インタビューwithキタイ花ん

左:今井将人 右:高見雄登


高田:『ヒガシ逢ウサカ』というコンビ名は、少し変わっているように思えますが。


高見:元々、僕が東大阪市出身で今井が滋賀県の大津市にある『逢坂(おおさか)』出身なんです。共通の『オオサカ』というのを使おうかとうことになりました。最初は『東逢坂』という漢字三文字だったんですけど、ある人からストップが掛かりまして。


今井:ケチをつけたのは僕のオカンなんです(笑)。「漢字三文字はピンとけえへん」って言い出しまして。


高見:学天即さんとか天竺鼠さんとか、有名な漢字三文字の先輩方はたくさんいてはるんですけどね(笑)。


今井:僕のこだわりとして『逢』っていう漢字は絶対残したかったんです。この漢字ってロマンチックで素敵じゃないですか?


高見:どの顔して言うてんねん。


今井:全部、カタカナで『ヒガシオウサカ』ってなりかけたんですけど、『逢』だけ残して『ヒガシ逢ウサカ』になりました。


高田:お互い現在のコンビが最初のコンビでしょうか?


高見:はい。


高田:コンビを組むに至った経緯を教えていただいてよろしいですか?


高見:NSC在学中に前田政二先生の授業で、それぞれが自己紹介をするんですけど、その時、一番はっきり物を喋っていたのが今井だったんです。それは印象に残っていますね。


高田:はっきりと言うのはハキハキとしてらっしゃったということですか?


高見:そうですね。きちんと喋っていたというか。


高田:堂々としてらっしゃった?


高見:堂々とはしていなかったんですけど。


今井:いえ、僕は実に堂々としていました。


高見:ほんなら、そういうことにしとくわ(笑)。それで偶然、僕の隣に彼が座っていたので、声を掛けやすかったんです。


今井:今、お前なんて言うた?


高見:偶然、隣に座っていたって。


今井:これね。実は偶然じゃないんですよ。


高田:詳しく教えていただいてよろしいでしょうか?


今井:NSCって入学前に面接があるんですよ。その時にエレベーターで高見と一緒になったんです。その時、高見から「緊張しますねえ」って声を掛けてきたんです。


高見:僕からしたら軽いコミュニケーションでした。


今井:面接が終わって帰ろうとしたら、高見がある店に並んでいるんです。何してるんやろなと思って、それとなく見たら『りくろーおじさんの店』でチーズケーキを買っていたんですよ。


高見:その頃は実家にまだ住んでいましたんで、難波に出てくること自体が久々やったんです。


今井:僕からしたら「こいつめっちゃ観光気分やん」ていうのは正直ありました。だからその時の印象っていうのは、あんまり良くなかったんですよ。


高見:なんでケーキ買うだけで嫌われなあかんねん。


今井:それで自己紹介の時の授業に話は戻るんですけど、僕は人見知りする方なのでやっぱり誰か知っている人の近くにいたかったわけです。だから高見がドア開けて入ってきた時に、「おう」って感じで顔を見たら、引き寄せられるように僕の隣に座ったんです。


高見:ただ隣に座っているのに特に会話はなかったですけど(笑)。で授業が終わって講師の先生から「次からネタしてもらうんで、お前ら、はよコンビ組んどけよ」って声掛けられたんです。だから自然にその流れで組む形になりました。


今井:高見がギラギラした瞳で僕を見ていたのが今でも忘れられません。


高見:そないにギラギラしてなかったと思うけど。


高田:ということは、お笑いの方向性とか感性などをお互い全く知らずに組まれたということですよね。


高見:コンビ結成翌日に梅田のタリーズコーヒーで会うことになったんです。お互いの情報がほとんどないわけですから、ノートに自己紹介とかどんなお笑いが好きかっていうのを書いてきて欲しい、あとやりたいネタとかあったら、その次のページでいいんでそれも書いてきて欲しい、それを持ち寄って話をしようって言うてあったんです。


高田:ということは、まだ本格的にコンビをやって行くかどうかは、その段階では?


高見:一度じっくり話し合ってからという流れでしたので、まだ決まっていなかったですね。


高田:それは高見さんも書いてこられたわけですか?


高見:はい。恥ずかしい話ですけど、僕のことをわかってもらおうと思って「こんな芸人さんが好きです。こんなお笑いが好きです」っていうのをびっしり書いてきました。対する今井は、半ページいかないくらいでした。空白が目出つんですよ。


今井:その時の僕の精一杯でした。


高見:自己紹介はまあええかと思って今度はネタのページの見せ合いをすることになったんです。僕はコントを一本書いてきて、今井は漫才を書いてきていました。これがクソおもんないんです! 「しくったなあ。焦りすぎたか」って脂汗がダラダラ出てきました(笑)。


今井:ネタなんてもんはね。実際にやってみないと面白いかどうかもわからないんですよ。


高見:こんなん言うてますけど、その漫才が最初の「どうも~」ていう導入のフリ部分がえらい長いこと続いて、そのまま特にボケもなくノートの半分以上まで進んでいくという実に恐ろしい漫才でした(笑)。


今井:連日のバイトが忙しすぎてネタに集中できませんでした。


高見:バイト言い訳にすな。


高田:そこからどのようにして方向性などを決めていかれたんですか?


高見:今から思うともし僕が「こういう笑いがしたい!」っていう確固たるものを持っていたら続いていなかったのかもしれないです。でもそうでなかったのでそれは結果的に良かったというのはあります。


今井:僕ら二人とも、お笑いのことをちゃんとわかっていないままNSCに入ってきてたんです。


高見:漫才がしたい、コントがしたいというのもなかったんです。とりあえずやってみようと、何でもやってから決めたらいいやんっていうスタンスでしたね。それは今も変わってないんですよ。


高田:こうしてお話を伺っているとコンビ仲が良さそうだなという印象を受けますね。実は前回『天秤丸』 のお二人にインタビューさせていただいたんです。そこで『ヒガシ逢ウサカ』のお二人の名前が出たんです。


今井:悪口ですか?


高田:違います(笑)。「『ヒガシ逢ウサカ』を見て、コンビ仲が良いというのがいかに重要かを知った」とおっしゃっていたんです。


今井:それを言ったのって秋定でしょ?


高田:はい。


高見:あいつは本当に心がないんですよ(笑)。

中篇 へ続きます)