Japan's Neuclear Future: Policy Debate, Prospects, and U.S. Interests(pdf注意)より
Part2からの続き

進展するアジアの安全保障環境

 特に冷戦終結からの過去10年、地域情勢は日本の脆弱性を意識させる物であり、いくつかの政策集団に日本の核兵器開発否定政策を再考させる結果となった。冷戦の間、日本におけるアメリカの軍事プレゼンスは太平洋正面でソビエトを牽制し、日本の安全保障への関与は、多くの日本人に対する心強い声明を意味してきた。1998年夏の日本上空を通過する北朝鮮の弾道弾実験は、列島における、より安全なポスト冷戦環境の感覚を一掃した。さらにその年以前にインドとパキスタン双方が、地下核兵器実験を実施している。これらの結果は国際的核拡散防止体制の結果を徐々に衰退させ、核軍拡競争の危惧への引き金となった。日本は特に核実験に不安を抱き、新規借款と補助金の凍結を実施した。

 その後、特に2006年に行われた中距離ミサイルと核施設の実験に代表される、平壌による一層の挑発的な行動は、攻撃の可能性に対する日本の懸念を高じさせた。核実験は著名な与党幹部に、核武装を実施すべきか否かに対する開かれた議論の提唱を促した:後に発言を撤回する以前、当時の外相であった麻生太郎現首相と党の政務調査会議長の両者は、先に述べた議論を指示した。北朝鮮の行動に加え米印原子力協定は、日本の核拡散防止専門家の一部に、NPTがさらに弱体化するとの懸念を抱かせている。これらの専門家にとって、世界的な核拡散防止体制における合法性と抑止効果は、日本自身の非核声明への関与を補強するものであった。

 北朝鮮は差し迫った危機の象徴ではあるが、多くの防衛専門家にとって、中国こそが日本の安全保障に対する、より深刻かつ長期の脅威であると見なされている(※4)。中国軍の急速な近代化と装備体系の向上は、日本政府の懸念に輪をかける事となった。日本の防衛論文は、中国政府の持つ短中距離ミサイルの明らかな進歩や潜水艦隊(幾度となく日本の領海を侵犯している)、そして核戦力の近代化といった、特定地域における懸念を強調する。中国の軍事支出が加速度的に増え続けているのに対し、日本の防衛費は据え置かれるか減額されてきた。小泉純一郎元首相の内閣の下で起こった緊張に終止符が打たれ、日中関係は安定したかのように見える。しかし、根本的な疑念と潜在的な対立要因は、太平洋の強国間に残されたままである。

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※4:『Not Going Nuclear: Japan’s Response to North Korea’s Nuclear Test(核武装の否定:北朝鮮による核実験に対する日本の反応)』ノーチラス研究所政策フォーラム刊。伊豆見 元・古川勝久共著。2007年7月19日発行
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(Part4・日本の核開発能力・日本の原子力計画に続く)