{E268B61A-F036-4F52-A4D1-F787B0863479}


「万引き家族」を観ました。



東京の下町。高層マンションの谷間に取り残されたように建つ古い平屋に、家主である初枝の年金を目当てに、治と信代の夫婦、息子の祥太、信代の妹の亜紀が暮らしていた。
彼らは初枝の年金では足りない生活費を万引きで稼ぐという、社会の底辺にいるような一家だったが、いつも笑いが絶えない日々を送っている。
そんなある冬の日、近所の団地の廊下で震えていた幼い女の子を見かねた治が家に連れ帰り、信代が娘として育てることに。
そして、ある事件をきっかけに仲の良かった家族はバラバラになっていき、それぞれが抱える秘密や願いが明らかになっていく。
(映画.comより引用)




「そして父になる」「海街diary」「三度目の殺人」の是枝監督、またやってくれました。
今年の日本アカデミー賞取るでしょうね。もう観ている段階でそれを断言出来るクオリティでした。
リリーフランキーさん、安藤サクラさん、樹木希林さん、子役さんの没入した演技には脱帽です。
オールスターキャストの素晴らしい演技にも負けない脚本や映像作り。
良い映画を作ろうとして、ちゃんと良い映画になっている。素晴らしいですね。文句なしです。



正しさって分かるようで分からない。
この監督の映画には明確な答えは示されず、観客側に考えさせる映画を作っています。
私たちが普段日常を生きていたら目の当たりにする事はないであろう虐待や貧困といった社会問題を、かなりリアルに見つめる事が出来ます。どこで起こっているか分からない、もしかしたら近くで起こっているかもしれない、けれど分からない、気付かない。



縁という概念が希薄化する昨今、何が家族で、何が絆なのか。彼らは生活は底辺でも、誰も怒ることがありません。
感情的な台詞があるわけではないのに、家族それぞれの心情や対比、温度差が手に取るように分かるのです。一人一人が繋がりをどう考え、どう結論を出したのか、寂しくも優しく感じました。




作中印象に残ったやり取りは
「子供には母親が必要なの」
「母親がそう思いたいだけじゃないの?」
でした。



見所はもう全てなのですが、評価出来る事は、この家族を決して肯定的に描いているわけではないという点です。それでも監督は、弱者に焦点を当てる事、血縁主義の否定にこだわって作品を作り続けていますね。

とにかく今を生きる人たちに観てほしい、そんな映画です。