「ポール・デルヴォー 夢をめぐる旅」 | 根岸俊雄の住まいづくり入門

「ポール・デルヴォー 夢をめぐる旅」

 昨日の日曜日は、埼玉県立美術館に「ポール・デルヴォー 夢をめぐる旅」を家内と見に行きました。出かける直前に与野に住む大学時代の友人を誘ったところ、既に見たがもういっぺん見てもよいということで付き合ってくれました。

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 デルヴォーの絵はたいへんよかった。


 例えば、写真の「夜の使者」。ちぐはぐな物がちぐはぐに集まっています。手前の人物(女5、男1)、ランプ、通り、並木、街、神殿、・・・。透視図的にはかならずしも正確ではありません。人物の視線が絡み合っていません。しかし全体でなんとも不思議な雰囲気がつくりだされています。うっすらと寒く寂しいあやかしの世界。画面内にはいくつもの異空間が存在し、今にもそこかしこで物語が始まりそうです。


 ところで、建築はいろんな物が構成されてつくられますが、その時物があまりにも均一化されてなめらかに関係付けられてしまいますと、せっかくの個々の物の個性が薄らいでしまう場合があります。全体が浅味で底味のないものになってしまう危険があるのです。


 しかし、デルヴォーの絵においては、物が自立して「ブツブツ」と存在します。言わば「だま」状態なのです。「だま」とは、小麦粉などを練っていて粉がまだ均一に混ざり合わないで、ところどころにぶつぶつと玉状で残っている状態をいいます。


 この「だま」状態がデルヴォーの絵の魅力の一つだと思います。こういう建築のつくり方も、あると思います。チャレンジしたいと思っています。