猫伝染性腹膜炎治療の研究報告書 (2019.2) 2/3

前回の投稿に引き続きGS-441524について研究をした、UCdavisの名誉教授のDr.Pedersenの研究報告です。

 

猫伝染性腹膜炎について調べたことがある方ならば1度は見かけたことがあるという方もいらっしゃるかと思いますが、改めて日本語に整理してみました。

 

論文記載順に「① 概要、紹介、材料及び資料」「② 結果」「③ 議論、結論」と3回に分けて載せていこうと思います。

 

 

 

 

 

FIPに自然感染した猫の治療におけるヌクレオシド類自体GS-441524の有効性と安全性


 

タイトル:

FIPに自然感染した猫の治療におけるヌクレオシド類自体GS-441524の有効性と安全性

 

著者:

Niels C Pedersen, Michel Perron, Michael Bannasch, Elizabeth Montgomery, Eisuke Murakami, Molly Liepnieks and Hongwei Liu

 

原文リンク:

https://journals.sagepub.com/doi/pdf/10.1177/1098612X19825701

 


 

 


結果

シグナルメント及び疾患の提示

3.4~73ヶ月(平均13.6ヶ月)範囲の猫31匹が試験に登録されました(表1)。18匹の猫はドメスティック(品種のない)短毛または長毛種で、13匹は10品種の血統を持っていました(表1)。ドメスティック猫は子猫/里親保護団体(n=13)、公式保護施設(n=2)から引き取られたか、町の野良猫(n=3)として引き取られました。この研究には、14匹のメス(非中性化7匹、中性化7匹)と17匹のオス(非中性化1匹、中性化16匹)が含まれていました。

 

31匹の猫のうち26匹はウェットタイプFIP(胸部6匹、腹部20匹)が見られました。5匹の猫はドライタイプのFIPの陽性が見られました。そのうち4匹(CT59、CT64、CT73、CT78)は腹部(腸間膜及び回腸、盲腸、結腸リンパ節)に局在する疾患があり、1匹(CT79)は胸部(肺、肺門リンパ節)に局在していました(表1)。4匹の他の猫はウェットタイプ(CT57、CT65、CT67、CT71)で進行した初期ドライタイプのFIPの兆候を示しました(表1)。31匹の猫のうち3匹(CT56、CT65、CT71)の検眼鏡検査を通して根本的なFIPと一致する眼球疾患の明らかな兆候が確認されました。2匹の猫(CT71、CT80)は高いところにジャンプすることを嫌がったり、ジャンプすることができないため、これは神経学的関与が示唆されました。

 

治療結果

4匹の猫は深刻な病気やその他の合併症により始めの2-5日以内の安楽死(CT62、CT72、CT75)または死亡(CT56)し、5匹目の猫は治療の反応不足により26日後に安楽死(CT54)されました(図1)。注射と皮膚反応の問題で4週目に1匹(CT80)そして8週目に2匹(CT53、CT71)に2週間の休息を取った猫3匹を除いて治療期間は中断されませんでした(図1)。猫(CT53)は血中尿素及び対称ジメチアルギニン(SDMA)の血清値が増加したため、12週間ではなく8週間の治療を受けました。

 

 

少なくとも12週間の治療を終えた26匹の猫の臨床反応は劇的なものでした。発熱は通常12-36時間以内に解消され(図2)、同時に食欲や活動水準及び体重増加が毎日著しく改善されました。腹水は治療後約10-14日後から始まり、1-2週間で急速に消失しました。胸水がある猫は個人獣医師のところに来院した際に一般的な呼吸困難が発生し、UC Davisに来る前に胸水を取り除かなければいけませんでした。残存する呼吸困難と胸水は治療に素早く反応し7日目以降には目立ちませんでした。黄疸は、高ビリルビン血症の減少と並行して2-4週間かけてゆっくりと解決されました。眼球疾患の兆候は24-84時間以内に消え始め、7-14日までにはこれ以上の外部的または検眼鏡検査で明らかではありませんでした。拡大した腸間膜リンパ節と回腸/盲腸/大腸リンパ節は治療過程でゆっくりと大きさが減少しました。26匹の猫はいずれも2週間の治療後の飼い主の評価で見た目が正常だったりほぼ正常に近いことがわかりました。2週間後の治療の重点は様々な血液検査のパラメータを観察することでした。核心値には重鎮細胞体積(PCV)、総白血球、絶対リンパ球数、総血清タンパク質、血清グロブリン、血清アルブミン及びアルブミン:グロブリン(A:G)比率が含まれています。

 

少なくとも12週間の中断していない1次治療を完了した26匹の猫のうち18匹は追加の治療は必要ではありませんでした。しかし他の猫8匹は3-84日(平均23日)以内に病気が再発しました(図1)。このグループには初期治療で一時的休息を取った3匹の猫(CT53、CT71、CT80)と延長された1次治療が必要な5匹の猫(CT53、CT57、CT60、CT68、CT73)が含まれていました(図1)。8匹中2匹の猫(CT57、CT71)と病気の再発は明らかな高熱と激しい後部運動失調症及び運動失調を伴う神経学的特性がある反面、残りの6匹の猫の病気の再発は主に発熱、食欲不振及び活動不足で構成されていました。ただ1匹の猫(CT60)だけが再発時に明らかな腹部への滲出液が見られました。1匹の猫(CT57)は2回目の治療に反応しなかった神経学的兆候で再発した2週間後に安楽死させられました。

 

8匹の猫からGS-441524の容量を2.0ml/kgから4.0ml/kgに増やすことにしました。 これは治療期間を延長しなければいけない2匹(CT77、CT80)、悪化した4匹(CT60、CT68、CT71、CT73)そして二度の再発の2匹(CT53、CT63)または再発が神経学的(CT71)でありました。 8匹の猫はすべて高用量療法によく反応しました。

 

合計25/26匹の猫が12週間以上治療を受け、FIPの継続的な緩和を達成しましたがそのうちの1匹は病気と関係の無い心臓の問題で死亡しました(「解剖所見」参照)。 出版当時、(Online First、2019年2月)で最も長く生存した患者は2017年8月に治療を終了し、最も短い生存者は2018年5月に治療を終了し、いずれも再発が発生する最長時間(つまり治療中断後84日)を超えました。 24匹の生き残った猫は、病気の兆候が再び現れないか注意深くモニタリングし、最初の1年間は総タンパク質、グロブリン、アルブミン及びA:G比率を周期的に検査されます。そして、モニタリングは猫の残りの生涯にわたって、それほど強力ではない観察が継続されます。4匹の雌猫(CT52、CT58、CT65、CT79)は中性化され、1匹の雄猫(CT76)が合併症なしで中性化されましたが、飼い主は最初の3ヶ月間は猫に不必要なストレスを与えないように注意を受けました。

 

好転反応指標

治療の効き目の最も簡単な長期的な尺度は体重でした。20~120%の体重増加は、病気発症時に1歳以上の猫でおっても治療中および治療後にも見られました。 子猫はまた、保護者独自が指摘したように、速いスピードで背が伸びることがわかりました。 このような治療後の急成長は、FIPが診断される前の一定期間、多くの猫では無症状であったことから成長に影響を及ぼしたことを示しています。 CBCと化学プロファイルも、その後の治療の効果をモニタリングし、薬物毒性の可能性を観察するのに役立つことが証明されました。

 

CBC

猫は治療の最初の2週間以内に白血球数値が正常数値まで落ちました(図3a)。リンパ球の減少は来院時に記録され、治療の最初の1週間で解決されました(図3b)。重鎮細胞容積PCV(Packed Cell Volume)によって反映されたように、軽症から中等度の貧血が入院時に観察されました(図4)。PCVは治療6-8週後まで正常レベルに戻りませんでした。したがって白血球及びリンパ球の絶対総数は治療の最初の1週間のみ価値がある反面、PCVは初めの8週間の治療の進行状況をより正確に把握できます。

 

 

血清タンパク質の変化

FIPを持っている猫は通常よりも高い総血清タンパク質濃度、高い血清グロブリン、低い血清アルブミン値及び低いA:G比率をよく示しています(図5-7)。異常な血清タンパク質の値は徐々に改善され、治療8-10週後には正常な水準に到達しました(図5-7)。傾向線に対する弱いR2の値(0.18883)で表されているように、総タンパク質レベルの情報が最も少なかったです(図5)。しかし、総タンパク質レベルの劇的で一時的な増加は治療3週間後に発生しました(図5)。これは血清グロブリンの増加と関連があり(図6)腹水が早く解決される時点で発生しました。

 

血清グロブリンの数値は治療開始3週間で上昇し、ピークに達した後9週間まで最大基準値である4.5g/dl以下にゆっくりと下がりました(図6a)。時間の経過とともにグロブリン数値が治療の状態を表しているように見えましたが、低いR2の値(0.3621)により治療の進行について信頼度が低い指標となりました。少なくとも12週間の治療を受けた猫26匹の血清内アルブミン数値は治療が始まった時点から一般的に低かったです(~3.2g/dl)(図6b)。その後アルブミン数値がゆっくりと増加し、8週間で正常数値に達しました。このアルブミンの増加傾向はR2の値(0.79)が強く、血清アルブミン数値とPCVが治療進行の良い指標になります。予想通りA:G比率は時間の経過とともに同じく強い傾向を示し、治療8週目頃に0.70以上の水準に達しました(図7)。

 

治療に伴う腹水からの細胞内ウイルスRNAレベルの低下

継続的に腹水のサンプルは抗ウイルス治療の最初の2-9日の間8匹の猫から収集され、qRT-PCRによってウイルスRNAレベルについて検査しました(表2)。全体の滲出液またはその細胞画分は最も信頼できるFIPV RNA供給源でした。ウイルスRNAレベルは8匹中7匹の猫から2-5日までに、多くの場合検出できないレベルにまで減少しました。たった1匹の猫(CT54)だけ9日間ウイルスRNA水準の顕著な減少が現れませんでした。

 

 

治療中及び治療後の観察された副作用

 局所注射部位の反応

注射部位の反応は2種類のタイプがあり、薬物か希釈剤または両方によって誘発されたのかどうかは確認されていません。瞬間的な痛みの反応は30-60秒の間続く発声、時々唸る声及び姿勢の変化が現れます。このような初期反応は時間の経過とともに保護者が注射の管理に慣れていき、猫が注射の習慣に適応することによって深刻度が軽減されました。治療を受けた猫26匹中16匹が注射部位に潰瘍が現れました(表3)。潰瘍は最初の4週間が最も顕著に見られ、16匹中7匹の猫からだけ傷口が開く状態にまで進行しました。潰瘍は周辺の毛を切り、1日に2回、家庭用の過酸化水素と水2倍に浸した綿棒で傷をやさしく洗うことで2週間以内に治癒されました。猫3匹だけが注射部位に目立つ傷跡がありました。

 

 

全身の薬物反応

合計12-30週間に渡る全身の薬物反応GS-441524治療は驚くべきくらいに安全でした。GS-441524を使用した初期治療に全体の腹水のCBC値記録または腹水の細胞分割において長期的な異常が観察されていません(図3及び4)。肝臓および腎臓機能とアミラーゼ/リパーゼのレベルについての検査は、治療中と治療後に正常に維持されました(補助図S1-S3)。唯一の例外は1匹の猫(CT53)でしたが、この猫(CAT53)は血液尿素窒素(BUN)が35mg/dl(基準間隔[RI]16-37μg/dl)と徐々に増加し、CDMA(20ug/dl)が急に増加しました。4mg/kgより高い用量療法で3次治療をしていたところ、8週間でこれらの兆候は性格上依然として軽微でしたが、慎重に治療を中断することに決めました。これらの異常は、1 か月後に検査では明らかではなく、この猫は現在病気が緩和されています。

 

解剖所見

4匹の猫(CT56、CT62、CT72、CT75)が登録後2-5日以内に安楽死または死亡し、1匹の猫(CT75)を除くすべての猫に対して解剖を行いました。5 番目の猫 (CT54) は治療 26 日後に安楽死されました。これらの猫5匹とも、深刻な腹部滲出性疾患を患っていました。猫CT54とCT56は解剖時に腹部内臓、中枢神経系および目を含む広範囲な化膿肉芽腫性血管炎の症状を示しました。猫CT56はまた、密集した浸潤および二次性細菌性敗血症領域で回腸壁が損傷していました。猫CT72は中等度で重症の末梢浮腫や副腎皮質の石灰化とともに腹部に限った重症化膿肉芽腫性血管炎が見られました。 猫CT62は敗血症を示す植物性成分および病変内バクテリアに関連する急性胃穿孔によって複雑になった深刻な化膿肉芽腫および線維消化膿性腹膜炎を患っていました。猫CT75は深刻な成長障害、多量の低タンパク/低細胞腹部滲出、心臓機能障害を示すギャロップリズムおよび中等度重症末梢浮腫を特徴とする慢性形態のFIPを示しました。心臓の超音波から両側の心房拡大が確認されたが、原発性心臓疾患の兆候は見られませんでした。猫はGS-441524に反応したように見え退院しましたが、猫は2日後にショック状態に陥り、解剖なしの安楽死されました。

 

FIPVは解剖当時、猫(CT56、CT72、CT75)からq RT-PCRによる検出できませんでしたが、治療前の腹水サンプルは陽性とテストされました。猫CT54の腹水は治療初期にかかりqRT-PCRによる陽性とテストされ(表2)組織は解剖時、免疫組織化学で依然として陽性でした。

 

1回以上の治療を成功的に終わった後、2匹の猫を追加で安楽死させました。猫CT57は1回目の治療後、正常でしたが2週間後に深刻な神経学的兆候が再発しました。猫は再治療に反応していなかったため安楽死させられました。FIPの典型的な病変は脳と腹部内から発見されましたが、ヌクレオカプシドタンパク質について免疫組織化学検査からFIPVは陰性であり、qRT-PCRによる7b RNAでも陰性でした。猫CT80は滲出性腹部FIPについて成功的な治療を受けましたが4週間後に深刻な後肢痛と腰痛が発生し、安楽死させられました。この猫は左心室壁と中隔が著しく厚くなり心室がかなり収縮していることがわかりました(図8)。左心室壁の顕微鏡的見た目は先天性猫肥大症心筋症(HCM)の典型でした。腹部、胸部、目、脳、脊髄からFIPの肉眼的または顕微鏡的病変が発見されず、qRT-PCRでFIPV抗原及びRNAが検出されませんでした。 

 

 


Dr.PedersenのGS-441524を使用したFIP治療の研究報告書 ③議論・結論はこちらから

 

 

 

 

 

 

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