「国民の信頼回復のために火の玉となる」──。昨年12月の会見で、こう訴えた岸田文雄首相(66)だが、衆院予算委では連日、野党議員から多くの疑惑を追及されて「火だるま」状態となっている。

自民党の派閥の政治資金パーティーを巡る裏金事件、二階俊博元幹事長(84)が幹事長の在任中の5年間に受け取った約50億円に上る政策活動費の使途疑惑、総理大臣就任を祝う会の自身のパーティー問題に加え、6日には盛山正仁文科相(70)が旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の関連団体から支援を受けていた疑いも浮上。はぐらかし答弁も目立つようになり、内閣支持率も再び急落し始めた。

恐ろしいのは、岸田首相が「検討する」「よく聞く」などと言っている間にも、日本の国力がどんどん落ちていることだ。

厚労省が6日に公表した2023年分の毎月勤労統計調査(速報)によると、物価を考慮した「実質賃金」は前年比2.5%減少。減少は2年連続で、減少幅は比較可能な1990年以降では、消費税率を引き上げた影響が出た2014年(2.8%減)に次ぐ。

資源高、物価高に名目賃金の上昇が追い付いていないのが主な理由とはいえ、思い出されるのは、岸田首相が掲げていた「成長と分配の好循環による新しい資本主義の実現」はどうなったのかということだ。

「岸田政権では、アベノミクスの成果の上に、新しい経済モデルである新しい資本主義の下、社会課題を成長のエンジンへと転換する中で、構造的賃上げなどを通じた成長と分配の好循環、これを実現してまいります」

2023年4月の参院本会議で、岸田首相はこう声を張り上げていたのだが、「構造的賃上げ」どころか、この2年間で実質賃金は実に14万円余も減ってしまった。

■政治は結果責任であり、逃れることはできない

岸田政権下の国力低下はこれだけではない。

OECD(経済協力開発機構)が発表した2023年版「デジタル政府指数」によると、日本は調査対象となった加盟33カ国中、31位となったのだが、「デジタル庁の機能強化」などを強く訴えていたのは岸田首相だった。

2021年12月の参院本会議でもこう言っていた。

「デジタル田園都市国家構想実現会議の下、デジタル田園都市国家構想を推進します。デジタルによる地域活性化を進め、さらには、地方から国全体へ、ボトムアップの成長を実現していきます。(略)デジタル化、デジタルトランスフォーメーションを進める司令塔であるデジタル庁の機能を更に強化します。デジタル臨時行政調査会で、デジタル社会変革の青写真を描きます」

ちなみに岸田首相は、1998年8月の衆院予算委に出席した際、こうも発言していた。

「我々政治家、大変厳しい国民の目にさらされているわけであります。国民から大変厳しい批判の声を受けながら今この難局に立ち向かわなければいけない、こんな状況にあるわけでありますが、そこでひとつ思うことを申し上げさせていただきたいと思いますのは、政治はもちろん結果責任であります。やはり結果責任であるということ、これからは逃れることができないわけであります」

その通り。政治は結果責任であり、逃れることはできない。