私は大学を卒業して1年目に妻を関西から嫁に連れてきた。勤めていたのは最終勤務地となった0野村の隣の軽米という町だった。どちらも岩手県の県北の県境にある高校だった。
関西から来た家内はどんなに心細い心境だったか・・・。
東北本線の北福岡という駅を降りて更に2時間、国鉄バスに揺られて北上山地を横断した。
そのバスが一つ目の尾根を越えた時、妻は「もうすぐですね!」と問うてきた。」「あと、1時間はかかるよ。。」というとポロリと一滴が頬を伝った・・。そんな時代があったなんて・・。
さて、その新婚時代、休日に近くの野山を二人で散策した。自然だけは最高の場所だった。
私はそこでタラボーの木から新鮮なタラの芽を1個取って「これをてんぷらにしたら美味いよ」と教えた。 新妻はまだてんぷらなどの料理はできないと思っていたからである。
ところが次の日、夕食に出たのはなんと山菜の天ぷらであった。
妻は自慢げに「あなたに昨日、教えられたタラの芽を採ってきて料理したのよ!」というのである。私は何杯もお代わりしてその御馳走を頂いたのであった。
そして次の休日にまたその山野を二人で散歩した。そしてその途中で妻が指さして
「ほら、あの木よ!まだいっぱい芽がついているわ」と言ったのである。
そしてびっくりした・・・。なんとその木は漆の木であったのである。
「愛は全てを忘れさせ痒みもなくする・・」
この時の思いはこの5月に金婚式を迎える年になった今でも忘れられない・・・。