丹後半島へ ―― 「七夕」と「天女伝説」 | にゃにゃ匹家族

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梅雨の晴れ間となった先週末、自然のホタルが見れるというので、丹後半島へ行きました

 

京都府の最北端、ちょうど握りこぶしのように日本海にせり出した丹後半島。

 

ここは、前回触れました古代の海洋民たちの交易ルートの一大拠点でもあるわけですが、

それにつきましては、次回に譲ることとしまして、今回は、番外編として、丹後のホタルとこの地に残る数多い伝承の一つ「天女伝説」などを紹介しましょう。ちょうど明日は七夕でもありますし。

 

この時期の丹後半島は、山々の緑は濃さをまし、稲田では、風にそよぐ早苗の中をエサをさがす白鷺やコウノトリの姿もみえる美しい季節です。

右上に飛んでいくのは、コウノトリ

 

京丹後鉄道「木津温泉駅」から

 

さて、温泉と食事が終わり、宿の車に乗り込んで、「ホタル観賞」へ向かいます。

 

車は、宿がある海べを離れ、どんどん山道へと入っていきます。

登り坂のカーブをいくつ過ぎただろう、下されたところは、杉木立がうっそうとした中にせせらぎの音が聞こえる山奥でした。

 

空には、半月がかかり、

深山の闇をほんのり照らしていました。

 

「あっ、あそこ」

木立の奥から、ふっと光の弧が現れたかと思うと、闇の中に溶けるように消えていく。

 

目の前を舞う光に手をのばせは、届きそうなほどなのに、いつの間にかすっと消える。

 

はかなげに飛びかう光を、気づけば追いかけている。

 

川にかかる茂みには、明滅する光がいくつもとどまっている。

覗き込むと、まるで宝石をちりばめたみたい。

 

山奥にせせらぎの音だけが、ひときわ響いて。

月夜を背に、杉木立は黒々としたシルエットを浮かび上がらせている。

その杉木立のかなり高いところまでもホタルは飛んでいるように見えました。

 

その光は、木立の上でまたたいている星と、みまごうばかりでありました。

 

さてさて、この近くに祀られる「乙女神社」には、この地で暮らしていながらも、天上に帰っていった天女の伝承があります。

 

空に向かって飛びかうホタルの光は、そんな天女の魂のようにも感じられたのでした。

 

 

乙女神社の天女伝説

 

 むかしむかし比治(ひじ)の山の頂き近くに大きな美しい池があり、その池に八人の天女が舞い降りて水浴びをしていました。
 それを見ていた三右衛門(さんねも)という里の狩人が、 一枚の羽衣を隠してしまったために、天女のひとりは天に帰れなくなっ てしまいました。天女は三右衛門と一緒に暮らすことになり、三人の美しい女児をもうけました。
 天女は農業、養蚕、機織り、酒造りが上手で、三右衛門の家はもとより比治の里はすっかり豊かになりましたが、天恋しさに耐えかねた天女は三右衛門の留守中に、「お父様は毎朝何処を拝んで出かけていくの?」と娘達に尋ねました。娘達は家の大黒柱を指さしました。大黒柱の穴に隠してあった羽衣を見つけた天女は、羽衣を身に着けると、駆け戻った三右衛門に「七日七日に会いましょう」と云い残して天に帰っていきました。
 しかしその様子を伺っていた天の邪鬼(あまのじゃく)が「『七月七日に会いましょう』と言っていた」と三右衛門に伝えました。一年に一度しか会えないと思いこんだ三右衛門は、天女が残していった夕顔(ゆうごう)の種を庭に蒔いて、天女が天に帰ったことを嘆き悲しんでいました。
 するとどうでしょう。夕顔は天に向かってぐんぐん伸び始めました。この蔓を登っていけば天に行けるかも知れないと思った三右衛門は、夕顔の蔓を懸命に登っていき、ついに天上に辿り着きました。天上で三右衛門は天女に会うことができました。
 天上で天女と暮らしたい三右衛門は、天帝に天上界で暮らしたいと願い出ました。天帝は天の川への架橋を条件に出し、無事橋が架けられたら一緒に天上界で暮らすことを認めるとしました。
 仕事を請け負った際に天帝と、橋が完成するまでは天女を思い出さないと約束していた三右衛門でしたが、天女恋しさのあまりついついその約束を破ってしまいます。約束を破った途端天の川は大洪水になってしまい、三右衛門は下界へ流されてしまいました。
 
 天上で一緒に暮らす事が叶わなかった三右衛門と天女ですが、毎年七月七日の夜には天女がきらめく星となって、三右衛門と三人の娘に会いにやってくるそうです。      

     「凡海郷(おおしあまおさと)」HPより

 

「七日ごとに会いましょう」と、天に戻っていって天女ですが、異界の身ゆえの悲しい別れだったのでしょうか。

明日の夜空は、あいにくの雨天のようですが、雨雲の上で、天女と三右衛門と三人の娘たちが出会えているといいですね。