1月15日。

一瞬の出来事のように過ぎ去るも、中身は充実した1日であった。

第10回らいだぁ杯は、コロナ禍という逆境に屈することなく、いや、逆境に抑え付けられたセレクター達の活力を解放する場として、従来以上の盛況を持って幕を閉じた。

 

元々僕はチームを組んでおらず、出場予定が無いなりに適当にデッキを持って、挨拶してから中華街巡りをしようか程度にしか考えていなかった。欠員が出たら入ってもいいけど、前日までに連絡は無かったし、まぁ用無しでだろう。

 

 

向かう電車内で突然の招集通知。らいだぁ杯には逃れられぬ強大な引力があるというのか。

結果は1勝3敗戦犯で予選落ち、失意の旅に出ると主催のらいだぁさんに告げ、6人組で徒歩で中華街に乗り込み、また徒歩でだぁ杯会場近くに戻り、龍が如くの聖地巡礼(?)を行うという、怒涛の勢いで1日が流れていく。

 

1月15日 20時30分 バトロコ横浜伊勢佐木町にて―――

 

会場に戻る頃には決勝戦まで終わっていた。

が、ここからがらいだぁ杯の真骨頂である。

 

エキシビションマッチ

 

従来、優勝チームと運営で3対3のチーム戦を行い、勝てば運営の用意した個性的なプレゼント(例:スケボー)が渡されるという、ユーモアに富んだイベントだ。

今回は更に規模を広げ、10対10という超大規模イベントにパワーアップしていた。

運営側は10人、選手側も3位までのチームが参戦し、それぞれオールスターにディーセレに、デュエマにと様々なバトルを繰り広げていた。

だが、考えてみてほしい。

選手側は3×3=9人しか居ない。1人足りない・・・?

だが、心配ご無用。

 

 

見ると、1人だけスーツでバッチリ決めた青年が1人立っていた。

らいだぁ杯のディフェンディングチャンピオンでありながら、土曜出勤のために泣く泣く出場を断念した、宇宙一のセレクターの姿があった。

 

「定時20分前に仕事が降ってきて焦ったが、助けてくれ~~~と叫んだら助かった」

 

社会の理不尽に揉まれながらも、セレクターとしての矜持は忘れない、10人目の戦士が席に着く。

 

対して運営サイドはミッチー選手。

当然私服姿で、普段通りの落ち着いた雰囲気を感じさせる。

だが、首から吊り下げられた運営用のネームプレートからは、らいだぁ杯という一大イベントを裏から支えた立役者である、勲章のような輝きが感じられた。

 

宇宙一のセレクターの雄姿は当然見たい。だが、フォーマットはオールスターという。

困った。

僕はオールスターで3ターン以上戦うと失神する持病を持っている。戦い方はおろか、カードのテキストすら分からない。

だが、そんな細かいことはいいじゃないか。

 

 

このメモに負けないくらい、雑に、楽しく、興奮を伝えよう。

カバレージとは言えないとしても、1つの読み物として、楽しんでくれる人が1人でも居ればそれでいい。

そんな気楽な気持ちで筆を執った。

 

 

・対戦準備

 

シロネコ選手の先攻に決まる。

あくまでもエキシビション、気楽な雰囲気だ。

こういう場だからこそ、聞ける本音もあるというもの。

 

ねへ「今回の意気込みは?」

シロネコ選手「6ターンで決着を付けてやります!」

 

ここで、シロネコ選手のスリーブに目を向ける。ウマ娘のサイレンススズカのスリーブで、キャラの隣にメッセージが記載されている。

 

ねへ「スピードの向こう側へと書いていますが、遅いのではないでしょうか?」

シロネコ選手「じゃあ4ターンで決めます!!!」

 

質問は対面にも及ぶ。

ねへ「ミッチーさん、対面は宇宙一のセレクターを自称してますが、いかがでしょうか?」

ミッチー選手「僕は宇宙一の餃子を決めます!」

ねへ「今回の意気込みは?」

ミッチー選手「4ターンで殺されます!!!」

何とも自虐的ながら、ノリの良い返答だった。あくまで冗談、簡単に宇宙一を名乗らせるつもりは無いはずだ。

 

正真正銘、らいだぁ杯の最終戦が幕を開けた―――

 

デュエマ、スタート!!!

 

 

・Turn 1

 

シロネコ選手が突然、

 

「ヤバい、ヤバい、マジでヤバい!!!」

 

と叫び始める。社会に揉まれて頭がおかしくなったのだろうか。不安になった。

2体埋めてターンエンド。

 

続いてミッチー選手のターン。

コインを獲得し、早速キーを展開する。

 

 

違うカードが見えた気がするが気にしない。

今日も餃子街道まっしぐらのご様子だ。

 

むしろ不安なのはシロネコ選手。

集中力が散漫になり、この情報アドの好機を逃したようだ。

 

その後黒点キーを発動し、2面立ててアタック。ルリグアタックは止まり、1点のみの通過となった。

 

シロネコ選手 6点 VS ミッチー選手 7点

 

 

・Turn 2

 

シロネコ選手の情緒が更に不安定さを増す。

 

「やべぇ、めっちゃ事故った」

「こんな事故初めて」

「え~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」

 

 

思わずメモに記録したくなる感情の起伏。

ここで1つ白状しますと、メモのえ~~~を伸ばし過ぎて少し机を汚してしまいました。申し訳ございません。

何が起こったか。

 

1面のみ埋めてアタック

 

苦境が窺える。

返しのミッチー選手、グロウの際にまたウムルとタウィルの姿が見えたが、もはや慣れた光景。

盤面要求に労力を割くまでもなく、3面埋めてアタックに入るだけで2点要求に。

 

ここはシロネコ選手、ライフ維持が重要と判断してか、グレイブ・ディガーを発動した。

コインを3枚ベットし、消費エナを0に減らしつつ、空いた2面をバニッシュし、2体のシグニを回収した。

手札事故の苦境だからこそ、次ターンの戦力確保は欠かせない。

攻守兼用の一手であった。

 

シロネコ選手 6点 VS ミッチー選手 6点

 

 

・Turn 3

 

前ターンとはうって変わり、今回はディガーで2面空けた状態でターンを迎えたシロネコ選手。

アーツを1枚消費した以上、その消費を補うような攻めを見せたいところだ。

ウズラグ・ウズラグ・ダイショウという盤面でアタックに入った。

 

ダイショウのアップを絡めた連パンを素通しすることは危険したか、今度はミッチー選手が防御に動く。

黒点キーのエクシードでダイショウを7000マイナスし除去に。

まだ1点しかダメージを受けておらず、エナは潤沢ではない状況。

アーツを温存し、危険な1体を除去するに留めたようだ。

 

ウズラグ2体のみの2点要求となり、1体はガブリエルトLBで飛ばされるも、ルリグアタック込みで2点通ってターンエンドとなった。

 

返しのミッチー選手は、相変わらず自ターンでは大きな動きを見せず、3面埋めてアタックに入るのみ。

それでも7000マイナスと、ガブリエルトLBの影響で2点要求となったが、ここではシロネコ選手はアタックを通すことに。

ルリグアタック込みで3点通った上、その中にはリンゼアタックが含まれ、スペル・アーツ制限が無言の圧力としてのしかかった。

 

シロネコ選手 3点 VS ミッチー選手 4点

 

 

・Turn 4

 

3ターン目は防御を巡る駆け引きが始まり、実際にライフが減ったことで、戦いの針が動き始めたように感じた。

次は4ターン目。いよいよお互いのルリグが本領を発揮する時。

もう、ネタのカバレージではない。本気の勝負を書けるだろう。

そう、思っていた。

 

シロネコ選手

「えーーー、ちょっと待って、なんで!???」

「0点要求なんだけど!???」

「なんにもできないけど!!!」

「チャージなしで(ぼそっ)」

 

何故だろう、叫び声よりも最後の、チャージなしでの一言の方が、強く印象に残っている。

前代未聞の事故に直面し、叫ぶ気力すらも残らない、魂の抜け殻が垣間見えた気がした。

 

結局、「ぶりっつあーや!」を場に出し、リンゼをデッキバウンスしてから、ダイレクト(デッキ20枚落とし)を宣言した。

なぜ0点要求なのかは理解できないが、相手に圧力を掛けようという意志は感じた。

そう、勝負で苦境に立たされた時は、何かしら相手に抗わなければならない。

相手と同じペースで戦いを継続しては、同じペースでアーツを使い切り、事故の分の不利が出て敗北するのみだ。

逆転には相手のミスが不可欠。そして、ミスを誘うには、多少無理筋でも圧力を掛け、相手を迷わせる必要がある。

 

その後、シロネコ選手の苦境を如実に表す、本勝負で一番の名言が飛び出した。

 

「アカベコアカベコアタックで」

 

そう、2面しか埋まらなかったのである。レベル4とは思えない、見るからに貧相な盤面。

アカベコを2面立てただけでは、パワー2000マイナス、確かに上級シグニに対しては1点要求にすらならない。

ぶりっつ・ダイレクトというアシストを加えたことで、1面アタックが通ればリフダメ込みで2点になる、更にルリパンも通れば追加のリフレッシュもあり得る。

 

シロネコ選手の渾身の特攻に対し、ミッチー選手も動く。

 

 

何故か既視感が、しかも3度目の登場のような気がするが、今回は本物。

盤面とルリグアタックを止め、ダイレクトの20枚落としを完全にケアした。

 

しかしシロネコ選手としても、アーツとエナを消費させた。

次ターンに上手く盤面を形成できれば、一気にライフ差を詰められるかもしれない。

シロネコ選手はアカベコ2体でアタックし、そのまま自身の効果でトラッシュに送り2ドローしてターンを終了した。

果たして、次ターンに繋がる反撃の一手は引き込めたのだろうか?

 

返しのミッチー選手のターン、《エボルブ/メイデン イオナ》へグロウし、マユグロウへの足掛かりを整えた。

これで、先ほど消費したクトゥルアビスも再利用できるようになる。

3面空いた状態のため、特に労せず3面並べてアタック。

パルヴァでダイホウイカを回収しており、そういえば黒点キーを出していたなと思い出しつつ、古参勢としては懐かしい2枚が現役であることに、ある種の感慨を覚えていた。

 

アタックフェイズでは少しやり取りが。

 

シロネコ選手「草津結衣奈のテキスト何ですか?」

ミッチー選手「分からないですw」

シロネコ選手「エナ黒くないんですか?」

ミッチー選手「そうですね」

 

冗談とも本気とも取れないような、エキシビションらしい緩いやり取りが行われた。

宇宙一のセレクターが知らないテキストを僕が知る訳もなく、その場でも意図が理解できていなかったが、事後にミッチー選手から補足説明を頂いた。

 

 

このカバレージへの惜しみない協力に感銘を受けつつと、餃子を隠さず自己申告しようとする姿勢からは、「宇宙一の餃子」としての矜持が感じられた。

やり取りはほどほどに、アタックフェイズ自体はぶりっつのエクシード2回で2面ダウンさせ、1点のみ通して終了。

ルリグアタックは通って残り1点に、いよいよ終盤が見えてきた。

 

シロネコ選手 1点 VS ミッチー選手 4点

 

 

・Turn 5

 

終盤が近づき局面が複雑さを見せてきた?

エキシビションマッチでそんな事情は関係ありません。

煽れるものは煽る。

 

ねへ「あれれ~、4ターンで片づけるって言ってませんでしたかぁ???」

シロネコ選手「黙ってて!!!」

 

振り返るとここまで、ディガーの補助を得た3ターン目以外、3面埋めることすらままならない状況。

グズ子未経験の自分でも、過去に例を見ない事故であることは明白だった。

 

ミッチー選手「世界一の餃子なので、対面にも伝染させるんですよ」

 

なんと迷惑なデバフ能力。

これ以上シロネコ選手のメンタルが傷つかなければ良いのだが。

 

シロネコ選手「後2ターンで私は死にます」

 

だが足掻く。

リンゼの無言の圧力が解けたことで、1ターン遅れながらも、遊具シグニが本領発揮する好機が訪れた。

 

まずはシノビセットにペイン・バイ・ペインを当てて遊具を回収。

ここで揃えたハッカ1号+シャテキのセットを出し、2枚目のペイン・バイ・ペインでキングゲームを回収。

残るシャテキとハイロー・超体感・そしてチアガールのキングゲームの4面体制でアタックに入った。

 

ねへ「3面立たないと言いながら、一気に4面立ちましたねw」

シロネコ選手「うるさいしね!」

 

観戦者の野次を跳ね返し、ルリグ効果でハイローをコストに1面空け、ハイロー効果でアカベコが登場。

 

シロネコ選手「マジでヤバい、死んでくれ、マジで!!!」

ねへ「今の時代、誹謗中傷は良くないですよ」

シロネコ選手「生きてくれ!」「いや、死んだり生きなかったりしてくれ!」

 

観戦者の野次が止まらない。コイツどうにかならんのか。

そしてシロネコ選手は相変わらずの情緒不安定ぶりか?

いや、違う。

ようやく遊具ギミックが本領発揮したのだ、反撃開始の高揚感の発露だろう。

 

ミッチー選手はブリーフィング・フォースを使用し、キングゲームトラッシュ、超体感バウンスで2面防御。

そして、ここで最終兵器が姿を現す。

 

 

追加ターンの資格を得るも、アーツ回収で耐久するプランも捨てがたい。

いつ仕掛けるか、次がミッチー選手の岐路となりそうだ。

 

突然のマユ登場も、シロネコ選手にとっては当然の展開。

恐れる様子は無く、

 

「勝ちます!!!」

「回します!俺が6ターン目に回します!!!」

 

力強い宣言と共に、残った2体のアタックを通し、ミッチー選手のライフは残り2点に。

 

マユとして迎える、ミッチー選手のターン。

今回もパルヴァでイカを拾うという懐かしい動き。

そして次の一手は迷いが無かった。

エナの残量と遊具の複雑な攻め筋を考慮し、もう1ターンの耐久は無いと見たか。

 

ミッチー選手「エクシード5、起動で」

 

パルヴァ・リンゼ・ダイホウイカという盤面で追加ターンに突入。

シロネコ選手の盤面は、ダイホウイカの正面のシャテキのみ。

が、ここでトラブルが起きる。

 

ミッチー選手の手札「1枚」

 

本ゲーム最大の餃子が発生。

グズ子の起動で守るか以前の問題として、ダイホウイカは点数要求にすらなっていなかった。

ダイホウイカの1ドローでリフレッシュに入る状態だったのだ。

 

シロネコ選手「やはり?やはり???」

 

好転の兆しを捉えたか。

残りライフは1点。だが、追加ターンがあろうと守り切れば良いのだ。

 

フーリッシュ・マイアズマでパルヴァをバニッシュし、ハッカドール1号を蘇生、更に7000マイナス効果でリンゼがバニッシュされ、残るは点数要求にならないダイホウイカのみ。

 

シロネコ選手「お疲れ様でした」

 

勝利を確信したか?

その言葉を裏付けるかのように、ルリパン含め1点も通らず、追加ターンへ突入。

 

追加ターンはダイホウイカ・マカナ・ルオライトという盤面でアタックに入るも、メンダコとルリグ起動により、ダイホウイカとマカナが除去され、やはり1点も通らず。

 

シロネコ選手 1点 VS ミッチー選手 2点

 

 

Turn 6

 

1点すら割らせず返しを得たシロネコ選手に、最早敵は居なかった。

超体感・アタリナシ・ウズラグ・キングゲームという盤面でアタックに入ると、ミッチー選手は追加コストを払う余裕が無いまま、1面除去止まりのブリフォのみ。

 

シロネコ選手

「ぶちころ!」

「6ターンでぶち壊してやった!!!」

「うおぉぉぉ~~~~~~~~~~~~~~!!!!!」

 

理不尽な手札事故、そして土曜出勤という理不尽な社会への反抗を誇示した雄叫びをもって、エキシビションマッチは閉幕した。

 

ぶりっつ+ダイレクト+アカベコ2面という、強引に間に合わせたような特攻も、5Tマユ特攻を誘えば耐えられる、返しの無防備な対面なら詰め切れるという計算に基づく勝着となったようだ。

宇宙一のセレクターの名誉を守ったシロネコ選手。理不尽に抗うガッツを持って、今後も活躍を続けることに期待したい。