とうとう手術の時がきました。
前回の流産手術同様、見たことのある廊下、景色、そして部屋。
ほんの数か月前までは、初めての事で恐怖でいっぱいだったのに、1度経験してしまえば、こんなにも落ち着くのかと驚きました。
しかし、ドキドキと心拍数はどんどん上がっているのがわかります。
まもなく、娘とさよならするとき。
もうお腹の中からいなくなってしまう。
看護師さんと一緒に手術室へと歩くこの道のりが、とても心が締め付けられそうな気持ちでした。
「ネッコさん。お待たせしました。ではここに寝転がってくださいね。」
「はい……。」
看護師さんに手を添えられて、寝そべる手術台へ登るあの景色が、今も鮮明に思い出されます。
明るいライト…
緑の手術台…
手術台にあおむけになり、準備が進みます。
ルート確保、ライトセット、心電図、サチレーションモニター足場固定…
(娘ちゃん、まもなくだよ、もう少しでお空へ帰ってしまうね…お母さんのおなかの中はあと少し…ごめんね、ごめんね…)
もう少しでお腹の中から娘はいなくなる。
わかってはいても、もう、辛かったです
娘は、
(大丈夫!手術は痛くないからね!)と。
そして。いつも担当してくださる医師が到着しました。
「ネッコさん、緊張してますね。深呼吸して、すぐにおわりますからね。では…はじめますね。」
麻酔が入れば、もう、きっと終わるのはすぐです。
私は、妊婦ではなくなります。
(娘ちゃん、ありがとう。お母さんはとっても幸せだったよ。)
すると、娘から、最後に大きな声で何度もも叫ばれました。
(お母さん大好き!お母さん大好き!お母さん大好き!お母さん大好き!)
あぁ…、娘ちゃん、お母さんも、本当にあなたのことを愛しているし、私も大好き。
本当に大好きなんだ。心から、愛しているよ。大好き、大好きだよ。
お母さんのおなかの中に来てくれてありがとう。
そういって、麻酔の中に入りました。
娘の言う通り、以前の手術とは違い、息苦しさも痛みも全くありませんでした。
むしろ、心地よくて、浮いているような感覚でした。
暖かくて、目の前の景色はピンク色。
その中でも、私も娘ちゃんを大好き!と、ずっと叫んでいました。
「……、ありがとう、それで、うん、再度拭いてもらって…」
声が聞こえてきました。産科の医師の声です。
「ネッコさん、聞こえるかな、手術おわりましたよ、お疲れさまでした。」
まだ頭がぼーっとしています。
手術は無事、終了しました。
部屋にストレッチャーで移動し、麻酔がまだ少し効いている状態で主人に電話をかけます。
「もしもし、終わったよ…、赤ちゃん、ありがとうって、大好きって…そう…言ってて…ありがとうって最後…言ってたよ…大好きって…」
そう主人に電話で伝えた瞬間、号泣しました。
もう限界でした。
一緒に私も死んでしまいたい。
でも、その思いを払拭したのは、娘との最後の約束でした。
必ず生きる。
何があっても私は生きていく。
そしてもう、私の声掛けに、娘が声をかけてこれることはありませんでした。
私の2回目の妊娠が終了しました。