【国際問題・Hebei Spirit号】インドの組合による「Hebei Two」キャンペーン再燃[02/16]のID:xShwoLqKさんからのご依頼による翻訳。
ちょっと情報は古いですが、事故後~釈放までの関係各団体の動きを把握するのに役立つと思います。
以下訳文
ITF発行のHebei Spirit fact sheetより
Hebei Spirit号事件 概況報告書

概要
(2009年1月16日更新)

1. 昨年12月に韓国で起きた大型タンカー『Hebei Spirit』重油漏出事件は、現在も進行中の環境と経済に多大な影響を与えた事件である。この事件は、同国史上最悪の漏出事故であるとされる。クレーン船が問題なく碇泊していたHebei Spirit号に衝突したとき、エクソンバルディーズ号の1/3の規模の漏出が起きた。
Hebei Spirit号のJasprit Chawla船長とSyam Chetan一等航海士は、なんの怠慢行為も犯していないにもかかわらず、12月10日の上告審においてそれぞれ1.5年と8ヶ月の懲役刑判決を受けた。彼らは現在この判決に対する上告中であり、彼らを解放するための世界的な抗議活動は続いている。

2. 何の責任も無いにも関わらず船員達が有罪判決を受けたこの事例に、ITFは深い憂慮を示している。ITFは世界の海運業団体とともに、新たな裁判まで船員達が故国に帰ることを度々要求したが、それは無駄に終わった。この問題を憂慮している各種業界団体連合の最新の動きは、2009年1月23日のロンドン韓国大使館での大々的な抗議集会である。

3. 現地時間2007年12月7日7:00頃、26万トン(29万米トン※)の重油を積載して碇泊していた香港籍超大型原油タンカー(VLCC)Hebei Spiritに、サムスン重工所有のクレーン船が衝突した。
事件は泰安郡の黄海沿岸にある泰安港沖で、クレーン船とタグボートとの間を繋ぐ曳索が破断しクレーン船が漂流することによって起こった。衝突の際、犠牲者は報告されなかったものの、Hebei Spirit号に搭載されている5つのタンクのうち3つに穴が開き、10,800トンもの重油が漏出した。
この事件の韓国の漁業団体と漁師の生計への影響は深刻なものであり、少なからぬ一般大衆の怒りと懸念を巻き起こすこととなった。

4. 12月20日、韓国海洋警察庁の最初の捜査が終了し、タグボート船長、クレーン船船長、Hebei Spiritの船員それぞれに責任があると結論付けた。タグボートとクレーン船の船長は海洋汚染防止法に対する怠慢の容疑で、Hebei Spiritの船員達は海洋法違反の容疑で告発された。
6月24日に裁判は終わり、Hebei Spiritの船員達とクレーン船船員の容疑は晴れ、二人のタグボート船長に有罪判決が下り、クレーン船の持ち主であるサムスン重工にも罰金が科せられた。

続く船員達の抑留

5. Hebei Spiritの船長と一等航海士は免罪されたにも関わらず、12月まで抑留され続け禁固刑を受けた。船員達に対する韓国司法による判決は、世界的な議論と抗議を巻き起こすこととなり、ITFと海運業団体により船員達の解放が要求された。

6. ITFは二人の上級船員を、検察官とサムスンの弁護士といった韓国の海事当局者が共謀して再審の場に告発したことを、ひどく憂慮している。
管理会社V Ships社長Roberto Giorgi氏は抑留されているHebei Spirit船員に面会するために韓国を訪れた。彼は報道陣に対し最近の情勢に関して、「韓国の当局者とサムスン重工、迷走して石油タンカーに衝突した船員とに「共謀を示す点がある」と話す。
Giorgi氏はさらに、サムスンと検察官が「船長と一等航海士が、法廷で確実に有罪になるよう」努力しているように見えると語った。「船長と一等航海士の今回の裁判は、公正なものとはならないかもしれないと心配しています」

抗議声明

7. 2008年7月7日、ITFはHebei Spiritの二人の船員が重油流出の原因に関して無罪である事を証明し、故国に帰れるようになることを目指し韓国当局に上訴した。V Shipsの経営者は、船員達に故国に帰る保証を与えるため、流出の罪に対する無罪判決を不服とした地元検察の決定を覆すための、どのような裁判でも後ろ盾となる。
ITF海事調整役のSteve Cotton氏は以下のように語る:「Chawla船長とChetan一等航海士は、故国に帰れるようになるまでに、多くの月日を次の審理を待つことに費やすことになるかもしれないと語った。我々には、なぜ彼らが帰ることを許されないのかの理由がわからない。
…船員達が有罪とされたいくつかのケースで、彼らの基本的人権が侵害されている。我々の経験上、調査が行われてる国に抑留されるか出国できるかどうかは ─ 最終的に抑留された船員達の健康に悪影響を与えることが出来る、唯一の心身への不安要因となりえる。」

8. 2008年7月22日、海運業界団体の連合体は、二人の船員の不公正かつ不当な抑留に対し、激しい抗議声明を共同で発した。ITF(国際運輸労連)、BIMCO(ボルチック国際海運協議会)、国際海運会議所(ICS)、国際船舶連盟(ISF)、INTERCARGO(国際乾貨物船主協会)とINTERTANKO(国際独立タンカー船主協会)、国際P&Iクラブグループ(IG)と香港船主協会は、船員達を拘留し続けるという、韓国の法廷が下した判決のニュースに対する彼らの驚きと失望、そして深い憂慮を、大韓民国政府と当局に示し、この判決を「不当かつ非合理な船員達に対する人権侵害」であるとして、事件の責任が別の船にあると一審判決が確定していたことを、当局者達に思い出させた。

9. 2008年7月31日、ITF当局者は韓国に身柄を拘束されているHebei Spiritの二人の船員に会い、彼らの無実を証明する決意を表明し、支援の声が高まってることも併せて伝え、船員達を励ました。これには、韓国領事を通して彼らの苦境に対する問題提起を、韓国政府と国連の国際海事機関(IMO)と共にソウルにおいて始めるとインド政府に誓約させた、インド人船員組合との合同デモも含んでいる。
船員達のために、法務部官僚と面会しにソウルに来訪したITF書記長David Cockroftは、重油流出は被災地域で生活し働いている数千人の人々にとり、酷く深刻な問題であり、彼らは保証と援助を求めているとコメントした。しかしながら、二人の船員は事件に関して潔白であることは明白であり、再考して彼らを釈放する時期であるとも彼は述べた。

10. 2008年11月18~19日に開かれたITFの船員部門会議は「Hebei Spiritの船長及び一等航海士の即時解放と、彼らが服従を余儀なくされた不公正を終結させるための、あらゆる努力を行う」ことを決議した。

11. 2008年11月21日、進行中の二人の船員の抑留に対し、海事労働組合と海運業界は共同で非難声明を出した。香港で開かれた組合と船主の代表者会合において、彼らは船員達の身柄扱いを非難し、彼らの解放を勝ち取るための全ての措置を行うと誓った。
衝突とそれに起因する重油流出に際し、船員達の怠慢行為は全く存在しておらず、また、韓国の法律によっても無実である事を証明された時から、彼らへの処遇は不当かつ不法で、彼らの人権を侵害していると両団体は声明した。

12. 11月26日にロンドンで開催されたIMO(国際海事機関)海上安全委員会において、ITFは拘留された船員への支援に対し、インド・香港・中国からの強力な後押しを受けていると声明した:
「我々は韓国を襲った重油流出に同情はしているが、Chawla船長とChetan一等航海士が、昨年12月の流出に関して無実だということも意識せざるを得ない。我々は韓国政府が司法に干渉できないことは承知しているが、船員達が早急に本国に帰還出来るよう、あらゆる手を打つことを要求したい。
世界中の船員達と彼らの代表は、プロとして信頼に値する船員達への不当な扱いと、明らかに非難すべき有罪判決に対し深く憂慮している。大韓民国は船員達を故国に帰し、船乗り達が公正な扱いを受けることのできる、正義と人権擁護に期待できる国としてのイメージを修復すべき時期に来ていると、ITFは考える」

13. 12月10日に船員達に下された判決は、世界的な反感と疑惑を惹起することとなった。
ITF海事調整役のStephen Cottonは「この判決は正義でも何でもない。今日我々が見たものはスケープゴートであり、より広く証拠を集め法廷の正当性を問うことを拒絶した上で下された有罪判決である。この判決は不可解なほどに報復的であり、全てのプロの船乗り達に衝撃を与えている」と語り、「我々が今日誓約出来るただ一つのことは、この事件はまだ終わってないということだけだ。船員達を解放するための運動は、今日のような正義不在の法廷にそれが戻ってくるまで、大きくなり続けるであろう」と結論付けた。
ITFは船員達の上訴への決心を賞賛し、彼らのために出来る限りの援助を与え続ける。

14. 国際的なキャンペーンは1月に成果を上げた。国際的な外交活動及びキャンペーン活動と協調した抗議活動を、ロンドンにおいてITFと海運業団体合同で行うと発表した数日後、最高裁判所は二人の船員の保釈申請を受理した。

15. 事故の様子を撮影した動画を含む詳細な(ITFの物に限らない)情報は、以下のblogを参照してください:
http://justiceforhebeispirit.blogspot.com

※:ややこしい話ですが、ヤード・ポンド法におけるトン(ton)という単位は、英国と合衆国で実際の質量が違いまして、英国での1t(long ton)=約1016.04kg(2240ポンド)、合衆国での1t(Short ton)=約907.18kg(2000ポンド)となります。英トンに1.12掛けると、だいたいの米トンが出ます。
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過去に発表された報告書ですので、これといって目新しい情報はありません。ただ、関係団体のただならぬ怒りを改めて感じました。保釈で圧力が弱まると思ったら大間違いですよ?グックさんたち。
にしても、特に12項目きついなぁ…w
現状、正義と人権擁護に期待できない国って、はっきり言っちゃってるような物ですよねw

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