2年8ヵ月ぶりに「中国を離れた」、習近平の「焦り」

9月15~16日に行われた上海協力機構(SCO)首脳会議(サミット)では、習近平が2年8ヵ月ぶりに中国をはなれて外遊に出たこと、そしてロシアがウクライナに対して侵略戦争を始めて以降、はじめてプーチンが習近平と会談することで注目を浴びた。

だが、このSCOにおいて、習近平が提唱した一帯一路の立て直しを図ろうとしている点にも注意が必要だ。

まずは、今回のサミットで打ち出された「サマルカンド宣言」で気になる部分をちょっと拾ってみる。

「SCO憲章の原則を基に、集団化、イデオロギー化、対抗的思想で国際・地域問題を解決しようとすることに反対する。伝統・非伝統領域の安全脅威と挑戦に包括的に対応することを堅持する。SCOメンバー各国の意見を考慮し、相互尊重、公平正義、協力ウィンウィンの新型国際関係と人類運命共同体を実現させることが重要な意義であることをここに繰り返す」

「カザフスタン、キルギスタン、パキスタン、ロシア、タジキスタン、ウズベキスタンは中国の打ち出した一帯一路に対し、改めて支持を行い、一帯一路とユーラシア経済連盟建設をリンクさせることを含めて、一帯一路を共同に実施していくことを支持した」

これは「大ユーラシアパートナー関係」だ、と

それだけではない。宣言には以下のようにもある。

「メンバー国は地域・国家、国際組織など多極的メカニズムの潜在力を利用し、国際法原則および国家利益を顧み、ユーラシア地域に広汎で、開放的で互恵互利の平等な協力空間を作るべきだと考えている。特に、ロシアがSCO、ASEAN国家およびその他の関係国とも多極的なメカニズムに参与し、大ユーラシアパートナー関係を構築する提案をしたことにメンバー国は注目した」

「メンバー国は、SCO実業家委員会と銀行連合体がポテンシャルを発揮させ、さらに協力して連合のイニシアチブを発揮し、SCO地域の金融、ハイテク、交通・通信インフラ、エネルギー、投資、中小企業などの領域でプロジェクトを実施させる。融資保証をより完全にし、組織投資のポテンシャルを十分に発掘する必要があり、さらに継続して、SCO開発銀行及び発展基金の設立にむけて協議を進める」

「メンバー国は、交通領域の協力継続が重要な意義を持つと強調。国際道路、鉄道交通路線の新敷設、回収、交通回廊を打ち出し、国際物流、貿易、観光センターを設立。そこにデジタルやイノベーション、省エネ技術を導入し、国際先進経験をもとに最適化した通関手続きによって、効率的なSCOメンバーによる国境を越えた輸送潜在力をもつインフラ協力プロジェクトを実施する」……。

これはいったい、何を意味するのか。じつはそこには習近平の焦りが隠されている。

起死回生の「一手」

習近平が次の党大会で総書記、国家主席、中央軍事委員会主席をそのまま継続する確率はいまのところ非常に高い。

が、同時に、習近平の政策が失敗であったという認識は党内でも広がっている。

特に党規約にまで盛り込んだ「一帯一路」プロジェクトが資金ショートでとん挫し、また「債務の罠」という批判を国際社会から浴び、チャイナ・マフィアがプロジェクトに入り込んでオンライン詐欺や麻薬密売、人身売買にも利用されているということが暴露され、そのイメージは落ちるところまで落ちた。

これを立て直すことが、いま習近平にとっては権力維持のために必要なのだ。

このため、習近平は昨年の国連総会で打ち出した「グローバル発展イニシアチブ(GDI)」と一帯一路をセットにすることで、そのイメージを挽回しようとしているわけだ。

後編記事『習近平が「米国排除」へ…! “ロシア“弱体化”のウラで「反米同盟」強化で、日本、韓国、シンガポールが「中国と決別する日」…!』では、いま国際社会で起きている“最前線”をレポートしよう。