父と2人で草刈りの作業をした。


何年ぶりだろう。僕がこの仕事を始めた約15年前、倒れかかった会社を建て直すため、僕と父で連日、草刈りをやっていた。バブルの頃は背広を着て車で走り回っていた父。本業の造園仕事なんて社員と下請けの職人らに任せて、自分は新しいビジネスばかり追いかけて日本中を飛び回っていた。いつしか気がつけば景気は去り、社員も去り、職人たちも去っていた。


一人ぼっちになった父。僕と一緒にやり直すことにしたあの日。父は背広を脱いで作業着姿になって僕と草刈りを始めた。その姿を現場で見かけたかつての同業者は父に気が付かなかった。まさか父がそんな作業をしているなんて誰も思わなかったからだ。草を刈ったり、公園の溝の土をあげたりして、できる限りの作業を2人でやった。4年ほどかかって会社は持ち直した。


今、できの悪い僕のせいでまた会社に手が足りなくなった。半分隠居していた父とまた、少しの間2人で作業をしている。80歳になった父は、15年前よりも足元が頼りなくなって、息もあがりやすくなっている。それでも休み休み草を刈ったり道具をトラックに乗せたりしている。無理もしないが、愚痴も言わない。弱音も吐かない。自分にできることを黙々とやっている父。かっこいいよ。