状況は複雑だった。
その女性は、組長の元愛人。
だが、それは彼女だけの認識であって、周りは只の娼婦としてか見ていなかった。
その女性を調べたところ、生後8か月歳の子供と二人暮らし。
その子の父親はいない。と言う事と
その子が、『脊髄性筋萎縮症』と言う難病に侵され、今も入院している。
と言う事実だった。
そこで、俺はある仮説を立てた。
彼女は難病を抱えている子供を助けるために、父親の可能性がある組長へ
治療費の無心に来ているのでは無いか?
そう考えると、何と無く形は見えるが、しっくり来ない・・・
ならば、なぜ、堂々と出来ない?
探偵を使うほどの事か?
何か、出来ない理由があるのか?
俺の仕事は、彼女が何者か伝えれば、それで終わる。
それだけの事なんだが…
もう一人の俺が、余計な事を考える。
この素性を、依頼主である組幹部の人間に伝えたら、相手がどう出るか?
厄介に思われたら、ろくな事は無い。
幸い、下山君はその女性の存在は知っている物の、現況は伝えて無い。
それに彼女の事も、そこまで詳しく調べたわけでは無い。
さて、どうしたもんか…
よし…
彼女に話を聞いてみよう…