全世界のRPE読者の皆様、こんにちは!

北野です。



皆さんご存知のように、台湾で1月13日、総統選が行われ
ました。

勝利したのは、親日、親米、反中、独立派の頼清徳さん。

めでたいことです。

ところで、バイデンさんは総統選があった1月13日、


「台湾の独立を支持しない!」


と断言しました。

『ロイター』1月14日付。



〈バイデン米大統領は13日、米国は台湾の独立を支持し
ないと述べた。

同日行われた台湾総統選では中国と距離を置く与党・民主
進歩党(民進党)の頼清徳副総統が当選した。

バイデン氏は台湾の選挙について受け止めを問われ、



「われわれは独立を支持しない」
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^



と答えた。〉
ーーー


世の中には、


「軍産複合体を儲けさせるために、アメリカが台湾有事を
起こそうとしている」


という「陰謀論者」がいますが・・・。

彼らは、バイデンさんが、「台湾の独立を支持しない!」

と断言している事実についてどう説明するのか、実に興味
深いです。

なぜなら、バイデンが、「アメリカは台湾の独立を支持す
る!」と宣言し、

(台湾独立派の)頼清徳さんが「独立宣言」をすれば、

すぐに台湾有事がはじまり、軍産複合体は大儲けできるで
しょう?


ところが、バイデンは、「台湾の独立を支持しない」と宣
言し、独立の機運に冷や水をぶっかけています。

これでは軍産複合体が儲からなくなってしまいますね。

この手の陰謀論を信じている人がいれば、少し考えてみて
ください。


アメリカは、台湾有事を望んでいません。

ウクライナを支援し、イスラエルを支援し、台湾を支援す
る????

そんな「三正面作戦」を望むほど、アメリカ政府はバカで
はないのです。


「軍産複合体を儲けさせるためにアメリカが台湾有事を起
こそうとしている」

というのは、おそらく中国、ロシアのプロパガンダでしょ
う。



▼台湾独立を支持しないバイデンは冷酷か?



「台湾の独立を支持しない!」


この発言は、台湾の人に衝撃を与えているのでしょうか?

独立派は、ショックで寝込んでしまったのでしょうか?

そんなことはありません。

日本ではあまり知られていませんが、アメリカは1970年代
からずっと、台湾の独立を支持していないのです。

1950年代から1960年代にかけて、ソ連の脅威がとてつもな
く高まっていました。

ソ連は1957年、世界初の人工衛星スプートニク1号打ち上
げに成功しました。

そして、ソ連は1961年、世界初の有人宇宙飛行を成功さ
せています。(ユーリー・ガガーリン)

要するにソ連は当時、「アメリカを技術力で超えている」
と思われていた。


アメリカは、この巨大な敵ソ連に勝つために、「西欧、
日本との同盟だけでは足りない」と考えました。

そして1970年代初め、ソ連に勝利するために、中華人民
共和国と事実上の同盟関係になることを決めたのです。

1972年、訪中したニクソン大統領は、

「台湾に関する5原則」を提示しました。

5原則とは、


・中華人民共和国を唯一正当の政府として認め台湾の地位
は未定であることは今後表明しない

・台湾独立を支持しない

・日本が台湾へ進出することがないようにする

・台湾問題を平和的に解決して台湾の大陸への武力奪還を
支持しない

・中華人民共和国との関係正常化を求める


2番目の原則は「台湾の独立を支持しない」です。

ここから52年間、アメリカは一貫して、


「台湾の独立を支持しない」という約束を守っています。


だからアメリカは、いつでも


「一つの中国政策を支持する」


と繰り返しているのです。

では、アメリカと中国の対立点は、何なのでしょうか?

アメリカは、「武力による台湾統一」に反対しているので
す。

アメリカの台湾政策をまとめると、


・台湾の独立を支持しない

・しかし、中国による武力侵攻に反対


となります。



▼アメリカの対中政策は「バランス・オブ・パワー」の回
復と維持



・台湾の独立を支持しない

・しかし、中国による武力侵攻に反対


すっきりしない対中、対台湾政策ですが。

なんなのでしょうか?

アメリカの対中政策は、リアリズムによる「バランス・
オブ・パワー」政策です。

どういうことでしょうか?

アジアのパワーバランスは、中国が強くなりすぎて崩れて
いました。

そこでアメリカは、バランス・オブ・パワー(勢力均衡)
を回復しなければならない。

具体的には、


・日本の防衛費を倍増させ、強化する

・クアッド(日本、アメリカ、インド、オーストラリアの
戦略対話)の強化

・AUKUS(アメリカ、イギリス、オーストラリアの軍
事同盟)立ち上げ

・IPEF(インド太平洋経済枠組 = 中国抜きの経済枠組
み)立ち上げ

・民主主義サミット立ち上げ


などを通して、崩れていた「バランス・オブ・パワー」を
回復していったのです。

台湾に関しては、

上記の動きと台湾への武器支援強化によってバランスを回
復していきました。

その一方で、「台湾の独立を支持しない」と宣言すること
で、

習近平に台湾侵攻の口実を与えなかったのです。


アメリカの動きは、

バランス・オブ・パワーの回復と維持による、

「封じ込め政策」です。


要するにアメリカは、ソ連を封じ込めたように、長い期間
現状を維持することで、中国をつぶそうとしているのです。

ソ連は、内部から崩壊しました。

そして、中国も


・国家ライフサイクルで高成長の成長期が終わり、低成長
の成熟期に入ったこと

・習近平が、奇跡の経済成長を実現したトウ小平を軽蔑し、
毛沢東を尊敬する、究極の経済音痴であること

・人口が急減していくこと(2050年には半減し7億人台ま
で減る?!)↓
https://news.yahoo.co.jp/articles/58059f0902238abe85158c6cfcb48b74af43888f?page=3


で、衰退に向かっていきます。

というわけで、日本、アメリカ、欧州、オーストラリアな
どは、

戦わずして中国の現体制を崩壊させることができるのです。

だから、アメリカは中国との戦争を望んでいません。


めちゃくちゃシンプルでわかりやすい陰謀論は、とても魅
力的です。

しかし、少し考えれば、矛盾だらけで、


「クレムリン情報ピラミッド」

「中共情報ピラミッド」


が出所だったりしますので、気をつけましょう。

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◆Fさまからのメール


北野幸伯 様

いつも気付きを与えて頂けるメルマガに
勇気付けられて居りますメルマガ読者のFと申します。

今年もメルマガ配信を続けて頂き有難うございます。

今回の総統選挙で民進党の総統が3期目となりますね。

過去の台湾総統選結果は、続いても2期連続で、
3期目の総統選挙では揺り戻し現象が見られ
振り子がアッチ行ったりコッチ戻ったりの政権交代でしたが、
民進党の総統が3期続いた背景には、
北京への怖れがあるのだろうと思っています。

1997年の香港返還時には50年間の一国二制度が約束され
てましたが、雨傘運動への強硬手段を『今日の香港は、
明日の台湾』と捉えて、「中国との統一が齎す思想弾圧」
が台湾の人々の心に刻まれた筈でした。

ところが、今回の選挙では『目先の経済的出口』と言う
ニンジンに釣られ、民進党支持が大きく減ってしまった
選挙戦となってました。
(台湾立法議会で民進党は第2勢力に墜ちてしまった)

詳しく調査した訳では無いですが、選挙前からのTV報道
などで、農家や漁業関係者などが「中国との関係悪化で
収入が減った」そうインタビューに答えてたのが印象に
残ってます。

香港に度々渡航してたビジネスパーソンならば、
この10年で変わってしまった香港の自由を目の当たりに
してる筈で、相変わらず『習近平政権は怖い』と感じて
ると思います。

やはり『正確な情報』が重要なのだろうなと思った選挙
結果でした。

民進党に対するフェイクニュースも台湾では流れてたと
言われます。

<例>民進党政権で犯罪が増えた(実際には犯罪率は減
少した)

<例>台湾では使われてない簡体字の民進党批判的なニ
ュース

我々は北野先生のお陰で
是々非々での視点で各政権を捉える眼を養って頂いてま
すが、それでも判断基準が『目先の損得』に流されがち
な愚凡の徒でもあり、中々『個々の立候補者の公約を精
査して投票』とはなって無い気がします。

(心の何処かで『あの民主党政権時の二の舞はゴメンだ』
が働いてる)

それが今の日本で起きてる政治腐敗の元凶なのかも知れ
ません。

(台湾で目先の利益に釣られて安直な投票を行った方々
と五十歩百歩)

香港雨傘運動のシンボル的存在だった周庭さんが、
香港の未来に絶望してカナダ移住を決めるしか道が無か
った現実、それを台湾に住む人の半分は忘れてしまった
のだろうか?


『習近平体制の北京政府を甘く見てはならない!』


改めて、そう感じた台湾の選挙結果でした。