【五 寒】

「五寒」という言葉がある。
 これは前漢劉向(りゅうきょう)という
 大学者・大政論家の言葉で、
 彼は『説苑(ぜいえん)』という書物の中で、
 国家の滅びる徴候(ちょうこう)として
 この「五寒」を挙げています。

 国に「五寒」有り。而(しこう)して
 冰凍(ひょうとう)は与(あずか)らず。
 一に曰(いわ)く、政外(はず)る
(政治のピントがはずれる)。
 二に曰(いわ)く、女厲(はげ)し
(女が荒々しい、出しゃばる)。
 三に曰(いわ)く、謀(はかりごと)泄(も)る
(国家の機密が漏洩(ろうえい)する)。
 四に曰(いわ)く、
 卿士(けいし)を敬せずして政事敗る
(識見・教養がある者を大事にしないで、
 無責任な政治をやる)。
 五に曰(いわ)く、内を治むる能(あた)わずして
 而して外を務(つと)む
(国内の目をあざむいて、
 国民の目を外にばかり向ける)。
 この五者一たび見(あらわ)るれば、
 祠(まつ)ると雖(いえど)も福無く、
 禍を除けば必ず得、
 福を致(まね)けば則ち貸(たが)う。