どう見ても統計の死者増加数を隠蔽している

2022年12月7日、中国政府は新型コロナウイルス感染症(略称:COVID-19)に対し都市封鎖などの強硬手段によって感染を封じ込める「動態清零(ゼロコロナ政策)」を取り止め、『新型コロナウイルス感染症の流行に対する予防・管理措置の実施の更なる最適化に関する通知』(略称:「新十条」)を発表して、COVID-19の存在を認めた上で感染防止対策と社会経済活動の同時進行を図る「ウイズコロナ政策」へ方向転換することを表明した。

「中国疾病預防控制中心(中国疾病予防管理センター)」は中国政府「国家衛生健康委員会」傘下の「国家疾病預防控制局」直轄の事業機関である。その中国疾病予防管理センターが2020年1月21日から毎日発表して来た『新型コロナウイルス肺炎流行最新状況』の2022年12月7日24時までの数値を見ると、全国(31の省・自治区・直轄市)における累計の死者数は5235人、累計の感染者数は35万4017人であった。

この累計とは2020年1月に湖北省武漢市でCOVID-19の患者が確認されてからの累計であり、死者は過去2年間の累計がわずか5235人であるという意味である。

そこで、『新型コロナウイルス肺炎流行最新状況』に記載された累計死者数の時間的経過を示したものが表1である。

■表1 中国・新型コロナウイルス感染症の公式死者数

中国当局発表数字は明らかに欺瞞だ、実は厖大、新型コロナウイルス感染症による死者数

中国当局発表数字は明らかに欺瞞だ、実は厖大、新型コロナウイルス感染症による死者数© 現代ビジネス

死者数の累計が2年間で5235人であった理由は表1を見れば一目瞭然である。即ち、2020年5月16日から2021年1月12日までの約8か月間は累計死者数が4636人で固定されていたのだった。これと同様に2022年6月15日から11月16日までの5ヵ月間は累計死者数が5226人で固定されていた。

中国疾病予防管理センターが累計死者数を長期間にわたって変えることなく固定した理由は何だったのか。恐らく、それは上部組織からの命令に唯々諾々として従っただけなのだろうが、もしそうなら悲しい話である。

感染状況の数字も作為的に統計か

ところで、国家衛生健康委員会は2022年12月26日付で当初から使って来た「新型コロナウイルス肺炎」という名称を「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)」に変更した。2023年12月時点で中国疾病予防管理センターのサイト上に掲載されているCOVID-19の説明文の要約は以下の通りだ。

新型コロナウイルス感染症とは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2、以下「新型コロナウイルス」)によって引き起こされる感染症。 新型コロナウイルスは紫外線や熱に敏感で、エーテル、エタノールなどの脂溶性溶剤でウイルスを効果的に不活化することが可能。 人混みは一般的に影響を受けやすく、主な感染経路は、呼吸器飛沫や密接な接触、比較的密閉された環境でのエアロゾル感染であり、ウイルス汚染アイテムとの接触後に感染することもある。 現在、国内外で主流となっているオミクロン株は、潜伏期間が2〜4日と短く、感染力が強く、感染速度が速く、病原性は弱まり、免疫逃避能力<注>が強くなっています。

 

<注>「免疫逃避能力」とは、ワクチンで得た抗体が効かなくなる能力を意味する。

名称変更後の『新型コロナウイルス感染症流行最新状況』は2023年1月8日分まで毎日発表されていたが、1月9日からは『全国新型冠状病毒感染疫情况(全国COVID-19流行状況)』が4月末まで3~5日置きに発表されるようになった。これは1月8日に中国における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の伝染病としての分類が「乙類甲管」から「乙類乙管」へ引き下げられたことに伴う変更であり、日本が2023年5月8日にCOVID-19の感染法上の扱いを2類から5類へ引き下げたのと同様の措置であった。

さらに、5月以降の『全国COVID-19流行状況』は毎月の上旬に前月の流行状況をまとめて発表するようになった。そこで、2023年5月から11月までの「全国COVID-19流行状況」で発表された新規重症患者数と死者数を取りまとめると表2の通りである。

■表2 全国新型環状病毒感染(COVID-19)流行状況(単位:人)

中国当局発表数字は明らかに欺瞞だ、実は厖大、新型コロナウイルス感染症による死者数

中国当局発表数字は明らかに欺瞞だ、実は厖大、新型コロナウイルス感染症による死者数© 現代ビジネス

表2を見れば分かるように、COVID-19の新規重症患者数と死者数はいずれも月を追う毎にほぼ減少しており、2023年の5月から11月までの7カ月間で新規重症患者数と死者数は共に95パーセント減少している。

しかし、上述した表1の累計死者数からも分かるように、これらの数字は作為的に作られたものと考えられ、中国におけるCOVID-19流行の実態を正しく反映しているものではない。中国の統計データは国家統計局の数字さえも信憑性に欠けているので、上記の数字も中国政府の指示を受けて歪曲されているはずであり、中国国民自体が政府発表の統計数字を信じていないのが実情である。

 

洩れ伝わる情報では火葬場はどこも満杯

ところで、中国のニュースサイト「第一財経」は12月19日付で、「新型コロナウイルスJN.1変異株は同系のウイルスが変異したもので、公共衛生の危険性は比較的低い」と題する記事を掲載した。

それによれば、11月以来JN.1変異株が世界中で蔓延しているが、中国でも11月に最初のJN.1変異株が発見されて以来、12月10日までに中国国内で7例目のJN.1変異株を確認したという。権威筋によれば、JN.1変異株はこれまでの変異株に比べて、免疫をすり抜ける能力が高く、感染拡大能力も強い由で、世界における感染比率は11月初旬に約4パーセントだったものが、12月初旬には約30パーセント前後まで増大したと言われている。

JN.1の流行と時期を合わせたかのように、中国では11月以降、レントゲン撮影で肺が白く写り、肺の白い部分がウイルスなどに侵されて機能しなくなる「白肺症候群」が小児を主体として流行し、死者が増大しているという。中国の「白肺症候群」はJN.1に感染した可能性が高いと考えられるが、中国政府は「白肺症候群」はCOVID-19(即ち、JN.1)とは無関係との立場で、「白肺症候群」の死者はCOVID-19の死者には算入していないのだ。

では実態はどうなのか。

中国では情報統制がますます厳しくなり、中国国内のCOVID-19に関する情報がニュースとして報じられる可能性はほとんどない。しかし、その間隙を縫って2023年12月中旬に各種のニュースサイトから漏れ伝わってきた情報を取りまとめると以下の通りとなる。

重慶市のCOVID-19感染は極めて深刻な状況にある。COVID-19による死者は非常に多く、「殯儀館(葬儀場)」はどこも満杯の状況にある。火葬場で荼毘(だび)に付す遺体は通常時に比べて極めて多く、「悼念庁(告別式や追悼会を行うホール)」は人の波で埋まり、立錐の余地もない程である。ある市民によれば、彼の友人がCOVID-19で亡くなったが、友人の家に近い石橋鋪火葬場は悼念庁が満杯だったので、少し遠方にある江南火葬場で友人を見送ったという。

 

河南省南陽市の市民である周さんによれば、同市の火葬場では火葬炉の焼却能力が死者数に追い付かない状態が続いているという。ある火葬場には火葬炉が8基あり、全ての炉を24時間稼働させて遺体の焼却を行っているにもかかわらず、遺体が次々と運び込まれるので、遺体が溢れて焼却が間に合わない状況にある。従来ならば、火葬場は午後に遺体焼却を行わないのが慣例だが、そんなことを言っていられないのが実情である。

南陽市では、この2、3年に民営の火葬場を併設していない「殯儀館(葬儀場)」が少なくとも5軒開業したが、いずれも繁盛している。それというのも、遺体を火葬場の火葬炉で焼却するのは順番待ちであり、待ち時間が長いことから、人々は民営葬儀場の「停屍房(霊安室)」に遺体の入った棺桶を置いて時間待ちをするし、待ち時間が長い時には棺桶に入った遺体を冷凍庫で保管することになる。

医療関係者は口裏を合わせている

医療関係者は「統一口径(口裏合わせ)」で「新型冠状病毒感染症(COVID-19)」とは言わずに、高血圧や糖尿病といった基礎疾患を持つ患者がインフルエンザを併発したことにして処理している。

この点についてある医師は「現在は“統一口径”を命じられているので、病気とCOVID-19との因果関係を発言することは禁じられている。患者がCOVID-19に感染しているか否かの検査を要求されても応じないように命じられているが、実際のところ、患者たちは誰もがその病気がCOVID-19であることを知っている」と述べている。

1年前の2023年1月9日に河南省「健康衛生委員会」主任の闞全程は2023年1月6日までに河南省の人口の89パーセントがCOVID-19に感染したと言明した。これが本当なら、河南省の人口は約1億人だから、8900万人の省民が2023年1月6日までにCOVID-19に感染したことになる。

2023年11月以降、JN.1変異株の感染による「白肺症候群」が中国で流行しているが、これはCOVID-19の蔓延であり、COVID-19の感染が新たに再拡大したことにより多くの死者が発生していると見るべきだろう。

そして、中国の国産ワクチンに関する不安もニュースサイト情報から伝わってくる。

2023年12月1~3日に麗珠医薬集団、石薬集団、神州細胞(Sino Cell Tech)、雲南沃森生物技術、康希諾生物(Can Sino Bio)の5社が製造するCOVID-19ワクチンが中国政府の承認を取得し、緊急納入されてすぐにも接種に供されることになった。しかし、中国ではこれ以前にすでに10種類ものCOVID-19ワクチンが承認されていることから、中国国民はこれら全てのワクチンの安全性に対して不安を感じているという。

北京市民の彭さんは次のように述べた。即ち、一般的にワクチンの生産には時間がかかるだけでなく、その過程が重要であり、臨床試験を経て有効性が認められて初めて製品化され、国家承認を経て実用に供されるべきである。それに加えて、中国のワクチン生産は技術的に遅れていることから、人々は中国製COVID-19ワクチンに対して懐疑的である。聞くところによれば、国産ワクチンを接種した子供の一部は糖尿病を発症した由で、ワクチン接種は心配の種と言える。

一方、湖南省の簫さんは次のように述べている。ワクチンの開発には通常8~10年が必要とされるが、中国政府はワクチンの開発を急き立てるので、その結果としてワクチン接種後に出現する後遺症が極めて多いのが実情である。昨年(2022年)のワクチンは後遺症が出現しており、我々の身近でも人が所構わず転倒するという新種の脳梗塞が発生している。また、多くの子供が頻繁に高熱を発して入院を余儀なくされるが、これもワクチン接種による免疫力の低下が原因ではないのか、と。

このように中国語のニュースサイトや各種情報を総合すると、中国国内ではCOVID-19の流行が再燃し、全国各地でCOVID-19による死者が爆発的に増加しているように思える。

ゼロコロナ廃止から2カ月間で死者200万人増

2023年8月25日付のロイター通信によれば、8月24日に米国のフレッドハッチンソンがん研究センター(Fred Hutchinson Cancer Research Center)が発表した調査結果によれば、中国ではゼロコロナ政策を廃止した2022年12月から2023年1月までの2ヵ月間の死者数が例年の水準を200万人近く上回ったという。

これが事実であり、中国国内の実態だとすれば、中国でCOVID-19の感染が始まった2020年1月から2024年1月の現在までの4年間に累計の死者数はどれほどになっているのか。

その実数が明らかになった暁には中国国民の反発を受けて、中華人民共和国という国家の存亡を左右する可能性も否定できないのではないだろうか。

そもそもCOVID-19は中国起源であり、何らかの人為的ミスによりウイルスを流出させたが、汚染防止の対処を誤り、その事実を隠蔽するのに失敗した結果として、COVID-19を世界中に蔓延させた責任は中国政府にあるはずである。中国政府は世界各国に対してCOVID-19の蔓延によって生じた損失を賠償する必要があるのではないだろうか。

中国政府に彼らの重い責任を頬被りして、知らぬ顔の半兵衛を決め込むことを許してはならないと思う。