父には愛人がいた。。。

愛人はそのまま妻にすり替わった。。。


私はその愛人に二度会いに行ったことがある。。。

一度目は「父と別れて下さい」と震えながら懇願した。。。


愛人は真っ白なスーツを着て、ヴィトンの煙草ケースから煙草を出してふかした。。。


私も落ち着くために煙草をふかした。。。


しかし、なんだこのふてぶてしい態度は・・・

愛人のくせに・・・

人の父親をとっておきながら、もっと低姿勢になれよ!!

と、腹が立つばっかりだったし、

完全になめられていて、何を話しても

上から目線だった。。。


こんな程度の低い愛人をもった父が情けなくなった。。。


開き直った愛人の態度に腹が立ち過ぎて

私は自分の前にあったお冷を、ぶっかけた。


愛人は『ヒャッッ!!』と悲鳴をあげた。

ひょっとこみたいな顔をしていた。。。


店は混雑していて、入り口にはたくさんの人が席待ちをしていた。

私たちは入り口付近に座っていたので

このちょっとしたドラマは、きっと彼らを楽しませたことだろう。。。


愛人も店員も周りのお客も呆然としている中、

私は颯爽と店を出た。


気分は颯爽だけど、実は足がガクガク震えていた。。。(笑)




二度目に会いに行ったのは、まだうちの親が別居中で

完全に妻の座を手に入れてない愛人が、

最後の手段として、妊娠した時だ。。。


父も父だ・・・いずれは帰るから・・・と言っておきながら

腹ませて・・・

父はそんな愛人をおいて、母の元に帰ってきた。。。


「認知はしない」と言った。。。

情けなくてしょうがなかった。。。

浮気して、転がり込んで、腹ませて、認知はしない・・・


愛人に同情はしないけれども、こんな情けない父親なら

いらないのではないかと思った。。。


しかし愛人の執拗な電話攻撃に父は愛人の元へ戻った。。。



なので、再び愛人に私は会いに行った。

「子供をおろして下さい」と言ったら、

「絶対に生む」と言われたので、私はほくそ笑んで

「その子供が育った時、私は必ずその子に会いに行く。

 その子に何をするかは分からない。覚えておいてね」

と言ってその場を去った。


その時初めて愛人の顔が崩れた。

怯えた顔になった。

私は「やった!!」と心の中でガッツしたが、

今、母になって初めて、本当の意味で愛人の

あの時の気持ちがわかる。。。


「自分に何をされても動じない。。。

 でも子供にだけは・・・」

という母の想い。。。

愛人はもう母親になっていたのだ。。。


私も初めから、子供に何かしようなんて

思ってない・・・ただポーカーフェイスな愛人の

顔を崩したかっただけだ。。。


それでも、父と愛人を許したわけではない・・・

ただ、どうでもよくなっただけだ。。。


程度の低い愛人と、「認知しない」なんて言って、

平気で家に帰ってくるような父親・・・

そんな二人に労力を使うことが馬鹿馬鹿しくなっただけだ。。。



最近、あの時の愛人の怯えた顔をよく思い出す。。。

母親になった瞬間の顔だからだろうか・・・


今あの夫婦がどうなってるかなんてことは

どうでもいいけど、血を半分分けた弟・・・

幸せに育ってくれていればな~と思う。。。