【ワシントン=黒瀬悦成】米国務省は12日、大量虐殺や残虐行為の防止に関する議会向け年次報告書を発表した。報告書は、中国による新疆(しんきょう)ウイグル自治区での人権侵害を米政府が「ジェノサイド」(民族大量虐殺)であると認定したことを明記した。

ブリンケン国務長官は記者会見で、中国に加えミャンマーやエチオピア、シリアなど「特定の国での残虐行為について、今年の報告書で初めて直接かつ詳細に記述した」と述べた。

ブリンケン氏は、米政府が外交や対外援助など「全ての手段を使って世界各地の残虐行為の防止と低減に向けて政府全体で取り組んでいく」と強調した。

報告書は、中国が新疆ウイグル自治区で引き続き、ウイグル族など人種・宗教的少数派に対してジェノサイドを実施し、人道に対する罪を犯していると指摘した。ポンペオ前国務長官が1月に中国によるウイグルでのジェノサイドを初認定したことをブリンケン氏も継承する立場を示した。

人道に対する罪の具体例としては「投獄、拷問、強制不妊手術、迫害」などを列挙した。米政府が対抗策として新疆ウイグル自治区産の綿花の輸入禁止措置をとったことも指摘した。

国務省高官は、中国政府が米国や欧州連合(EU)などによる新疆ウイグル自治区での現地調査の要求を拒否していることに関し「中国の姿勢を遺憾に思う」と強調。国際社会と連携して中国に態度変更を迫る方向で圧力をかけていくと表明した。