特別寄稿

秋田は・・・  ㊦

  び  しん     ほう  ど
美心の宝土に希望の花
 
         創価学会名誉会長 
池田大作
 秋田は歌のふるさとです。懐かしい「浜辺の歌」や
「かなりや」など、多くの名曲を残した成田為三先生も、
北秋田市の出身でした。
 私も若き日、お邪魔した秋田の友のお宅で、美しく
                  じわ
年輪を重ねた笑顔皺のお母様を囲み、一緒に何曲も
楽しく童謡を歌ったことを思い出します。歌には、心を
結び、喜びを分かち合う力があります。
 私は、秋田がアピールする「あんべいいな」という
言葉の響きが大好きです。
「あんべいいな」、つまり「案配がいい」とは、「もっともっと」
という際限のない欲望を戒める賢き心です。「ほどよい」
バランスを取り、共々に「満足しよう」とする美しい心でも
ありましょう。
 それは、人類的な課題である「持続可能な未来」を創り
開く上でも、大切なキーワードではないでしょうか。
                ◇
 「食は命」です。食料自給率が全国トップクラスの秋田は、
                                   ほうど
食を支え、命を守ってくださる日本の宝土です。
 この農業王国・秋田で、明治から大正にかけ、農民の
連帯を築いて社会を再生させ、「農聖」と呼ばれたのが、
石川理紀之助翁です。冷害による借金に苦しむ村々に
飛び込み、率先垂範で立て直して、負債も完済されました。
 出来上がった農作物の種子を交換する「種苗交換会」も
創設しています。農業の成果を分かち合う、この画期的な
取り組みは、戦時下でも続けられ、今秋、実に135回目を
数えると伺いました。
 私が対談した、インドの持続可能な「緑の革命」の父・
スワミナサン博士は「農民の幸せな笑顔が、その国の
幸福を決める」と言われました。
 私の創立した創価大学に学んでくれた卒業生たちも、
大潟村などで朗らかにたくましく、潮風害や豪雪などの
試練と闘い、農業の振興と郷土の発展に尽力しています。
 「労苦と使命の中にのみ人生の価値(たから)は生まれる」
との大学の指針そのままに奮闘してくれていることが、
創立者として何よりの誇りです。
                ◇
 伝統ある文化行事が行われる秋田は、民衆が喜び舞う
大地です。秋田市の竿燈まつり、羽後町の西馬音内盆踊り、
鹿角市の花輪ばやし、大仙市の花火大会、男鹿市の
なまはげ等、日本中、世界中から大勢の観光客を迎えます。
 近年、秋田港から対岸国と欧州までを結ぶ、遠大な
「環日本海シーアンドレール構想」も提唱されています。
 秋田魁新報の気鋭の連載「秋田げんきプロジェクト」では、
誇り高く「ここに生きる」とのテーマが掲げられていました。
誠心誠意、ベストを尽くして「ここに生きる」秋田の元気が、
東北の元気となり、明日の元気と広がることを、皆が願って
います。
                ◇
 仏典には「心こそ大切なれ」「心が清ければ国土も清し」
と明かされています。
 仙北市の桜の名所は、昭和初期に、不況と凶作に苦しむ
中、振興策として行われた桧木内川の築堤事業が淵源です。
堤の完成後、人々は美しい感謝の心で、一本一本、桜を
植樹していったのです。
 長年の地元の方々の丹精によって、今や延べ2㌔にも
及ぶ「桜のトンネル」となり、絶景と讃えられています。
 故郷・秋田を愛し、描いた勝平得之画伯は語りました。
 「我々の郷土は美しく、我々の自然は楽しい」
 「我々の仕事が輝かしいばかりの花を開く時の来るのを
信じている」と。
                   びしん
 我が秋田の友の「美心」は、いやまして美しく豊かな
宝土を光らせ、希望の花を、幸福の花を、そして勝利の花を、
       ばんだ
未来へ万朶と咲き広げゆくことでしょう。

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秋田魁新報 2012年4月25日付に掲載されたものを、
原文のまま転載しました。
誤解などを防ぐために、ルビも全て同じにしました。
デザインなども、極力同様なものを作りました。

※ 下の写真が、実際の秋田魁新報の紙面です。
       特別寄稿 12.04.25