年長になった壮良にとっての一大イベント
「お泊り保育」の日がやってきた。
思い起こせば私も自分が幼稚園のころの
お泊り保育の記憶は残っている。
やたら大勢でおフロに入れられてベルトコンベアー式に
身体を拭かれて・・・あとみんなで雑魚寝が楽しかったとか。
初めてキャンプファイヤーなるものをしたとか。
ついに壮良もお泊り保育の日がやってきたのだ。
前々からだいぶ楽しみにしていて、
「そら、泣くんじゃないのぉ~?ママ~ぁって!」
と言っても
「え、だいじょうぶだよぅ~、ぼくぜんぜんさみしくないよ。」
とうそぶいている。
が、徐々に近づいてくると若干弱気も入ってくる。前夜のこと、
「壮良、じゃあ、壮良の組でさみしいよ~って誰が泣くと思う??」
「・・・え?ぼく以外で?」
「え?壮良もう泣く予定なの?」
「・・・」小さくうなずく壮良。おいおい、大丈夫か~?
しばらく考えて「泣かないよ!だって楽しみだもん!」
ついでに聞いてみた。
「壮良さ、壮良の組で誰が一番泣き虫なの??」
「・・・え?ぼく以外で?」
「ちょっと待って、壮良が一番泣き虫なの?」
「・・・ん??・・・うん」
半笑いでうなずく壮良。まだこういうところはつい正直なのだった。
自覚してるなら泣くなよ~~。
「いい?壮良は、泣いている女の子がいたら、ギュってしてあげて
”ぼくがいるから大丈夫だよ。”って言ってなぐさめてあげるのよ、
男のあんたが泣いてる場合じゃないのよ。」
「ええ~~??ぎゅってするのぉ~~??」
クネクネと照れる壮良。ほんとにやってたらウケるんだけどな~。
その晩、壮良はそよに
「そよ~、にいに明日からいないから会えないんだよ~。
そよさみしいでしょ~。にいにいないんだよ、わかる?」
としつこくしつこく言っていた(当然そよはノーリアクション)。
今朝はお弁当を作って8時半にうちを出て、壮良を幼稚園へ。
妙にハイテンションで、明るいんだけど、
幼稚園の人ごみでちょっと私の姿が見えないとすぐに顔が曇って
不安げな壮良。私と目が合うと、急ににっこりして無理やり
自分の不安を打ち消しているかのようだ。
こちらを見返りもせず園庭まっしぐらに駆けて行く普段とは
やっぱりちょっと何かが違う。
出発に備えて整列させられると、徐々にブルーになっていく。
や、やばい、ここでメソメソされるとややこしい・・・!
「そら、ママがあまご獲りのコツを教えてあげる!」
(お泊り保育の中でアマゴ獲り体験があるのだ)
「え?なに??」
「いい?お魚は前にお目目があるから、つかまえるときは
手を、しっぽの方からそう~っと近づけるの。
前から手を伸ばしたらお魚はすぐ逃げちゃうからね。
しっぽからそう~っと、そしてがしっ!って捕まえるんだよ!
わかった??」
「えっ!しっぽからだね!ああ~~~!わくわくする!
ぼく、お魚を捕まえたらイェ~イってやる!捕まえられなかったら
オッオ~ゥっていう。」
はっきりいってアマゴなんて獲ったことがないから
そんなコツがあるかは不明。口からでまかせだが、壮良は
楽しいイメージがふくらんでテンションは再びあがったようだ。
ホッ!世話の焼ける・・・
幼稚園はというと、ものすごい人だかりだった。
日曜ということもあり、一家総出でお見送りに来ている家庭も多い。
小さい赤ちゃんが汗だくになってぐったりしているまま負ぶって
大型バスに乗り込んだわが子を携帯カメラで撮ったり手を振ったり。
炎天下で、バスの周りの人だかりはすさまじいものがあった。
その様子を見かけた人は何かものすごい有名人でも
来ているのかと思ったことだろう。
たかだか子供を送り出すのにこの「儀式」は一体・・・。と思うほどだ。
壮良はというと窓ガラスにへばりつかんばかりにこちらを見つめて
バスが発進した瞬間は、一瞬顔が半泣きになったので
私がつとめて笑顔で手を振ったら、気を取り直して笑顔で出発した。
「うちの子こっちを見ぃもせんわ!」
と言うお母さんもいる中、壮良の甘えたぶりは相変わらずである。
子供達の乗るバスが出たあと、黒山の人だかりは三々五々
散っていったわけだが、父兄たちはなんとなくみんな笑顔、
みんなうきうきした雰囲気だった。
子供が初めて手を離れてお泊り(うちのように早くから保育園で
”手を離れて”るのとはワケが違うのだ)大丈夫かしら?というのと、
ちょっと子供がいなくて身軽さを楽しむ感じ、そんな共通の思いが
満ち溢れていたのだった。
さて、帰宅したころ、起きてきたそよ。
「そよ、誰かいないねえ?誰がいない?」と聞くと
私と、夫を見て、しばらく考えて
「にいに~。」
と言ったものの、だからどうということもなく、平気の平左だ。
しばらくして、今日はパパとママを独り占めだということに
気付いたそよのご機嫌のいいことといったらない。
軽くおでかけしてみたが、グズリもせず
すんなりチャイルドシートに座るなんて近年まれに見る光景だ。
こちらとしても、たとえ2歳でも女の子一人だけ連れての
おでかけは劇的にラクチンだ!
子供2人だと、食事もどこにするか考えるだけでうんざりするが
今日は一人だったので夙川のイタリアンに行ってみた。
と、そこでもそよのおりこうぶりはびっくりもので、
むしろお嬢様気どりでご満悦だ。
そのあとお買い物に行ったりしたけど、子供一人だけって
なんてラクチンなんだろう!なんて余裕なんだろう!と
驚いてしまった。声を荒げて「ホラッ早くしなさい~!!」とか
発することが一度もないなんて・・・!
壮良なんてむしろそよに比べれば聞き分けもよい年齢だけど、
(おそらく壮良が一人だったら、もっと楽かも)
やはり、やれどこで遊びたい、やれ喉が渇いた、やれおやつ・・・
とうるさい上に、退屈しのぎにそよにいらぬちょっかいを出すので
結果的にそよが泣く。
それに引きかえ、大人二人の目が一人の子に注がれるので
子供も満足、大人も余裕でカリカリしない、ゆとりのおでかけだ。
抱っこできます、お手手つなぎます、眠い?お腹すいた?遊ぶ??
もし、そよが一人っ子だったら、
蝶よ花よと危うく女王様にしちゃってたかも。
お兄ちゃん大好きっ子(なはず)のそよは今日一日今のところ、
一言も「にいに」と発せずに、一人っ子を大満喫中なのだった。
壮良は今頃どうしているかな~~。後日談が楽しみだ。
本人の、
”若干自分をヒーロー化した”報告だけだと全貌が見えないので
できれば客観的な情報が欲しいものである。