このままでは〝世界のカモ〟米国が岸田首相「国賓招待」のウラ 狙う7・5兆円のウクライナ支援と「台湾有事」の中心的役割

このままでは、日本はますます「世界のカモ」となりかねない。来春、岸田文雄首相を国賓招待し、議会演説も用意するという話が米国側から出て調整が進められている。

岸田演説を、進んで聴きたいという米議員はいない。にもかかわらず、なぜ「岸田特別厚遇」なのか。狙いは明らかだろう。

12月中旬現在、米国のウクライナ支援予算750億ドル(約10兆円)は底を尽きかけており、ジョー・バイデン政権は500億ドル(7・5兆円)の追加予算を通すよう議会に働き掛けている。

しかし、①ウクライナ問題は本来、欧州NATO(北大西洋条約機構)諸国の守備範囲であり、バイデン氏が尻をたたくべきは欧州同盟国であって米議会ではない②バイデン政権の甘い対応で不法越境者が激増し、「崩壊状態」にある南部国境の管理強化にこそ予算を当てるべき―などと主張する共和党強硬派が強く反対し、予算成立の目途は立たない。そこで、「岸田首相を持ち上げて日本に出させよう」というわけである。

 

ちなみに、日本の昨年度の税収(国税分)は総額約71兆円。7・5兆円といえば、その9分の1に当たる。到底、応じてよい話ではない。

日本としては、「ウクライナは欧州NATO諸国の守備範囲」論と同じ意味で、「台湾は日米同盟の守備範囲」との立場を打ち出し、ウクライナ支援は一歩引かせてもらうが、その代わり「台湾有事」を見据えた抑止力強化で日本は中心的役割を果たす、といった腹の決め方が必要だろう。

無論、言葉だけでなく、南西諸島の防備強化、日米台合同軍事演習などの形で行動を取らねばならない。

中東政策も、従来の「八方美人」外交を脱するべきである。

「パレスチナ支援金」も、一般住民の生活向上ではなく、腐敗したパレスチナ暫定統治機構幹部の懐に入ったり、テロ活動支援に流用されている部分が大きい。

独自核抑止力が必要

米議会では、そうした報告が多数出されており、日本政府に調査能力がないのであれば、同盟国の情報を活用して、対処の仕方を変えるべきである。

島田洋一氏

島田洋一氏© zakzak 提供

岸田首相の「核廃絶独り相撲外交」も、首相国連演説のたびに屋上屋を架す「賢人会議」設置や「研究資金」拠出など、何の展望もないまま、貴重な税金を浪費し続けている。

北朝鮮、中国、ロシアという「危険な核保有国」に囲まれた日本にとって、今必要なのは、むしろ独自核抑止力の整備だろう。

■島田洋一(しまだ・よういち) 福井県立大学名誉教授。1957年、大阪府生まれ。京都大大学院法学研究科博士課程修了。専門は国際関係論。同大助手などを経て2003年、福井県立大学教授。23年より現職。北朝鮮による拉致被害者の支援組織「救う会」副会長。著書に『3年後に世界が中国を破滅させる 日本も親中国家として滅ぶのか』(ビジネス社)、『アメリカ解体 自衛隊が単独で尖閣防衛をする日』(同)、『腹黒い世界の常識』(飛鳥新社)など多数。

『腹黒い世界の常識』(飛鳥新社)

『腹黒い世界の常識』(飛鳥新社)© zakzak 提供