沖縄県石垣市は30日、尖閣諸島周辺で海洋調査を実施した。環境保全を目的とするもので、昨年1月に続いて2回目。今回は、読売新聞など一部メディアの記者も同行した。海上保安庁と同市によると、2012年9月の国有化以降、同海域を航行する行政機関の船に報道陣が同乗するのは初めて。市は収集したデータを基に、希少な野生生物の保護対策を検討する。(今村知寛)

沖縄県石垣市の尖閣諸島・魚釣島(奥右)を作業船「新世丸」からドローンで調査した乗組員(30日午前8時30分、尖閣諸島沖で)=今村知寛撮影© 読売新聞

 同市の中山義隆市長や、市が調査を委託した東海大調査員らが乗船した作業船「新世丸」(997トン、乗員34人)は30日午前7時50分頃、同諸島・魚釣島の南沖約3キロの海域に到着した。調査員がドローン(小型無人機)を島の300メートル手前まで数回飛ばし、陸上を撮影するなどした。

 調査では、魚釣島などへのごみの漂着や繁殖したヤギの食害による植生への影響を確認する。周辺海域での魚の数や水温、塩分などの水中環境も調べる。

 同日夜に石垣市の石垣港に帰港する予定。中山市長は29日、報道陣に「周辺海域や陸上も含めて有効に利活用していこうと考えており、基礎的なデータを集めていきたい」と語った。

 こうした動きを見張るかのように、中国海警局の船が30日午前4時頃、同諸島の接続水域(領海の外側約22キロ)を航行していた新世丸に接近してきた。新世丸からは、海警船の赤い灯火も目視で確認できた。

 第11管区海上保安本部(那覇市)によると、同日午前6時7分頃、尖閣諸島・南小島沖の領海に海警船1隻が侵入。新世丸に接近する動きを見せたため、海保の巡視船が間に入って新世丸の安全を確保し、領海から退去するよう呼びかけを続けた。

 海警船はその後離れたが、調査中の午前10時20分頃から、1隻が目視できる距離に近づいてきた。海保の巡視船2隻が間に入って近づかせないようにした。

 日本政府は同日、中国海警船の領海侵入を受け、中国側に外交ルートで抗議した。

 中国海警船の活動は年々エスカレートしており、接続水域内で確認された日数は昨年、336日と過去最多を更新。同年12月には海警船の連続領海滞在時間が国有化以降で最長の72時間45分に及んだ。