香港やチベットの民族団体の代表者ら=令和5年4月19日、国会内

香港やチベットの民族団体の代表者ら=令和5年4月19日、国会内© 産経新聞

日本で暮らす香港人やチベット人らの団体は、日本政府代表が1月の国連人権理事会の作業部会で中国側に対し、香港やチベット自治区などでの人権状況の改善を勧告したことについて、岸田文雄首相と上川陽子外相に感謝する声明を公表した。「われわれのコミュニティにとって、公正と尊厳の追求において大きな支援となる。深い感謝の意を表す」とした。

1月31日付で声明を公開したのは、香港の民主化を目指す「日本香港民主連盟」のほか、「スチューデント・フォー・フリー・チベット・ジャパン」「在日チベット人コミュニティー」「日本ウイグル協会」「南モンゴルクリルタイ」「世界モンゴル人連盟」「アジア自由民主協議会」の計7団体。

人権理事会での日本政府の対応に関して「われわれにとって大変意義深いものとなった。人権の擁護について国際社会での日本のリーダーシップとコミットメントを示すものだ」と強調し、中国国内の人権状況の改善に向け、今後の連携を訴えた。

人権理事会は中国の人権状況を審査する普遍的・定期的審査(UPR)作業部会を1月下旬に開催。日本の本清(ほんせい)耕造ジュネーブ国際機関政府代表部大使は23日の会合で、香港について「一国二制度」の改善や香港基本法(憲法に相当)に定められた基本的権利と自由の保障を求めた。また、チベット人やウイグル人ら少数民族の権利の保護も勧告した。

米国はウイグル、チベット各自治区での個人への監視や脅迫をやめるよう求め、英国は香港国家安全維持法(国安法)の撤回を訴えた。一方、中国側は「人権問題を政治化しないよう望む」と反論していた。民族団体側によると、前回2018年に実施された対中UPRを巡り、日本政府は香港やチベットなどの民族問題に言及しなかったという。

UPRは国連加盟の各国の人権状況を数年ごとに検証する。今回中国に関しては161カ国が意見を述べた一方、勧告に法的拘束力はない。(奥原慎平)