Mike Bird

2019/06/12 07:22

 

――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」

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 日本は不要かつ経済に打撃を与える消費増税を回避する最後のチャンスを台無しにしている。

 自民党は7日、7月の参議院選挙に向けた公約を発表。その中で10月に消費税を8%から10%に引き上げる方針を改めて表明した。日本の一般政府債務は昨年、国内総生産(GDP)比で4.2%だった。

 自民党の公約により、衆議院が解散総選挙となる見込み(実施なら消費増税が延期されるかもしれない)は一段と薄れた。日本経済新聞は週末、政府が夏の参院選と合わせて衆院選も行う衆参同日選挙を見送る方向が強まってきたと報じた。

 安倍晋三氏が2012年に首相の座に返り咲いて以降、日本経済は1990年代初めのバブル崩壊以降で最長となる名目成長を記録している。同期間における東証株価指数(TOPIX)の値上がり率は、米国を除き、主要先進国を上回っている。この勇気づけられる記録に、いま歯止めをかける差し迫った必要性は見当たらない。

 前回消費税率が引き上げられた2014年には、景気の腰折れを招いた。現在の成長率はさらに弱まっている一方、国際情勢は不確実性が高まっている。日銀が増税の衝撃を和らげる可能性はさらに低そうだ。

 経済協力開発機構(OECD)など一部の国際金融機関は日本に対し、財政面での自己破壊的行為を促している。OECDは基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化達成には、消費税を2026%に引き上げる必要があると指摘しているが、そのような大幅な増税が経済をどん底に突き落とすことには触れていない。

 国際通貨基金(IMF)の元チーフエコノミスト、オリビエ・ブランシャール氏と共同著者の田代毅氏は、先月ピーターソン国際経済研究所(PIIE)が発表した研究論文で、一段と現実的な見解を示している。日本がすでにぜい弱な成長率をさらに下押しすることを望まないのであれば、今後何年にもわたりプライマリーバランスを赤字とする(もしくは赤字を拡大する)必要があるかもしれないと述べている。借り入れコストがゼロ近辺にある状況で、日本はそうする余裕があるというのだ。

 財政赤字削減に伴う経済の兆候にはあらがえない。つまり、経済成長が鍵を握る。緊縮財政のみで財政赤字を減らした国はほとんどない。これを実践したギリシャのような国(GDPはなお金融危機時のピークを約25%も下回っている)は、手本にはならない。

 ベンジャミン・フランクリンは「少しの安全を得るために自由を犠牲にする者はいずれにも値しない」と述べている。経済政策においては、「少しの財政安定を得るために成長を犠牲にする国はいずれにも値するが、両方を手に入れないで終わる公算が大きい」となるだろう。