私とじーちゃんは仲良しだった。
東京タワー行ってみたい!って電話で話したら
ハイエースで青森から埼玉まで迎えに来る仲だ。

じーちゃんはニワトリの首を絞めたような声で、ラヴ・イズ・オーヴァーを熱唱しながら八戸ナンバーで首都高を走った。
かっこよすぎた。


じーちゃん、すごく短命だった。
地獄のように塩っぱい北国のつまみと、お酒が好物だったな。


私のじーちゃんは青森でりんご農園をしていたのだけど
農家、やりたくなかったんだろう。

ちょいちょい逃亡しては近所のタバコ屋さんで仲間とストーブ囲んでワンカップを飲んでた。

それを私が帰省のたびに探しに行くのが楽しみだった。


イヒじーちゃん、やっぱりまたここだー!

チューあー、みつかったぁ。ばーちゃんに内緒にしてね。えんちいはいっつも、じーちゃん探しにくるからめんこいなぁ。

ウシシいひひ。(ホントはサラミくれるからだぜ。)

そんな話をしながらりんご畑まで手を繋いで歩いた。
大っきくてガッサガサの手。その親指だけを掴むのが好きだった。


じーちゃんは私に姫林檎の木を一本くれた。
この木のは全部えんちいが食べていいよー。誰にもあげるなよー。って。
そこに登って美しい山々を見渡す。


りんご畑の脇には大きな川が流れていて
じーちゃんは川の対岸で鮭の孵化場もやっていた。

ばーちゃんは、
「じーちゃんはりんご作りたくないからいろんな事を借金までしてやって農業から逃げてるんだよ。まったく!」
(化粧品会社に卸すとかで、ミミズの養殖場もやっていたが、それは早々に潰れ多額の借金が残り、ミミズは私のペットのゼニガメのピエールの餌になった。)

「遊んでばっかりで、外国から自転車で旅行してる人とか勝手に家に泊めたりすごく大変なんだから。結婚したの失敗だった!」
とカンカンだったけど、私はそんなじーちゃんが大好きだった。

(これはうちのトーちゃん。孫へわかさぎ釣り中)


じーちゃんにポッケにりんごと杏を入れてもらって、日本昔話みたいな木の船に乗って大きな川を渡り、対岸の孵化場に行く。

今度はイクラと鮭をとりに。

寒ーい孵化場のなかには鮭がいっぱい。
触ったことのないくらい冷たい水。

こんな中に魚がいる!凍らないのか不思議だったなぁ。


お家に戻ってから、じーちゃんと一緒に噛んでも噛んでもプチっとならない程プリプリのイクラを醤油で漬ける。
それを山盛りスプーンで口に入れてもらう幸せ。

あと鮭はまるまる干してトバにする。
しゃけとばって、わかるかな?美味しいよ。


じーちゃんはそれからまたふらっと裏の山に。
そして手にはキジとタヌキを持って帰ってくる。

冷凍庫あけたら、ウサギ、鹿、熊、イノシシ。
ザ、ジビエ。鹿が美味しかった。

関東育ちの私からすると、じーちゃんはホントにスーパーヒーローだった。
 

じーちゃんが早くに亡くなってから
りんご畑は売りに出された。


で、そのりんご畑も何年か前の台風で全部水没した。
きっと私の姫林檎の木も。


私はこれからその失ってしまった景色を取り戻せたらと考えている。

生きるということは残酷な事だらけで、強くならなければやってけない。

強くなる心の支えに、そんなあったかいノスタルジックな思いが私にはいつもある。


私は子供にとってじーちゃんみたいな、スーパーヒーローになりたい。



サモトラケのニケは勝利の女神の彫像。

サーモントラウトはサケ

サモトラケのニケ
サーモントラウトのシャケ

あー、ちょっと言いたかったの。すまん。




映画straight storyの一曲

頑固なアルヴィン爺さんが

あいつと一緒に座って星を眺めたい。
ずっと昔にわしらがそうしていたようにな、、。

のセリフのとこで、秒で号泣。