このFUNANって扶南(ふなん)のことなんでしょうね。
■2018年アヌシーのクリスタル賞受賞作品!「FUNAN」の感想
FUNAN
を新千歳空港国際アニメーション映画祭で観てきました。
公式サイト:http://airport-anifes.jp/
新千歳空港国際アニメーション映画祭長編コンペノミネート作品にして、2018年のアヌシー国際アニメーション映画祭の最高賞であるクリスタル賞受賞作品。
ポル・ポト率いる政党“クメール・ルージュ”によって地獄のような運命をたどることになる家族を描いた映画となっています。
本作を観てきた感想を恐れ多くもざっくり一言でいうと
すっっっっげー良かった
という感じで、またもや今年ベスト級作品に出会えしまいました。
もう少し詳しい感想を書いていきます。
■こんなことがあったとは・・・!かつてのカンボジア事情を知れる一作
まず、そもそも申し訳ないのですが、私
70年代後半のカンボジアがこんなことになっていたことを知らなかったのです。
だからこそ衝撃的。
幸せそうな日常から一変、クメール・ルージュの支配によって奴隷の様な生活を強いられていく過程は辛くてしょうがない、まさに“観る地獄”。見てられないぐらいの凄惨な展開が、これでもかと続いていくのですが、これが史実としてあるのだから拒み難い。
この後どんどん地獄になります。
また、映画館と言うシチュエーションが本作に良い働きをしています。スクリーン鑑賞は自分都合で一時停止したりできないので、こういった地獄めぐり映画に腰を重く感じる私には有無を言わさず見せつけられるので良く出来ているなぁと感心する次第です。
またギリギリで凄惨な描写を直接映さない配慮もハードルを下げる意味でも見事。
かつてカンボジアで何が起こったのかを体験できる作品として、非常によくできた作品です。
■ただ凄惨さを追うだけじゃない?人間ドラマのおもしろさ
また、ただ単に当時の劣悪な境遇を伝えるためだけの映画ではないのが流石です。
物語の味付けがまた絶妙なのです。
“離れ離れになった親子”を主軸として、一人また一人とそれぞれの理由で離脱していく家族たちのサバイバル展開の肉付けは、飽きさせない工夫となっていてダレずに集中して観ることができました。
また、主人公の奥さんと、それを支える旦那さんのドラマがまたいい!
この二人のある演出のおかげで、ひとつの恋愛アニメ映画としても観れるようなところが私のこの映画への愛着を増幅させるところです。
凄惨に凄惨を重ねていく展開の中、最後の最後で迎えるわずかな希望・・・そしてそれが解き放たれた時の解放感。
見事な一本を観たという多幸感に包まれました。
■意外と美麗!風景にも注目
あと、注目して欲しいのが風景美術。
カンボジアと言われても絵的にピンとこないのですが、夕日に照らされる田んぼであったり、高い幹が立ち並ぶ木であったりと、独特の風景には新鮮感があって、見惚れる瞬間もありました。
事態こそ大変なことにはなりますが、ちょいちょい絵的にきれいなものが観られるのもこの映画の魅力です。
キレイネー。
思いっきり直球のドキュメンタリー作品の装いではありながら
絶妙なバランス感で構成されたド傑作。
もっと多くの人に観て欲しい映画ではあるのですが、なかなか興行が難しい題材でもあります。
映画館で観る意味が乗る作品なのでぜひ全国公開果たして欲しいのですが、配給さん、どこかやってくれませんかね?
めっちゃ応援しますよ!
ポル・ポト〈革命〉史―虐殺と破壊の四年間 (講談社選書メチエ 305)
消去: 虐殺を逃れた映画作家が語るクメール・ルージュの記憶と真実
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