あれ程に、憧れていた東京に上京してきたのは四月。
夢だとか、希望だとか、そんなチープな何かを胸に抱えて、僕は小さなデザイン会社に入社した。
どんな環境であろうとも、とにかく前に進もうと、とにかく何かをつかもうと、がむしゃらに仕事をこなした。
毎日終電近くまで働き、徹夜する日も少なくなかった。
憧れていた生活とは違った、ただプログラムに沿った毎日。
企画などを扱う会社ではなく、ただどこかの企業のカタログやらパンフレットをつくっていた。
何ヶ月かが過ぎ、仕事にも慣れてきたころ、精神も身体も限界を迎えていた。
ちょうど徹夜三日目を迎えた朝、シャワーだけでも浴びようと一時帰宅したとき、駅のホームで倒れた。
過労と寝不足、栄養失調が原因だった。
駅構内の医務室のベッドで目を覚ましたとき、あれ程まで掴みたくて仕方なかった何かがどこか遠くに霞んでしまったのを感じた。
あれ程にまで僕を駆り立てていた心の中の何かがスッポリと消え去ってしまった事に気づいてしまった。
それからほとんど一ヶ月後。
僕は仕事を辞めた。
それから二ヶ月。
やっとまた東京に帰ってきた。
心から消えてしまった何かも、体力の回復とともに蘇ってきた。
地元に帰っていた間、多くの人が背中を押してくれた。
昔からの友達、同じ夢を持つ仲間、両親。
あぁ、自分一人ではほんとうに無力だ、と思いながらも一人ではないという事に励まされる。
東京は本当に冷たくて怖い街だけど。
それでも中に優しい人や温かい人もいて、それぞれが体温を奪いながら与えながら貰いながら生きている。
自分の中に少しでも温かい、熱い何かがある限り、明日もまた頑張れるのだと思う。