日本保守党の大阪街宣〝大混乱・中止〟の裏、夕刊フジが追跡 「人が倒れている」と通報も搬送者なし

街頭演説する(左から)河村氏、百田氏、有本氏© zakzak 提供

ベストセラー作家の百田尚樹氏と、ジャーナリストの有本香氏が立ち上げた「日本保守党」が11日、大阪・梅田で初めてとなる「大阪街宣」を行った。ところが、大阪府警が、想定以上の人が集まって危険があるとして中止を要請し、わずか30分で終了した。「人が倒れている」との通報が府警にあり消防車と救急車計23台が出動したが、搬送者は確認されていない。SNSでは、聴衆の安全確保に問題があったとの指摘がある一方、日本保守党の支持者らからは、通報が「街宣妨害」を目的としたものだったのではとの声もある。大混乱の現場で何が起きていたのか。府警や消防を取材した。

「(府警)曽根崎署から『今非常に危険な状態が近づいている』ということで、『中止してください』という要請がありました」

街宣が始まってから二十数分後、代表の百田氏はこう、聴衆に異常事態を告げた。

百田氏と事務総長の有本氏、共同代表の河村たかし名古屋市長が顔をそろえて大阪・梅田で行われた街宣は、同党の想定以上の人々が集まったため、午後6時開始の予定を繰り上げて5時50分ごろに始まった。

当初は静かだった現場に異変が起きたのは、スタートから約10分後。消防車のサイレンが演説の声をかき消すように鳴り響いた。その後も現場周辺に集まる消防車や救急車の数は増え続けた。曽根崎署の要請を受けた百田氏が冒頭の発言を行い、間もなく街宣が終了した。

大阪市消防局に当時の状況を聴くと、午後5時54分ごろに府警本部から、街宣現場に「負傷者が多数いる」との連絡があり、消防車と救急車計23台が出動した。搬送者は確認されなかったという。

現場を管轄する曽根崎署によると、5時49分ごろ、通行人から、街宣が行われていたヨドバシカメラマルチメディア梅田前付近の歩道橋で「人が倒れている」と通報があり、消防に連絡したという。

同署は、中止要請の理由について「かなりの人数が集まり、雑踏事故が起きそうだったので、こちらから『中止も検討してください』と投げかけた」と説明する。

結果的に事故は起こらず、負傷者も確認されなかった。SNSでは通報について「妨害する意図があったのでは」とする声の一方、「雑踏での警備をおろそかにしている」との批判もある。

曽根崎署は「人が大勢集まっており、悪意のあるものとは考えづらく、一概に『いたずら』ととるのは難しい。演説者にも(消防車などの出動について)説明し、納得いただいている」と話した。

有本氏は夕刊フジの取材に「当日は河村氏率いる地域政党『減税日本』のスタッフや大阪のボランティアが多数警備に入ったが、想定をはるかに超える人が集まり、一部で通行が滞る場所も出てしまった。サイレンで演説が聞こえなくなったので中断を決めた。より多くの人を配置すべきだったことが反省点だ。不可解なのは『街宣をやめます』と言った途端にサイレンがやんだことだ。通報も悪意のある虚偽通報ならば憲法で保障されている権利(集会や言論、表現の自由)の侵害になるので気になる。ただ、警察の方から説明を受け、面識もできた。他の街宣を経験している周辺施設からもいろいろ教えてもらった。大阪は百田氏が生まれ育った街で、豊かな街でもある。大阪が元気になれば日本も元気になれる。今回の反省点を踏まえ、大阪でまた開催することを検討したい」と語った。