先日、この様なニュースが有りました。



ポール・マッカートニーのトレードマークとして長年親しまれているいる独カール・ヘフナー社製のベース(その特徴的な外見からバイオリン・ベースと呼ばれている)の内、ポールが最初に購入し、60年代前半を中心にレコーディングで主に使用されていたベースがおよそ半世紀ぶりにポールの手元に戻ったと云うものです。


このベース(此処では便宜上初代ヘフナーと呼びます)はビートルズがレコードデビューする前の1961年頃に入手したもので、当初ギタリストだったポールが本格的にベーシストに転向するにあたり購入したものです。レコードデビュー後はリッケンバッカーのベースに切り替える65年頃までレコーディングを中心に使用されていました。現在、ステージやレコーディングでポールが使用しているベース(2代目ヘフナーと呼びます)は63年頃にサブとして購入したものです。ヘッド部分のヘフナーのロゴデザインやピックアップ(弦の振動を拾うマイクの様なものとお考え下さい)の形状等で見分ける事が可能です。


“Revolution”(1968年)のミュージック・ビデオでポールが弾いているのが初代ヘフナー。因みに、実際のレコーディングではリッケンバッカーのベースを使用していると思われます。


2018年に行われたポールのライブ映像より。此処では2代目ヘフナーを弾いています。初代との違いが分かるかと思います。近年のポールの楽曲やライブは専らこのベースで演奏しています。


“Hello Goodbye”(1967年)のミュージック・ビデオ。映像中でポールが弾いているのはリッケンバッカーのベースです。このベースは65年頃から使用し始め、80年代までメインで使用していました。ヘフナーのベースと比較するとゴリゴリとした音がするのが特徴です。この映像ではサイケデリックな塗装が施されていますが、後にこの塗装は剥がされ、ウィングス時代以降は塗装無しのナチュラル仕上げとなりました。


因みに、初代ヘフナーは1972年頃盗難に遭い、行方が分からなくなっていました。そんな中、ポール本人からの依頼も有り、独ヘフナー社が捜索に乗り出したのです。そして、懸命な捜索活動の甲斐有り、2024年に再びポールとの再会が叶った訳です。


そこで、今回はポールが初代ヘフナーでレコーディングした(であろう)初期の楽曲からセレクトしました。


今回登場しますのは、From Me To You / Thank You Girl”です。此方はビートルズの3rdシングルとしてリリースされた作品で、1963年4月の発売です。ポールが2代目ヘフナーを手にする前ですから恐らく初代ヘフナーを使用しているでしょう。


“From Me To You / Thank You Girl”(R 5015)


品番はR 5015で、UKオリジナル盤です。リム(レーベルの外周部に印刷された文書)は全て大文字になっており、最初期のものではありませんが、恐らく60年代前半にプレスされたものと思われます(因みに、最初期のものはThe Parlophone Co…といった表記になっています)。


参考:Please Please Me(2ndプレス)


このシングルに収録されているのは今となっては珍しいモノラルミックスです。A面、B面共ステレオミックスと比較するとハーモニカが入るタイミングが異なっているため、一発で聴き比べる事が出来ます。ステレオミックスは現行のカタログではパスト・マスターズ等で聴く事が出来ますが左右にパックリと分かれた所謂泣き別れミックスとなっておりますからモノラルミックスで聴くのがベストでしょう。




今回見付かった初代ヘフナーはネック部分に亀裂が入るなどダメージが見られる模様ですが、修理すれば再び演奏できるだろうとの事です。いつの日かポールのステージで演奏する光景も見てみたい所です。