原発ゼロ…企業の我慢も限界 夏の電力不安広がる
http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C93819481E2E0E2E2EA8DE2E0E2E7E0E2E3E0819A93E2E2E2
2012/5/5 2:00

 国内で唯一稼働している北海道電力の泊原子力発電所3号機が5日、停止する。全原発が止まるのは、原子力が日本の主要な電源となって初めての事態だ。政府が手続きを進める関西電力大飯原発3、4号機の再稼働も道筋がみえない。需要の高まる夏を控え、電力リスクが日本を覆う。

■原発稼働なければ最大20%抑制も

 「原発が稼働しない場合、良くて10%、悪くて20%程度の使用最大電力の抑制をお願いする」。4月9日、首相官邸。大飯原発の再稼働を巡る閣僚会合で、経済産業省の幹部は厳しい見通しを明らかにした。


 政府は昨年夏、東京電力と東北電力の管内で工場などの大口需要家を対象に節電を強制する電力使用制限令を発動。使用最大電力を15%抑えた。

 関電管内の今夏の節電幅はこれを上回る可能性がある。東電、東北電は昨夏は供給力が6~8%不足したが、今夏の関電は約15%足りないからだ。昨年7~9月は原発が4~6基稼働し340万~540万キロワットの供給力があったが、大飯が再稼働しなければ今夏はゼロだ。制限令の発動や計画停電が現実味を帯びる。

 電力が供給不足に陥る非常時を見据え、企業は自衛に動き始めた。

 ▼コマツは油圧ショベルの大阪工場で3千キロワットの自家発電設備を7月にも稼働する。

 ▼オムロンは拠点ごとの電力使用をリアルタイムで一元管理する。

 ▼マルハニチロホールディングスは自家発電設備2機を関東の工場から西日本に移す。

 背に腹は代えられないとはいえ、自家発電の増設などにかかる費用は企業の持ち出しとなる。資源エネルギー庁によると、東日本大震災後の昨夏の節電に取り組んだことで産業部門に及んだコスト増は燃料費、人件費などを含めて数十億円に上った。

 企業には「節電疲れ」もみられる。自動車業界は昨年、休業日を平日に移した。ただ従業員の負担が大きく、今夏の実施に自動車総連が反対。日本自動車工業会の志賀俊之会長も4月の会見で「個人的に実施は難しいと思う」と述べた。

 「昨年はコストを度外視して協力したが、今年も来年も再来年も継続するようでは事業として成り立たない」。4月23日に開かれた政府の「需給検証委員会」で、住友電気工業の松友俊雄省エネルギー推進室長は不満をぶちまけた。

 最も需要が見込まれる猛暑の時期が迫っているにもかかわらず、政府は電力が足りるかどうか数合わせの議論になお終始している。膠着した状況が産業界にとっては安定生産の障害であり、工場などの海外移転が加速しかねない。

■LNGに「ジャパン・プレミアム」

 「原発ゼロ」が長引けば、代替燃料として液化天然ガス(LNG)などの輸入が膨らみ、電力会社のコスト負担は急拡大する。政府の試算では2012年度と10年度を比べると関電の燃料費は0.4兆円から1兆円に、沖縄を除く電力9社の燃料費は3.6兆円から6.3兆円に増える。

 電力会社は経営環境の急変に備えた積立金を持っており、原発事故で財務内容が深く傷ついた東京電力を除けば、すぐに電気料金を上げることはない。ただ、積立金もいずれ底をつく。コスト増加分をすべて電気料金に上乗せすると、2~3割の値上げにつながる計算だ。

 原発ゼロは日本の生命線といえる資源調達にも影を落とす。石油天然ガス・金属鉱物資源機構の石井彰客員上席研究員は「『原発カード』がなければ産油国と交渉する際も不利」と話す。実際、カタール産やアルジェリア産LNGの市場では売り手が強気を押し通す“ジャパン・プレミアム”が発生。一部の取引でみると、日本向けは欧州向けより5割ほど割高とされる。

 「選挙に1回落ちるくらいのつもりで頑張れ」。原発再稼働の論議を主導する民主党の仙谷由人政調会長代行は枝野幸男経産相にこう発破をかけたという。ただ「個人的な心情として再稼働に限りなく慎重」と公言してきた枝野氏の腰は定まらないように映る。

 再稼働に理解を得るべき「地元」の線引きも明確でないままだ。これまでのように政府が決断の先送りを続けるほど、原発ゼロがもたらす重圧は増してくる。

(エネルギー問題研究班)

 さて、とうとうこの日がやってきてしまいました。全原発の稼働停止。今後どうなっていくことやら。
 昨年夏に関東で行われた罰則付の節電要請は、震災後であり原発以外の発電所も被災しているという事情もあって、渋々とではありましょうけど受け入れられましたが、今年それをやって、果たして受け入れられるのか。かなり疑問ですね。
 事実この記事にもありますように、今年は耐えられない企業の方が多いんじゃないかと思います。そんな企業の協力が得られそうもない状況であるのに、未だに電力足りるだのなんだの言ってる馬鹿を、顧問として抱えてる自治体の長がいるのは、なんとも頭の痛い話ではあります。
 てか、この期に及んで、NPO法人のアホな試算丸呑みにした記事垂れ流してるあたり、もうどうしようもないなと頭抱えてる次第。

■大阪府・市が関電と協議 夏の電力需給めぐり
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp201205040085.html


 そもそも揚水発電は原発の夜間電力で水をダムに戻す言わば蓄電池であって、それを火力フル回転させて使うってのは異常に非効率(記憶が確かなら3割程度のロスが出るはず)。それでも今夏は使わざるを得ないにしても、その活用は天候次第の側面が大きかったりします。長雨続きで下流に放水するだけの余裕がなければ、ダムから水落とせず、当然の事ながら水が流れなければタービンが回せなければ発電出来ません。
 それでも、雨で気温が十分下がれば問題はないですが……ちょっと思い出して貰いたいのですが、真夏に一日雨降ってた場合に、エアコン必要ないなと思える日ってありましたっけ? でもって、雨が降ってても工場や企業が休みになるわけではありませんし……

 まあ、あたいが言えるのは、いざ電力が逼迫し、現在議論されている計画停電や、そうした備え(計画停電を備えとは言いたくないですが)をぶち壊すような発電所の大規模なトラブルが起こり、大停電が起きた場合、責任を問われることもなければ取るつもりも無いような連中の妄言を信じるより、万が一の事態が起きた場合、確実に槍玉に挙げられるであろう、実際に発電に携わってる連中の声にこそ、真摯に耳を傾けるべきだと思うんですけどね。

 そして、妄言を垂れ流す自称学者や、原発全停止を『実績』としたい市民運動崩れの馬鹿政治家(枝野あたりがグズグズやってたのは、それ狙ってたんじゃないかと疑ってます)、そして、決断することにより責任を負いたくない政府首班が為すべき事を為さなかった影で、以下のような事態が進行しているわけで……

■火力発電、無理やりフル稼働…点検また先送り
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20120506-OYT1T00084.htm
 大飯原発3、4号機の再稼働が期待できる関西電力と異なり、ほかの電力会社は原発を再稼働できないまま、夏を迎える。

 供給力の上積みは、廃止を決めた火力発電所の再稼働や、定期点検の1年先送りなど急場しのぎが目立つ(後略)。



 いやあ……上の図見ると、辛うじて足りてるところでも最大が中部電の5.2%と、とてもじゃないですが余裕があるとは言えない状況。しかも、これにしたって老朽火力や緊急増設した小型発電機、あるいは点検を先延ばしにした発電機によって支えられてるわけで、もう言ってしまえば火力発電所のデスマーチ状態
 しかもこれだと解りづらいですけど、四国電など火力一基あたりの供給力が大きいところですと、一カ所落ちたら大停電なんて事態も考えられるわけで。現場で脂汗流しながら保守に当たる電力会社の人々の苦労を、馬鹿な試算で足りる足りる言ってる連中はちゅっとは考えて欲しいものです。

 そして、メディア連中は忘れてるのか忘れてるふりをしてるのか知りませんが……皆さん、今現在停止してる原子力発電所の冷却も、デスマーチ状態の火力から引っ張ってきているのを忘れていませんか?
 稼働さえしていれば自分で発電した電力の一部を冷却に回すことも出来ますが、現在はそれも無理。
 外部からの電力供給を受けて停止している原発は富を生みませんし、それどころか札束を燃やすかのようなやり方で動かしている火力発電の一部から電力を引っ張ってきてるわけですから、まさに無駄飯喰らいの危険な迷惑施設に成り果てているわけです。
 万が一、供給が需要に追いつかず過負荷で各発電所が自動停止して、その上(さすがにないと思いたいですが)緊急用のバックアップ電源までもなんらかのトラブルが発生したとしたら、地震も津波もないのに受けたわけでもないのに激甚災害が起こる可能性もあるわけで。一昨日の全原発停止を反原発の皆様は大はしゃぎで喜んでましたけど、そうした無駄なリスクをどう考えてるんでしょうかね?どうせ何も考えてないんでしょうけど。


 まあ、責任追及の矛先が向けられる事のない馬鹿な連中は置いておくとして、計画停電の実施や万が一の大停電が起きた場合の全責任を背負い込むことになる政府の皆さんや、各自治体の首長さん達は、くだらないイデオロギーだの面子だのを捨てて事に当たって欲しいところ。
 あなた方はデモではしゃいでる連中と違って、責任をもって現実策を採らねばならぬ立場であること、ゆめゆめ忘れないでくださいませ。


 しかしなんですね。どーも全原発停止で大喜びしてる人達を見てると、一見関係ないように見える、大和の特攻を思い出してしまいます。
 本土への海上交通線を護衛するために必要な燃料を、海軍最後の栄光という、戦略的にも戦術的にも無意味な見栄だけの愚かしい目的のために取り上げてしまったのって、今の状況に異様なほど符合すると思うんですよね。
 当時、海上護衛総司令部の参謀であった大井篤大佐はこの件について、「国をあげての戦争に、水上部隊の伝統が何だ。水上部隊の栄光が何だ。馬鹿野郎」と憤慨したそうですが……


 あたいも、「国を挙げての復興と経済活動を前にして、脱原発達成がなんだ。再稼働阻止がなんだ。馬鹿野郎」と言わせていただきたく思います。
 腐れたイデオロギーに、いつまで振り回されてるつもりなんだこの国は……


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