2025年大阪・関西万博で各国の出展準備が遅れる中、中国の積極姿勢が目立っている。海外パビリオンでは最大規模の用地を確保し、起工式には政府高官も出席した。経済成長の勢いに陰りが見えているが、万博で中国のイメージを向上させる狙いとみられる。35年の万博の招致につなげる思惑も見え隠れする。(南部さやか、北京 山下福太郎)

■パビリオンに力

 「中国パビリオンが大阪万博において最も美しい『中国の名刺』となるよう努力する」。万博会場となる大阪市の夢洲(ゆめしま)で2日に開かれた起工式で、中国国際貿易促進委員会の任鴻斌(レンホンビン)会長は力を込めた。

 中国パビリオンは万博会場のシンボルとなる環状の大屋根(リング)内の中心部にあり、敷地面積は約3500平方メートルと海外パビリオンとしては最大規模だ。外観は中国古代の書物「竹簡」をモチーフにしており、「中国の影響力を持続的に拡大し、中国の風格、精神、力量を世界に示す」(国貿促報道官)という。

 参加国が自前で建てる「タイプA」を予定する55か国の中で、2日までに着工したのはシンガポールなど3か国のみで建設の遅れが目立つ。万博招致を担当した経団連関係者は「日中関係が依然厳しい中でも、万博での中国の姿勢は前向きだ」と話す。

■「環境技術アピール」

 中国は、世界の注目を集める五輪と万国博覧会を国威発揚の場として活用してきた。

 北京では08年に夏季五輪を初めて自国開催。22年には冬季五輪も開いた。10年には上海万博を成功させた。この年は国内総生産(GDP)で日本を抜いて世界2位になった節目の年で、上海万博は経済大国になった中国を世界に知らしめる役割を果たした。

 中国経済は先行き不透明感からこのところ対中直接投資が落ち込んでいる。万博で中国の環境技術などをアピールして、「中国と各国の経済交流、民間交流の推進」(任氏)に結びつけたいとの期待がある。

 前のめりになる背景には35年の万博招致を目指しているとの見方もある。

 中国政府は公式には見解を示していないが、中国系香港紙・大公報は22年11月、35年に香港と広東省深センで万博を共同開催すべきだとする特集記事を掲載した。香港政府トップの李家超行政長官は直後の記者会見で、「検討に値する」と前向きな姿勢を示した。

 博覧会国際事務局(BIE)は23年11月の総会で、30年万博の開催地を韓国・釜山(プサン)ではなく、中東サウジアラビアのリヤドに決めた。このため35年にアジアで開催される余地が残ったとみられている。実際、招致を目指すなら、大阪・関西万博で中国が存在感を見せる必要がある。