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【150】貿易戦争で中国の魅力薄れる-生産拠点のシフト探る米企業

2018/08/21 10:30

(ブルームバーグ): 次に買うブランド物のハンドバッグには「メイド・イン・チャイナ」のラベルは付いていないかもしれない。

  米中が貿易戦争に突入する前、サプライチェーンの分散に熱心なファッション各社はすでに中国の代替地として東南アジアに生産拠点を広げていた。

  ハンドバッグなどの中国製品に課される関税率は引き上げられようとしており、米スティーブンマデンや米タペストリー傘下コーチなど消費者向け製品を手掛ける各社にとって、生産拠点としてのカンボジアやベトナムの魅力が一段と高まりつつある。米国のトランプ政権は中国からの多くの輸入品に対する関税率を今年引き上げたが、一部のカンボジア製品は引き続き関税なしの対米輸出が認められている。

プノンペンの衣料工場

  米国アパレル・フットウエア協会(AAFA)の幹部スティーブ・ラマー氏は「シフトが進行中だ」と語る。関税絡みの話が「多大な心配」を招き、企業側は生産拠点を確保するためにどのくらい迅速に変化に対応できるか見極めていると説明する。

  米国ファッション産業協会(USFIA)が7月公表した調査資料によれば、調査に参加した全ての企業が中国から調達しているものの、67%が今後2年で中国での生産量や生産額を減らすとの見通しを示した。同業界にとって最も大きな困難は、米国の保護主義だとしている。

  カンボジア国立銀行(中央銀行)の年次報告書によると、カンボジアでは2017年にフットウエア輸出が25%増え、衣料品輸出も8%増加した。米国からの需要拡大がその一因だ。

総選挙

  関税への懸念に加え、中国で続く賃金上昇も、依然として世界で最も労働力の安い国の一つであるカンボジアにとっては追い風だ。

  ただ、AAFAのラマー氏は「残念ながら、中国からのシフトは簡単ではないというのが現実だ」とも話す。労働力の安さは必ずしも効率的な生産と同義語ではなく、カンボジアの生産性は中国と比べると低い。そして今はそこに政治が絡もうとしている。

  7月のカンボジア総選挙で与党カンボジア人民党(CPP)が国民議会(下院)の定数125議席全てを獲得したことから、米政府は「不正」選挙だと批判している。

  オックスフォード・エコノミクスのシニアエコノミスト、トミー・ウー氏は、これを受けて米国と欧州が貿易政策を見直し、「カンボジアの衣料品産業を関税面で優遇するのをやめる可能性がある」と指摘。オクシデンタル大学(ロサンゼルス)のソファル・イアー准教授(外交・国際問題)は「政治的な問題が決着するまでカンボジアでの生産拡大には注意が必要だ」と語る。

原題:Trade-War Surprise Gives Cambodia Added Appeal for U.S. Firms(抜粋)

--取材協力:Nguyen Xuan Quynh、Jinshan Hong.

記事に関する記者への問い合わせ先:シカゴ Uliana Pavlova upavlova3@bloomberg.net

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