流川に住み着いてから数ヶ月して私はバイトをクビになる。。。

バイト先の上司と喧嘩をしたのだ。。。

私が金髪に染めていて、それをウィッグで隠して

バイトをしていたことが気に入らなかったらしい。。。

(バイト先は茶髪すら禁止だった。。。)



さてどうしたものか・・・

パソコンをローンで月々4万払いで買ったばかりだった。。。


途方に暮れて、行き着けのBARで飲んだくれていると

BARのマスターが

「ねじまき鳥さん、暇ならグラス洗いだけでいいから

 接客しなくてもいいからバイトしてよ」

と、私を拾い上げてくれたアップ


そしてこのことが、それからの私の人生を大きく変える。。。



バーテンダーになりたかったわけではない。

BARでひとり飲むことは好きだったけど、

『よりこさん』のお店で懲りていて、接客なんて

無理だと思っていた。。。


はじめは本当にグラス洗いだけだった・・・

が・・・マスターが「少しくらいお客さんと喋ってよ」

と要望しだし・・・(接客しなくていい約束だったのに・・・)


「ちょっとはカクテルの勉強してよ」と要望はエスカレート。。。

いつの間にかバーテンダーになり、

ついには1店舗任され、私はいつの間にか『BARの店長』

になっていた。。。



まだただのグラス洗いの時、私はほとんど口を開かなかったけど

それなりに愛想は振りまいていたと思う・・・のだけど・・・

お客さんが後に言うには、愛想のひとつもなかったらしいシラー


そんな時、私はオフの日にバイト先のBARでひとり飲んでいた。

すると、男性4人のお客さんが入ってきて、

カウンターの椅子ひとつあけて、私の隣に座った。


隣の男は見覚えあるような、ないような・・・

客の顔なんていちいち見てないし、私は目が悪い。。。


するとその男が

「あれ~!ねじまき鳥さんがいるなら、K君も連れて

くれば良かったかな~」と言った。。。


誰だそれ・・・シラーと思ったらマスターが

「K君、ねじまき鳥さんのことが好きなんだって!

 無愛想だけど、時々見せる笑顔がいいんだって!」

と言った。。。


「無愛想」なんて心外だわむっと思ったが・・・

Kって誰よ!?って思って「K?誰?わかんない?」

って素直に言ったら・・・


「わ!K君むごい!!」と、隣の隣の男が笑った。。。


見たことない顔・・・だと思ったのは彼が好みのタイプの男

だったから・・・好みの顔なら忘れない。。。ドキドキ



その男と3年後に再会し、そして結婚することになるとは・・・

その時の私は微塵にも思っていなかったし、

彼ももちろん思わないどころか・・・

「感じの悪い女」と思っていたらしい。。。ガーン



流川に生息していたのは19歳から25歳まで。。。

そこには数々のドラマがあったし、酸いも甘いも

学んだ場所だった。。。


流川は、私の青春がつまっている。。。

今でも流川に行くと、懐かしく思うが・・・

でももう私の知っている街ではなくなったような

寂しい気持ちになる。。。

流川を歩いていてもアウェイな感じになる。。。



だけど今でも、流川のあの独特な昼間の匂い

「今から始まるぞ」と息吹く夕方の風景、

疲れきった顔で帰る朝方の皆の顔、

そんなことを思い出すと、なんだかおセンチになる。。。


終わり。。。