー



というわけで、戦場では現状優勢なロシア軍。

しかし、プーチン自身の間違った決断によって、



【 戦略的 】には【 もう負けている 】



のです。


◆重要PS

日本人には、【戦略的勝利】と【戦術的勝利】、

【戦略的敗北】と【戦術的敗北】

の違いがわかりにくいようです。

それで、「満州事変大勝利!」とか「真珠湾攻撃大勝利!

などと、【 戦略的敗北につながる戦術的大勝利 】

に歓喜してしまう。

今も、「プーチン負けてない!」などと譲らない人もい
ます。

とにかく、【 戦術脳 】から【 戦略脳 】にかえる
ことは、

日本とあなた自身を長期的に繁栄させるために絶対必要
です。

もうすぐ、この件を詳述した本を出版する予定ですので、
是非ご一読ください。


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