リニア問題に国交省〝介入〟川勝知事「高く評価」JR東海とは泥沼化「国策レベルの問題、国主導で動くべき」石井孝明氏

実験線を走行するリニア中央新幹線の試験車両=昨年10月、山梨県笛吹市

実験線を走行するリニア中央新幹線の試験車両=昨年10月、山梨県笛吹市© zakzak 提供

リニア中央新幹線の東京・品川―名古屋(約285・6キロ)の静岡工区(約8・9キロ)のトンネル工事をめぐり、国土交通省の村田茂樹鉄道局長が7日、静岡県庁で川勝平太知事と面会した。川勝氏が生態系の問題などを理由に挙げて工事を認めず、JR東海は昨年12月、開業時期を「2027年」から「27年以降」に変更していた。村田局長は7日、水資源や生態系の問題におけるJR東海の対策を確認するため、国がモニタリング組織を立ち上げると説明し、川勝氏も「高く評価する」と応じた。国の〝介入〟によって、国家的プロジェクトは前進するのか。

「事業者が責任を持って(対策を)やるということだが、こういう体制があると安心」

冒頭以外は非公開で行われた面会後、取材に応じた川勝氏はこう語った。

静岡県はトンネル工事に伴って県内の水資源や生態系に悪影響を与えることを懸念。国の有識者会議は21年12月に水資源の中間報告書を、昨年12月に環境保全の報告書を取りまとめた。

川勝氏は同月、環境保全の報告書を「非常にわかりやすく書かれている」としながらも、「十分に議論されていない部分もある。不十分な点については(JR東海などに)要望し、取り残されている課題の解決を目指す」として、JR東海と議論を続ける方針を改めて示していた。

今年に入っても、神奈川県―甲府市間の部分開業案などを主張していた川勝氏に対し、JR東海が「中央新幹線計画は大変大きなプロジェクトで、誤った情報が広がると多数の関係者に影響がある」と反論し、問題は「泥沼化」の様相を呈していた。

リニアは品川―名古屋間を40分で結び、日本経済活性化やインフラ輸出の目玉として期待されている。ただ、中国も開発に力を入れている。調整役である国交省の幹部の説明に、川勝氏も一定の評価を与えているが、早期開業へ事態は進むのか。

ジャーナリストの石井孝明氏は「リニアは、地方の利害よりも、国家の技術競争に関わる国策レベルの重要な問題で、国の介入は遅すぎた。単に仲介の立場ではなく、開業に向けて主導的に動くべきではないか」と指摘した。

ウォッチで表示