今回はビートルズのアルバム、”Revolver”です。

以前、ステレオ盤や近年リリースされたリミックス版を御紹介しましたが、今回はモノラル盤の登場です。(話がややこしくなりますので、ここではUS盤は無視して話を進めます。気になる方は調べてみて下さい。)


ステレオ盤は此方


リミックス版は此方


1966年という時代柄、イギリスではステレオ盤に加え、モノラル盤も発売されていました(因みに、当時日本ではステレオ盤のみの発売でした)。尚、ビートルズのメンバーらはモノラルミックスを重視していたため(モノラルミックスはビートルズやジョージ・マーティンら関係者立ち合いの下制作が行われたが、ステレオミックスは誰も立ち合わずササッと作られたという逸話も残されている程です)、モノラル盤こそ当時ビートルズが意図していた音に最も近いという事が出来る訳です。本作も例に漏れずモノラル盤、ステレオ盤とで楽曲の細かな処理の違いが随所に見られます。探し出したらキリがありませんが、その中でも一例を挙げますと、A3”I’m Only Sleeping”曲中の効果音の入るタイミングやA6”Yellow Submarine”のイントロでギターが入るタイミング、B6”Got To Get You Into My Life”のエンディングでポール・マッカートニーが歌うフレーズ(アドリブで歌っている?)などといった部分が特に分かり易いでしょう。


モノラル盤の品番はPMC 7009となっています。本作のモノラル盤は個人的にビートルズのアルバムの中では比較的入手が難しい印象があります。


そんなモノラル盤ですが、マトリクスにはバリエーションが存在します。先ず作られたのがA面が-2、B面が-1という組み合わせの盤です(因みに、A面のカッティングは失敗したようで両面-1という盤は存在しません)。最初に作られました。このタイプはB7”Tomorrow Never Knows”が通常のモノラルミックスと異なっているのが特徴(俗に”Remix11”と呼ばれています)です。特に分かり易い違いはイントロ部分でのタンバリンの有無です。(因みにこのRemix11は近年リリースされたリボルバーリミックス版のボックスセットでも聴けるようになりました。興味の有る方は是非。)本来であれば通常のモノラルミックスが収録される筈でしたがマスタリングの際、何故か間違えて別の音源が使用されてしまい、そのままレコードにプレスされてしまった事が原因です(一説ではレコードのプレスを開始した最初の1日、更に別の説では僅か数時間の間しかプレスされなかったと言われており、真相は分かりませんが極めて短い間しか製造されなかったため非常に貴重な物である事は確かです)。本来であればB面が-1の盤は全て回収すべきであったものの、生産枚数を稼ぐためかそのまま製品として出荷されてしまった盤も存在していましたが、この事実は長い間知られていなかった模様です。しかし、ビートルズのレコード研究が進んだ結果、マトリクスによるミックスの違いが判明し、-2/-1の盤は現在では状態に関わらずレア盤として人気を集めています。


通常のモノラルミックス


Remix11


続いて、”Tomorrow Never Knows”正規バージョンへの差し替えに伴うB面のマスタリングが再度行われ、両面-2の盤が作られました。此方が正規の初回プレスとなる訳です。このタイプは圧倒的に多く出回っています。僕が入手したのは勿論此方のタイプ。他にもB面のマトリクスが-3になった盤も存在します。


今回は両面-2の盤を御紹介致します。音質はステレオ盤と比較すると高音域がやや抑えられている様に感じます。しかしながら低音域が強く、ドラムやベースの音がズンズンと響いてくるため鈍い音です。ステレオ盤とは大分異なった音色となっています。



特徴的なジャケット。例に漏れずジャケットの表面にはコーティングがかけられています。モノラル盤のジャケットには右上にmonoという表記があります。白地故に汚れや変色が目立ちやすいですが、幸いな事に比較的綺麗な状態を維持しています。カバーデザインはクラウス・フォアマンによるもの。フォアマンはミュージシャンとしても活躍しており、後にジョージ・ハリスンのソロアルバムにはベーシストとして参加します。


ジャケット裏面。折り返しが外側にあるフリップバックジャケットです。このジャケットは製造時のミスで印刷がずれて右上に白い部分が見えています。


レーベルは通称イエロー・パーロフォンレーベルの初版。字体や表記の違いによるバリエーションが存在しています。


B面のレーベル。4曲目のタイトルがDOCTOR ROBERTとなっているのが特徴です。より初期のプレスではDR. ROBERTと省略形となっている模様です。


インナースリーブは白い無地の物が付属しています。当時使われていたオリジナルのものと考えられます。付属品は以上で完品。


盤のコンディションは可成り綺麗な状態。擦れも極小でノイズも殆ど出ません。レーベルの表記が”DR.”の方が初版とされ人気の傾向がありますが、どちらもほぼ同時期に出回っていた筈ですから”DOCOR”表記でも状態が良ければ買いだと思います。