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2013/07/27(土)   天候:曇り一時雨

コース:蝶ヶ岳ヒュッテ-横尾分岐-蝶槍-横尾分岐-蝶ヶ岳ヒュッテ-蝶ヶ岳-まめうち平-三股-鳥川林道ゲート前
5:50出発、11:50帰着 6時間00分

 18:30に床につき、そして4:00の起床ですから、浅い眠りとはいえ十分な休息を得ることができました。小屋泊まりで朝の日課になっている天候確認のため、まだ日の明けぬ屋外へ出ると、薄い雲に覆われた夜空に星々は望めませんが、月はきれいに輝いています。今日の天気にとりあえずの安心を得て、小屋に戻りのんびりと身支度を始めます。5:30からの朝食は先着順とのこと、余裕を持ち過ぎてうっかり初回の朝食グループに入り損ねると、今日の予定に多大な影響を及ぼします。5:00少し前に曇り空の中に浮かび上がった七割程の完成度と思えるご来光を拝み、そして食堂での順番待ちの列に加わります。
 無事に初回のグループに納まった朝食はまずまずの美味しさで、一日の英気を培えます。今日の長丁場を考え少しでも早く行動を起こしたく、朝食を済ませると同時に小屋を後にして常念岳を目指します。薄っすらと霧に包まれてはいますが、前方には目指す常念岳、左手には穂高連峰が望める、眺めに恵まれた稜線をゆっくりと進んで行きます。そして細かな凹凸の続く緩やかな稜線を一時間程辿り、横尾への分岐を過ぎ蝶槍に差し掛かった時にパラパラと小雨の様相です。その小雨を軽く考え注意を払わずに尚も歩を進めましたが、それは完全な判断ミスとなりました。どんどんと霧が深くなり辺りの景色は全く見えなくなっていましたし、雨脚も激しさを増していきます。レインコートの上着だけを羽織りザックカバーを装着しましたが、それは既に手遅れで、しっかりと態勢を整えないと前に進めそうにありません。そしてそこに立ち止まり、冷静に今日のこれからを考え抜く時間です。
 常念岳から前常念岳を抜けて三股に続くルートは岩稜から始まり、好天時でも五時間程を要する険しい道のりです。雷鳴も轟き始めた降雨のなか、元来の臆病者としてはその険しい下山路を進むことに躊躇を覚えます。そもそも悪天候の時にピークハントも何もあったものではありません。「安全第一」「また来れば良いさ」と強引に常念岳への未練を断ち切り、蝶ヶ岳ヒュッテまで引き返し、前日に登ってきた道を引き返す結論です。そして踵を返し急ぎ蝶ヶ岳ヒュッテへ歩を進めます。
 自己判断とはいえ釈然としない失意の行程でしたが、ハイマツの間から雷鳥が三羽、私の目前に現われ、久しぶりの“雷ちゃん”とのご対面に気持ちが弾みます。その三羽は親子連れには見えませんし、そうかと言って夫婦でもないでしょう、「きっと三角関係だな」とくだらない想像を楽しみ、常念岳の代わりに与えられたご褒美に感謝です。そして蝶ヶ岳ヒュッテへ戻りつき、態勢を整えて下山の行程へと出発です。
 小屋を出ると雨はあがり幾分霧がうすくなった様子なので、蝶ヶ岳に改めて登頂し見える限りの眺望を楽しみ三股への下山路に身を置きます。そして濡れた足元に注意をしながらゆっくりと進んでいきます。気が付けば雨は完全に上がり、レインコートなど着てはいられぬ程の夏の暑さです。そして稜線上での悪天候が嘘のように感じる程に回復した青空の下、無事に駐車場へ帰り着くこととなりました。
 はっきりと窺い知れる蝶ヶ岳から常念岳への稜線を、駐車場から見上げてしまうと、今日の撤退に後悔がないと云えば嘘になります。しかしこうして無事に下山することが出来た事実がある以上、無駄に“もし”を考える必要はないでしょう。また次回に目指せば良いのです。ただ叶わぬ現実ですが、“日本列島全域が高気圧に覆われたような日”だけを選び山に出向きたいものです。それだけ天候判断とは難しいものなのでしょうが、良いも悪いもそれが自然を相手にした道楽なのですから仕方のないことです。