震災でわかった日米の競争力格差
Japan Rules Global Supply Chain

http://www.newsweekjapan.jp/stories/business/2011/03/post-2023.php
日本製部品はさほど重要ではなくなったという見方と同様、経済競争でアメリカが日本に勝利したという見方も嘘だった
2011年03月25日(金)16時44分
クライド・V・プレストウィッツ(米経済戦略研究所所長)

 津波と原発事故が複合した日本の震災の深刻さが明らかになる中、90年代にアメリカが日本に経済的に勝利したという考えもまた、実際には神話に過ぎなかったことが明らかになりつつある。

 ボルボは今週、日本製のナビゲーションとエアコンの在庫が10日分しか残っておらず、工場が操業停止になる可能性があることを明らかにした。ゼネラル・モーターズ(GM)は先週、シボレーコロラドやGMCキャニオンを組み立てているルイジアナ州シェリーブポートの従業員数923人の工場を、日本製の部品が不足しているために閉鎖すると発表した。

 アーカンソー州マリオンでは、ピックアップトラックのタンドラなどトヨタ車の後部車軸を作っている日野自動車の製造工場が、日本から輸入されるギアなどの部品が急激に減っていることで操業停止の危機に瀕している。

 他の産業でも事情は同じだ。半導体を製造する設備の大半が日本だけで作られているか、または主として日本で作られている。半導体の回路を焼き付けるステッパーは、3分の2がニコンかキャノン製だ。携帯端末やラップトップパソコンに使われる樹脂「BTレジン」の約90%、世界のコンピューターチップに使われるシリコンウェハーの60%は、日本から輸入されている。

 日本の混乱が長引けば、アップルやヒューレット・パッカード(HP)は深刻な問題に直面しかねない。今まで誰も気にしたことがないような製品、例えば小型マイクやメッキ素材、高性能機械、電子ディスプレイ、それにゴルフクラブやボーイングの新型旅客機ドリームライナーの羽に使われる炭素繊維など、すべて日本だけで作られているか、または主に日本で作られている。

■アメリカが被災しても世界は困らない

 最近の報道では、世界のサプライチェーン(部品調達網)の複雑さや、各企業が生産ラインを止めないためにどれだけ競い合っているかが盛んに紹介されている。しかしこの点に関する日本とアメリカの違いについては、誰も論じていない。

 考えてみれば分かることだ。北米以外にある世界中の自動車工場で、アメリカ製の部品が不足して操業停止の危機に直面するところなどいくつあるというのか? もしシリコンバレーで地震が起きたとして、アップルはどれだけの危機に瀕するだろうか?

 もしそうした事態になったらアップルは被害を受けるかもしれない。特にスティーブ・ジョブズがけがをしてしまったら、事態は深刻だ。しかしアメリカが被災しても、今回の日本の震災が世界の部品調達網に与えている影響には遠く及ばない。

 理由は簡単だ。インテルのチップなどいくつかの例外を除けば(ボーイングでさえ国内ではドリームライナーの30%しか製造していない)、アメリカはもう世界市場に向けてそれ程多くの製品を出荷していないからだ。

 アメリカが表向きはサービスとハイテク経済の国だということはわかっている。だが実際は、アメリカの1500億ドルのサービス黒字は、6500億ドルの貿易赤字と比べれば極めて小さい。それどころか、ハイテク貿易の収支も実は1000億ドル以上の赤字だ。真実を言うと、世界の市場で競争力があるアメリカ製品などほとんどないのである。

 これで思い出されるのは、70年代後半から90年代前半の日米貿易摩擦だ。当時の日本経済は今の中国並みの高成長を遂げていた。日本の製造業は、アメリカの繊維、家電製品、工作機械、鉄鋼などの産業を事実上絶滅させ、アメリカの自動車メーカーから大きな市場シェアを奪い、半導体市場で50%以上のシェアを奪ったときにはシリコンバレーさえ屈服させた。

■見せ掛けの繁栄に浮かていただけ

 エズラ・ボーゲルのベストセラー『ジャパン・アズ・ナンバーワン』に刺激され、GDP(国内総生産)で日本にアメリカが抜かれてしまうかもしれないという脅威論も生まれた。だが、本当の競争は当時アメリカ政府が日本に市場開放を迫った農業や大規模小売業の競争ではなく、国際市場向けの製品やサービスの競争だったのだ。

 結局1985年のプラザ合意で日本は劇的な円切り上げを容認することになり、円は最終的に対ドルで100%も上昇した。この円高と、91~92年にかけての不動産と株式市場のバブル崩壊は、日本の成長の足かせとなり90年代の「失われた10年」を生み出した。

 その一方、アメリカは90年代に入りインフレなき高成長を謳歌した。日本の停滞とアメリカの繁栄を比較すると、いかにもアメリカは日本を打ち負かしたように見えた。アメリカ人は口々に、なんで日本に抜かれる心配などしたんだろうと言い合った。

 だがアメリカでもITバブルとサブプライム・バブルが崩壊してみると、90年代のアメリカの高成長もまた見かけ倒しだったことがはっきりした。

 今、国際的な部品調達網に日本が与える影響の大きさをアメリカのそれと比較すれば、グローバル競争の本当の勝者はアメリカではなく、日本だったことは明らかだ。

 なんか趣旨は合衆国の製造業をDisる事にある気がしますが、それはさておき。

 経済的には一番恐い二次災害がこれかもしれません。
 日本からの輸出品はずいぶん前から製品ではなく、工作機械や原料・材料といった資本財にシフトしているわけですけど、それが今回の震災によって生産が止まった場合、記事にもあります通り製品の生産が不能になった工場の閉鎖や、原料の品薄による高騰などによって生じるコスト・プッシュ・インフレなど、世界の景気を冷やすことにもなりかねません。
 また、当然の事ながら代替品の模索という動きも出ますでしょうし、生産体制を再建したけどシェアは奪われてました、なんてことにもなりかねないんじゃないかと思います。まあ、こちらは杞憂かもしれませんが…
 日本の握るシェアはともかくとして、なんとかリーマンショック以来の危機から立ち直り始めた世界にとって、今回の震災は再び景気を傾かせる要因になるかもしれません。

 中東の同時多発的な政変といい、今回の日本の震災といい、世界的な影響考えると頭の痛いことばかり。中東の方はどうにもなりませんが、日本の方は政府が動けばある程度は緩和することは可能。
 電源の問題は頭痛いですが、財政の問題については天下のIMFからお墨付きが出ました。

■ファイル:東日本大震災 IMF「日本は財政出動を
http://mainichi.jp/select/biz/news/20110326ddm008040120000c.html

 国際通貨基金(IMF)のプラダン対日代表団長とカン日本担当課長は24日、記者団の取材に応じ、東日本大震災後の急激な円高・ドル安に対抗するため、先進7カ国(G7)が為替市場に協調介入したことについて「適切な行動だった」と評価した。また、震災復興のため「大胆な財政出動で、経済を下支えする」ことを日本政府に求めた。

 IMFはこれまで、財政再建を急ぐよう日本政府に繰り返し求めてきたが、プラダン氏らは「成長率が下がれば財政はさらに悪化する」として、震災からの復興を最優先課題にすべきだと訴えた。


 なんか凄い重大なニュースなのに、妙に各社の扱いが小さい気がしますが。
 ここまで壊滅的な打撃を受けてしまった以上、財政再建だの言ってたら東日本の再建が不可能となってしまいます。
 また、IMFとしては日本発の世界恐慌というシナリオも避けたいでしょうし、こうした声明を出してきたのかもしれませんね。
 これで、未だに国の借金がーとか、財政破綻がーとか言ってる人達の目も醒めてくれるといいのですが…


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