インタビューwithキタイ花ん

高田:街裏さんは現在、西成にお住まいなんですか?


街裏:そうですね。


高田:よく西成のおっさんネタとかをやっておられますが、ずっと西成で生活をされているんでしょうか?


街裏:元々生まれは堺市なんです。西成に住みだして4年ほどになりますね。


高田:あえて西成を選ばれたんでしょうか?


街裏:そんな事もないんですよ。安い部屋を探してたら、いいのがあったので決めたという感じです。安い分、壁が薄いんですよ。だから隣人の声とかが筒抜けです。うちの隣に夫婦が住んでるんですけど、その旦那の方が病弱で咳ばっかりしてるんです。あんまり咳するんで「大丈夫か?」って、心配してたら、夜になるといかがわしい声が聞こえてきて、「元気ありあまっとるやないか!」って(笑)


高田:なるほど、家にいててもネタを拾えるというのはすばらしいですね(笑)。これまで、ずっとピン芸一筋でやってこられたんでしょうか?


街裏:最初はコンビ組んでたんですよ。『裏ブラウン』というコンビ名で活動してました。だから今の僕の名前って、『裏ブラウン』から取っている部分が多いんですよ。


高田:裏という字が入っているのと、その後に色が入るというのは同じですもんね。コンビ時代、街裏さんはツッコミとボケのどちらをやられていたんですか?


街裏:そこが定まらなかったんです。僕がツッコミに回る事もあれば、ボケに回る事もあるという感じで。3年間活動していましたけど、ずっとそんな感じでしたね。コンビ結成2年目で、魁塾という所へ相方と一緒に入ったんです。


高田:魁塾というのは?


街裏:かわら長介先生が教えておられる放送作家、構成作家を育成する塾なんですけど、僕はそこの2期生なんですよ。


高田:なぜ入塾しようと思われたんでしょう?


街裏:まずコンビでやってた頃、自分たちが面白いと思っていたものが、お客さんに伝わっていなかったんですね。だからネタの書き方から学んだ方がええんちゃうか、という事で入る事を決めました。あと、もうひとつ理由がありまして。


高田:よければ教えて下さい。


街裏:その時、キタイ花んのオーディションが吉本の本社ビルで行われてたんです。で僕らがオーディションを受けていると、みんなから「社長、社長」って言われてる方がやってきはりまして、いきなり僕らに方へやってきたんです。


高田:どういうお気持ちでした?


街裏:ドキドキしましたね。それでその社長が「君らNSC行ってないらしいやないか。こういうのがあるんや。良かったらどうや?」って、魁塾のパンフレットを渡されたんです。


高田:それで入塾を決意されたと?


街裏:やっぱりね。吉本の社長から直々に薦められたんで、これは行かなあかんやろと。ほんで魁塾に入って一発目の授業の時に、その社長が前へ出て来られたんです。でよう話聞いたら、その方は大滝社長という魁塾を運営されている方だったんですよ。吉本の本社で「社長」って呼ばれてはったんで、てっきり吉本興業の社長かなと、勝手に勘違いしてました(笑)。まあ魁塾に通った事はいい経験になったので、行って良かったですけどね。


高田:その後、しばらくコンビで活動してから、いよいよピン芸人に?


街裏:そうですね。魁塾を卒業して、1年ほどコンビでやった後、自分でやってみたい事があったので、ピン芸でそれをやってみようと思いました。そこからずっとピンでの活動が続いています。


高田:やっぱりピンの方が合っていたと、思われますか?


街裏:それはありますね。僕ね。見た目がいかつい感じなんで、なかなかわかってもらえないんですけど、かなり気を使うタイプなんですよ。だからコンビ時代は、相方に言いたい事があっても言えてなかったんですね。


高田:2008年頃ですかね。その頃、ピンでキタイ花んに出られていた頃の舞台は、何度か拝見してるんですよ。正直度肝を抜かれましたね。持参したラジカセを蹴っ飛ばして不満を叫ぶ街裏さんの姿を見て、「これはある意味、パンクロックだ!」と思ったぐらいですから。


街裏:コンビ時代はまるで毒気のないものをやっていたので、抑えていたものが爆発していたのかもしれませんね。


高田:あの後、松竹芸能に入られたんですよね?


街裏:はい。もう今は所属していないんですけど、1年弱ほど松竹の方でお世話になっていました。


高田:なぜ松竹芸能を辞められたんですか?


街裏:僕は別にテレビ用のネタじゃなくても、面白いネタっていっぱいあると思ってるんです。でもやっぱり会社としては、テレビ用に使える短いネタをやって欲しいというのがあって、その辺りの方向性の違いがあったのと、あと吉本新喜劇のオーディションを受けてみたからです。


高田:テレビに出たいというお気持ちは強い方ですか?


街裏:どうなんでしょうね。正直いうと、レギュラーを持ちたいという願望は、あまりないんですよ。それよりも舞台で自分のネタをやっていきたいと思いますね。


高田:舞台の話が出ましたけど、街裏さんのネタっていうのは基本、漫談ですよね。ピン芸人の方はたくさんいらっしゃいますけど、純粋に漫談で勝負している方って数少ないと思うんです。そもそもなぜ漫談をやろうと思われたんですか?


街裏:最初はやっている人があまりいなかったので、じゃあやってみようかという感じでした。あとコントとかって、恥ずかしいんですよ。キャラクターを演じるというのが、すごく苦手なんですね。それなのに新喜劇のオーディションを受けようとしてたのは、矛盾してるんですけど(笑)。


高田:という事は現在やられている漫談も、別にキャラになってやっている訳ではない?


街裏:あれは半分以上は僕の地なんですよ。ちょっと真面目な話になりますけど、普段の生活で僕が抱えている怒りとか哀しみとかを笑いに変えているという感じですね。


高田:漫談をされる上で、意識されている方とかはいらっしゃいますか?


街裏:毒のある漫談でいうと、やはりビートたけしさんですね。憧れの存在ではあるんですけど、同じになってはいけないので、その辺りは常に気をつけています。


高田:いきなりですが、街裏さんは女性にモテる方ですか?


街裏:これがモテないんです。“女にモテない”、“お金がない”というのは、僕が笑いをやる上で根源的な部分ですね。


高田:現在、街裏さんがやられているネタというのも、女性より男性に受けがいいのかなと思うんですが。


街裏:そうですね。だから客席の後ろに男性がいたら安心するんですよ。もうその人らに向かってネタしますからね。それでその男の人たちを笑わす事によって、前に陣取ってる女性にも「これって面白いんや!」と、間接的に伝えてもらってる気がするんです。だから、まず後ろの男性たちを笑かせにかかります。

後編 へ続きます。下記 へ読み進めて下さい)