毎度のこと、暇である。


俺はいま昼飯を、『カツカレー』にするか『ロースカツ定食』にするか、真剣に悩んでいる。


それぐらい、暇である。


ここ最近(最近と言っても2,3ヶ月)全くと言っていいほど、仕事が無い。


平和なものである・・・


俺のところに依頼が来るなんて言う、トラブルも起きてないし


何かが画期的に進んでるわけでも無い。


ただ、同じ毎日が繰り返されている。


ただそれだけの事。


店の前で何を食べようか悩んでいる、俺を横目にサラリーマンが店に入っていく。


なんて事の無い日々・・・


その日もそんな感じだった。


結局、1食で1000円を超える昼食を諦め、都営新宿線の新宿駅から、京王新宿駅に沿って


輝いている、名前も知らない地下の商店街を後にし、歌舞伎町へダラダラ向かう。


その途中に西口の地下に出る。


西口に出た所で、変な光景を目にする・・・


どこの人達か分からないけど、見た目が『本業』の方々の集団だ。


2,30人いるだろうか?ここ最近では目にしない数のヤクザだった。


「うわ、怖っ」


そう心の中で思い、目に付かないよう距離を置いて通り過ぎようとした時・・・


その中の一人が、なんと俺に声を掛けて来た!


「あれ?お前、交渉屋だよな」


俺はぎょっとして、声を掛けて来た男に目をやる。


年齢は50過ぎといった所か・・・見た目が怖すぎるぐらい怖い。


なんで、ヤクザは怖いのに怖い格好をするのか、未だに理解が出来ない。


そして、その男には見覚えが無い・・・


「あのぉ・・・どこかで、お会いしましたか???」


俺の名前をピンポイントで呼んだ以上、シカト出来ず、俺は目一杯な声でそう返した。


「昔、極龍会の件でオヤジが世話になった時に挨拶だけな」


そんな、一度挨拶を交わした程度の付き合いで、呼び止めて欲しく無いもんだ・・・


「ああ・・・そうでしたか。どうも・・・」


俺は早くその場を去りたい一心で、超気の無い返事で返した(笑)


「なんだよ。連れないなぁ。お前、この後時間あるか?」


(ありますが、ありません)


「はい。特に用事は・・・」(えーーーーなんでそうなるの!??)


俺ではない、もう一人の俺が、誘いを断りきれずにいた・・・


「ちょっとお前を見込んで、頼みたい事があるんだよ」


嫌な予感しかしない・・・


今思えば、あそこでカツカレーでもロースカツでも食ってりゃ


こんな目には合わなかったのに・・・


運命とは残酷なものである・・・


「え!?何ですか!?仕事なら是非(笑)」


ほら、俺では無い、もう一人の俺が生活費を捻出する為に、超営業スマイルで・・・


仕事を・・・


請けようとしている(涙)