高田:小島君と山本君はアマチュア劇団の『劇団プラスチック犬』のメンバーでもあるんですよね。何か劇団活動を始められて、変わった部分とかってありますか?


山本:まず声ですね。


さくげき座談会

高田:発声というのは中山先生からも毎回、指摘されるところなので重要なポイントですね。「腹から声を出すように心がけるべし」ということを、先生からみんな言われるところだと思うんですが。


山本:発声というのは「意識すれば変わる」というのがわかりました。自分が相手に伝わるであろうと思っている声量よりも、更に遠くへ声を飛ばすことを意識するんです。そうすれば声の出方はおのずと変わってきますね。


高田:舌滑に関してはいかがですか?


山本:早口言葉を言うなどのトレーニングなどはもちろん効果的なんですけど、あれをやって気づいたのが、ほんまに早口で言ってしまうと、実は何を言っているか聞こえないんです。


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小島:大事なのは、はっきりと言葉を口にすることみたいですね。そうするとリズムよく話すことができるので、早口に聞こえて何を言っているのかもきちんと聞き取ってもらうことができるんです。


高田:この前の山本君のブログで「ある劇団の方に見てもらう機会があった」ということを書かれてましたよね。


山本:はい。舞台監督と役者の両方をされている方なんですが、最初の一時間くらいでものの見事に弱点を見抜かれましたね。そんなにあるのかってくらいご指摘いただきました(笑)。


小島:僕もその場にいて指摘していただいたんですが、まず“立ち方”について言われました。『がに股』はいけないらしいんです。声が分散してしまうので、爪先を声を伝えたい人の方向へまっすぐ向けると、一点集中するので伝わりやすくなるらしいです。


山本:話している人に対して爪先を向けるといいらしいです。足を向けるということで、自然と意識がそっちにいくのだと思います。


高田:あと声量に関してもアドバイスをいただいたそうですね。


山本:声の大きさというのは最終的に股関節と関係してくるんですって。


高田:股関節と声量が関係あるんですか?


山本:実はあるんです。肺活量というのは肺だけだと、限界があるのでそれを補うために胃や他の部分で補ったりするらしいんですよ。それで股関節が柔らかい方が大きい声を出すという意味では有利だとお聞きしました。


小島:プラスチック犬の中では山本さんの股関節が最も柔らかいので、声量のポテンシャルは高いみたいですよ。


山本:これは僕と小島さん二人ともそう言われたんですが、肩に力が入りすぎらしいですね。


高田:リラックス状態の方が声は出やすい?


小島:そうなんです。ジャンプした際に肩が動くくらいが理想みたいですね。


高田:その辺りは絶えず意識するしかないわけですよね?


山本:そうですね。最近は歩く際も爪先を前に向けて、がに股にならないように気をつけています。ただ歩いていると物凄く気持ち悪いですけど(笑)。


島:私も姿勢が良い方ではないので、見習いたいですね。大きな声を出す時って、どういう姿勢がいいんですか?


小島:まっすぐに立って肩の力を抜いて、腹式にならないとダメなのでお腹にだけ力が入っているというのがいいと思います。僕はちょっと体が反っているらしいので、その辺を直したいですね。


山本:僕は“ジョジョ立ち”みたい感じらしいんですよ(笑)。お腹が出ていてS字にくにゃんとなっているらしいんです。そうなると空気の入る量が少なくなるので、肺活量にも影響してくるんですね。


高田:発声練習というのは外でやられているんですか?


山本:はい。公園でやっています。たまに歌の練習をしている方とかもおられますよ。


高田:島さんもへたならの本番前だけ、プラスチック犬の発声練習に参加させてもらったらどうですか?


島:あっ、いいですね。ぜひお願いしたいです。


さくげき座談会

山本:ただ羞恥心は捨ててもらわんといかんよ。


島:やっぱり最初は恥ずかしいもんですか?


山本:外で大声出すというのはね。最初は抵抗があるもんなんよ。慣れたらそうでもないけれど。


高田:練習をしている時に何か言われたりとか?


山本:基本的にそういうことはないんです。割とみんな放っといてくれるんですよ。素通りする方がほとんどですね。


高田:腹筋、背筋というのはやっぱりやった方がいいんですか?


山本:腹筋はもちろんあった方がいいんですけど、もし腹筋、背筋のトレーニングをやるなら腹筋の回数の二倍、背筋をやった方がいいようですね。


小島:腹式呼吸は内臓を動かして空間を作るんです。その空いた空間に空気を入れることで大きな声が出るようになるので、その内臓を動かすために腹筋が必要になるんですね。


山本:森公美子さんや中島啓江さんのようにふくよかな方は、それだけ空気を入れるスペースがお腹にあるので、あのような声量が出るらしいです。だから島さんも寝る前にケーキとかおはぎとか甘い物をドカ食いするなどして、本番までに太ったらええんとちゃう? そうすりゃ声が出るようになるよ。


島:でも本番が終わったらどうするんですか?


山本:そんときは痩せればええやん。


島:簡単に言わないで下さいよ。もし痩せなかったらどうするんですか?


山本:それはまあ自己責任やがな。


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島:ひどーい。


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高田:では山本君の無責任男ぶりが発揮された所で、本番に向けての抱負をお願いします。


山本:完全に僕、悪役じゃないですか(笑)。


高田:では島さんからお願いします。


島:怖がって欲しいところで、怖がってもらえるように演じたいです。あと、

顔の向きにも気をつけたいですね。


山本:今回こそはお客さんに満足してもらえるように頑張りたいです。


小島:怪談の演目なので、お客さんに「なんか気色悪い噺やなあ」と思っていただけるように演じたいです。


高田:お二人は『プラスチック犬』を背負っての高座ということでいいですか?


小島:どうしてもそっちに持っていきたがりますねえ(笑)。


山本:ただスタッフの方とか関係者が恐らく見にきて下さると思うので、下手は打てないというのはあります。そういう意味でも今回は気合が入りますね。


※第11回へたなら寄席の詳細についてはこちら をご覧くださいませ⇒へたなら寄席HP


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高田:7月24日に行われます第11回へたなら寄席に、演者として出られるお三人さんに来ていただきました。それぞれ今回で何回目になるんでしょう?


山本:四回目です。


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島:私は高座デビューが山本さんと同じなので、同じく四回目ですね。


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小島:ええっと、僕は……。すいません、結構出てるんで回数忘れちゃいました(笑)。


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島:小島さんは初期メンバーなんで、たくさん出てらっしゃいますもんね。


小島:多分、7回くらいだったと思います。自信はないですが(笑)。


高田;今回は初の“しばり”がありまして、全員が怪談ネタなんですよね。では、それぞれが今回やられる演目を教えて下さい。


山本:僕は今回『幽霊の辻』をやらせていただくんですが、中山先生のご自宅にお邪魔した際に、ちょうどそのDVDがあったんですよ。「これ貸して下さい!」とお願いして貸していただきました。もちろん先生の機嫌が良い時を見計らいました(笑)。


小島:僕も怪談ネタで気持ち悪い噺って何かなと思って探してたら、そういや『もう半分』っていう噺があったなあというのを思い出しまして。


島:実は『幽霊の辻』も『もう半分』も私がへたなら寄席で以前やらせてもらったネタなんですよ。だから私の時と比較されるのが、ちょっと怖いですね。


高田:特に前回やられたばかりの『もう半分』は、もろに比較されそうですが小島君的にいかがですか?


小島:僕も比べられるのは怖いです(笑)。


高田:お客さんを怖がらせようとするお二人が、別の意味で恐怖に戦いているわけですね。


島:『もう半分』は私が調べたところ、落語通の方の中でも最も怖いとされている怪談落語なんですね。


小島:そんなやる前にプレッシャーかけんといてよ(笑)。


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高田:さては今から小島君に重圧を与えて、『もう半分対決』に勝利しようという魂胆ですね?


山本:これやから女は怖い。


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島:そんなに腹黒くないですよ! ただあの噺ってオチを伝えるのが凄く難しいです。


小島:さらに追い討ちが……。何か胃が痛くなってきました(笑)。


高田:そんな腹黒い島さんは何の演目を?


島:さらっと腹黒キャラを盛り込むのはやめて下さい(笑)。私は『腕食い【かいなくい】』をやらせていただきます。今回のネタは直接、幽霊が出てくる噺ではないので、厳密に言えば怪談かどうかは少し微妙なんですが。


高田:『腕食い』のどの辺りに惹かれましたか?


島:お墓が出てきたり赤ん坊の死体が出てきたりと、かなりオドロオドロシイ部分があるところです。それに空気というか噺の雰囲気も良かったです。


高田:山本君と小島君は怪談噺をやられるのは今回が初めてとのことですが、勝手の違いなどはありましたか?


小島:今までは比較的、笑いの多かった演目をやっていたんですけど、今度は怖がらす方なので、ノリというかそういうのはやっぱり全然違いますね。あとオチもふわっとしていますし。


高田:『泣かせる』『笑わせる』『怖がらせる』の中では、最も難易度が高いとされる『恐怖』ですが。


小島:難しい分、挑戦のしがいがありますね。何しろ毎回、練習の際に見て下さるのが、ご自分で怪談を書かれ、怪談語りのプロでもある中山先生ですからね。


高田:この辺りで前回のへたなら寄席を振り返ってもらっていいでしょうか?


山本:まず声が出てなかったですね。録画してもらったDVDを見返してみたんですけど、テレビのボリュームを最大にしてようやく何を言っているのか分かる程度なんです。あと、思ったよりも早口になっていましたね。


高田:本番になるとみんな焦ってしまうので、どうしても早口になりがちですね。


山本:そうなんですよ。なので今回はお客さんがきちんと聞き取れるようにはしたいですね。


小島:僕は『看板の一』をやりました。これは以前にもやったネタで再演だったんです。前々回はネタが飛んだり噛んだりとヒドイできだったので、それと比べたら大分マシでした。欲を言えばもっと笑いが欲しかったです。


島:さっきもお話に出ていた通り私は『もう半分』をやらせていただいたんです。今までは、緊張すると下を向いてしまう癖があったんです。それを気をつけてやったんですけど、今度は“上下”(人物の演じ分けをする際に、顔を左右に振ること)を振りすぎちゃいまして、そこが反省点ですね。


高田:確か島さんは毎回、ご両親が観に来られるんですよね?


島:はい。


高田:では、こういうのはどうでしょう。お父さんとお母さんに客席の両端に座っていただいて、どちらかのお顔を見ながら演じるというのは?


島:なるほど! それならちょうどいい感じで上下をつけられますね。


高田:ご両親のお顔が見えたら、島さんも安心して演じられるでしょうしね。


島:ただひとつ心配事が……。


高田:何でしょう?


島:もし、本番の前日にお父さんとケンカしてしまったら、お母さんの方ばかり見て落語してしまいそう……(笑)。


さくげき座談会

高田:それはまずいですね。できるだけ本番前は親子喧嘩をしないようにお気をつけ下さい(笑)。

(その2に続きます)

※各々のプロフィールについては、下記の名前かその横にあるブログ名をクリックして下さい。

島奈世子 (桐のほらあ)⇒ 『ショウメン ノ ニンゲン ノ ショウメイ』

小島雪 (桐のよぎり)⇒ 『小島雪のらくがき帖』

豊田龍介 (桐のななねん)⇒ 『龍の巣』


さくげき座談会


高田:島さんは、ご自宅でお母さんに落語を聞いてもらいながら、練習をされているそうですね。


島:はい。今回も付き合ってもらっています。


高田:お母さんは褒めて下さるタイプですか?


島:それが結構、厳しいんです。まず前回のへたならの事についても「もっとここをこうした方がいい」とか、ダメ出しされちゃいました。


高田:具体的にどんな事をおっしゃるんですか?


島:所作に対する指摘が多いですね。「ちょっと焦ってる感じがするので、もっとゆったりやった方がいい」とか、そんな事を言われます。


さくげき座談会

高田:ちなみにお母さんは元々、落語をお好きな方だったんですか?


島:いえ、全然詳しくないです。でも落語に詳しくない人が見て、おかしいと感じるくらいなんで、“もっと上手にならないとな”と思いましたね。


高田:小島君はどういった練習の仕方をされていますか?


さくげき座談会

小島:自転車に乗っている時にする事が多いです。自宅から教室まで、4,50分かかるんですよ。だから練習するのにちょうどいいです。


高田:移動時間を有効に使っておられる訳ですね。次にキャラクターの話に移りたいと思います。小島君はきっちりとキャラを演じ分けておられるように見えますが。


小島:『看板の一』はキャラが複数登場するネタなので、その辺りを演じ分けるのが楽しいです。キャラの力を借りられるんで、普段は恥ずかしいと思う事でも、落語をしている時は抵抗なくできますし。


島:その辺りは見習いたいですね。『もう半分』にお爺さんが登場するんですけど、中山先生から「お爺さんが女子大生に見える」と言われてしまいました(笑)。小島さんは、お爺さんとかの演技もお上手だなと思います。


小島:ありがとうございます。


高田:小島君は普段から、年配の方と接する事が多いので、自然と観察できているのかもしれないですね。


島:もっと私も人間観察に磨きをかけたいと思います。


高田:実際に落語をご自分でやられるようになってから、落語の聴き方、あるいは落語に対する興味など、以前と比べて変化はありますか?


豊田:手見せでやった後も、繰り返し春団治さんの『平林』を聞いているんですけど、手見せで演じてからは、完全に聞き方が変わりましたね。聞く度に発見があるんですよ。


高田:例えばどういった事でしょう?


豊田:言葉の言い回しとかを、やっぱり意図的にやられているというのが分かるんですよね。もし自分が落語をしていなかったら、普通に聞き流していたと思います。そういう意味でも、今は落語を聞くのが非常に楽しいですね。


高田:島さんには前回の本番前にも『桐の一門』の座談会に出ていただいたんですけど、その時に緊張すると下を向いてしまうので、そこを気をつけたいとおっしゃっていましたよね。その辺りは解消されてきていますか?


島:たまに手見せの時でも、下の方を向いてしまう時があるんです。だから完全に解消されているとは言えないんです。ただやっぱりせっかく見に来て下さってるんで、下を向いていては失礼ですから、今回もそこは注意したいですね。


高田:ある程度、慣れてくるとどこに誰が座っている、というのが見えてくるんですよ。


島:まだ私はそこまで余裕がないですね。本番が終わって、入り口でお客さんをお見送りしている時に「こんなにたくさんの方が見てくれてたんだ」と初めて気づいたぐらいでした。


高田:前回のへたなら寄席では、ちょっとしたハプニングがあったそうですね。


島:はい。前の方にお子さんと親御さんが座ってらっしゃったんですけど、そのお子さんがネタの途中に大声で「あっこの話知ってる!」って(笑)。いきなりだったので、焦っちゃって、一瞬止まってしまったんですね。だから26日の本番では、客席からどんな怒号や野次が飛ぼうと(笑)、動揺せずにやりたいですね。


高田:出順は豊田さんが最初で、二番目が島さん。中入りのすぐ後が小島君という風になりましたね。それについてはいかがですか?


豊田:高座デビューで、しょっぱなですからね。今から恐いですけど。


小島:大丈夫ですよ。僕も高座デビューの時は最初の出順でしたから。


豊田:その時はどうでした?


さくげき座談会

小島:噛みまくりです(笑)。その後のへたなら寄席で受付の辺りに立ってたら、お客さんに声を掛けられました。「おっ! よく噛む兄ちゃんやん」て。


高田:そんな覚えられ方を(笑)。まだ桐の一門に入られて、それほど日が経っていない豊田さんですが、ずばり桐の一門に入られて良かったですか?


豊田:はい!


高田:いい返事ですね。


豊田:当たり前じゃないですか。この前の塾長ブログにね。桂米紫さんが襲名された事について先生が書かれていたじゃないですか。あれで凄くいいなと思える言葉があったんです。


高田:教えていただいていいですか?


豊田:「襲名おめでとうございます。今度、一門を引き連れてご挨拶に伺います」と、あったんですけど、『一門を引き連れて』という言い方がいいですよね。その中に自分も含まれていると思うと嬉しくなってきました。


小島:米紫さんといえば、この前のへたならを見に来て下さっていたじゃないですか。


高田:まだ都んぼさんの時代ですよね?


小島:はい。襲名される前だったんですけど、その時それとなく様子を伺っていたんです。そしたらなんと、桐の一門の落語をご覧になりながら、メモをつけてらっしゃったんですよ。


島:ええー! 何て書かれてたんですか?


小島:ちょっとそこまでは分からないんですけど、想像するに『ほらあ、下向きすぎ』、『よぎり、噛みすぎ』とか『ななねん、マーライオン』とか、そんなんじゃないですか(笑)。


さくげき座談会

豊田:マーライオンは関係ないやろ! それに俺この前、落語してないし(笑)。


さくげき座談会

高田:まだまだ話は尽きませんが、最後に26日のへたなら寄席に向けて、意気込みをそれぞれお願いします。


島:せめてどなたがいらっしゃってるのか、分かるぐらいの余裕を持って落語を出来ればいいと思います。それに、桐の一門の一体感を感じられれば言う事はないですね。


小島:僕はまず噛まない事ですね。あと笑いを取りたいですね。


高田:さあ最後は豊田さんに締めてもらいましょう。


豊田:恐いなという気持ちもあるんですけど、手見せを何回もやってると、人前で演じるのが段々と快感になってきつつあるんです。だから恐怖が半分あるんですけど……。


島:もう半分は?


さくげき座談会

小島:上手い! 


豊田:最後にいいとこをとられちゃいましたね(笑)。もう半分は、もちろん楽しみですよ。

              インタビュー・文 高田豪


※第十回へたなら寄席は、9月26日(日)に、ワッハ上方4階にある上方亭(小演芸場)で行われます。詳細はこちら⇒『へたなら寄席HP』 をご覧下さいませ。