米ハーバード大ロースクール教授のJ・マーク・ラムザイヤー氏(大森貴弘撮影)

米ハーバード大ロースクール教授のJ・マーク・ラムザイヤー氏(大森貴弘撮影)© 産経新聞

『慰安婦性奴隷説をラムザイヤー教授が完全論破』J・マーク・ラムザイヤー著 藤岡信勝、山本優美子編訳 藤木俊一、矢野義昭、茂木弘道訳(ハート出版・1980円)

慰安婦問題では2007年7月31日は日本の国家や国民への汚辱の日だった。同盟国の米国の連邦議会下院が「日本の政府や軍はアジア各地の女性を集団的に強制連行し、20万人を日本軍の性的奴隷とした」という虚構の決議を採択したからだった。

民主党多数の同下院で中国や韓国さらに米国学界の左傾反日派と結託したマイク・ホンダ議員が主導した虚偽の主張が通用してしまったのだ。

その時点でこの書が紹介するラムザイヤー教授の研究論文が認知されていれば、そんな汚辱は起きなかっただろう。本書はハーバード大学ロースクールの同教授が、慰安婦とされた女性たちが日本の公娼制度を基礎とした高額な賃金支払いを前提とする民間での任意の期限付き商業契約だったことを立証した、複数の論文を紹介している。同教授自身、日本やアジアでの貧困が不幸な売春を生んだことへの同情を示しながらも、日本の政府や軍が組織的に連行や強制をした事実はなかった点を強調している。

『慰安婦性奴隷説をラムザイヤー教授が完全論破』

『慰安婦性奴隷説をラムザイヤー教授が完全論破』© 産経新聞

だから本書は日本の国家国民へのおぞましい冤罪(えんざい)、そして汚辱を改めて晴らす第一級資料でもあるのだ。

だがさらに衝撃的なのは、ラムザイヤー教授自身への米国学界、とくに日本やアジアの研究分野の人たちからの迫害である。同教授の新論文の米側学術誌への掲載が決まった段階から同教授への脅迫に近い攻撃が始まったことを、教授自身が具体的に伝えている。その種の攻撃は、吉田清治報告や朝日新聞の慰安婦強制連行報道の虚構を無視するかのような暴論である。

さらに注目すべきは本書の報告するラムザイヤー論文の1本が、米国下院の日本糾弾決議の16年前に発表された事実である。この論文だけでも、日本軍の慰安婦が「性奴隷」でも「強制連行」でもなかったことが証される。日本側がこの種の資料を使い、早い段階で反論していれば、日本全体への汚辱も避けられたかもしれない。本書の示す教訓の一つだろう。