人は成長し、変わっていく・・・

Kがどりぃむスイッチで勉強をしていました。
やりたくないことは頑としてやらなかったKが、
教わりながら自ら宿題をしていました。

どりぃむスイッチを開いた頃から、
どれ程こんな姿を思い描いたかしれません。

自ら宿題をする姿は、
通信制の高校に入ってから少しずつ見られるようになっていました。
試験勉強も少しするようになりました。
ゆっくりと、Kは変化してきました。

そして『解らないところを教わる』という変化も見られるようになりました。
人によっては当たり前のことでしょうが、
Kとっては当たり前じゃなかったこと・・・
やりたくないことだけど、やるべきことだからやる。

今迄も勉強を教えてくれる人はいました。
時々、持ってきてやればいいのにと声かけしたような気もします。
けれど自ら考え、自らそうしようと思わないと、そうならない。

傍らで勉強を教えてくれる人は、
Kのことを”同類”と表現されていました。
その人は、Kに大きな影響を与えてくれていると思います。
「賢い子だと思います。」
そんな風にも言って下さいます。

その人だけではありません。
どりぃむスイッチに関わるいろいろな方の影響があると思います。

最近はなんとPHPの勉強までしています。
Kがプログラミングの勉強をするなんて・・・
これも又ビックリな出来事です。
私が何度言ってもパソコンで何か学ぼうとはしなかった彼が、
ある人が勉強を始めるというタイミングで誘っていただきその気になったのです。

どりぃむスイッチに来られている方は
皆さん受けとめることや認めること、褒めることが上手です。
褒めると言っても、
ちゃんと認めてもらって褒められることが大事で、
褒めようと思って褒めても響かなかったりします。
分ってもらった上で褒められると自信になるのだと思います。

すぐ飽きちゃうかなと思っていましたが、
プログラミングの勉強は案外続いています。

教えてくれているのは、宿題を教えてくれていた人です。
Kは考えることは結構好きです。
そんなKのやる気を引き出すのが
とても上手なのだと思います。

Kは未だに「俺は楽しいことしかやる気にならない」と公言しますし、
「あ~明日台風で学校休みにならないかなぁ~」と言います。
けれど、今は自分で次の日の予定を考えて、
寝る時間も決めるし宿題をいつするかも決めます。

私が、それについてやかましく言うことはありません。

どりぃむスイッチの皆も私も、
Kが駄目駄目な感じの発言を半ば冗談交じりに言っても笑って受けとめます。
人によっては突っ込んだりします。
自分の感覚もジョークにし、ネタにするくらいになると、
かなりちゃんと受けとめられるようになっているのかなと思います。

ずっとKと仲良くしてくれている人と、こんな会話をしていたりします。

「明日学校だからな~、でも遊びたいしな~、
 今日は俺寝ませんよ。うん、遊び倒してそのまま学校行きます。」
「え、無理やろ。」
「いや、俺はやるっつったらやりますよ。
 遊ぶし、やることもやるように変わったんっす。」

そう言っていても、
私がもうひとつの仕事(母の店の手伝い)を終えて夜中に帰ると
ちゃんと寝ていたりします。

出来にくいことを出来にくいと口にし、
やると言っては何度も失敗し、
自分で実感して自分で考え、
自ら変わろうと思って変わっていく。

変化には、Kがその時に何を求めているかも関係しますが、
変わり始める時に
人との出会いや体験は大きな影響を与えてくれます。

導いてくれるメンターに出会ったり、
変わっていく人を見て憧れのような感覚を持ったり、
自分にも出来るんじゃないかと思ったり、
共感から自信を得たり・・・

また、自分に似た第三者との出会いも影響を与えたりします。

最近は訪問支援にKと出向くことがあります。
中学生や高校生の相談が増えているので
近い立場でのピア・サポートのために一緒に行くのですが、
あまり話さないご本人の代弁者の役割もあります。

Kは本質を捉えるのが上手なので、
彼の助言は実に役立っています。

それと同時に、Kの中にも変化が起きていきます。
あるお家を訪問して帰る際、Kが大きなため息をつきました。

「どうしたん?」
と聞くと、
「あれ、俺やってたわ。」
と言います。
「あれって?」
「自分が椅子に座って、相手を地べたに座らせておくの。
 全く悪気なかったけど、どんなに相手に対して失礼か、
 それが良く分ったわ。あれはいけんかった。」

どのシチュエーションのことを思い出しているのか、
はっきりとは分りませんでしたが
多分中学生の頃のことだろうと思います。

こちらは座る場所がなくて下に座っただけですし、
本人が来て欲しいと望んだ訪問でもなかったので、
相手の子が一緒に下に座るなんてことにもならないわけです。
(むしろ部屋に入れてくれただけでも驚きですが)
Kとしては結構ショックだったようです。

「今だったら、俺、自分も地べたに座るわ。」

訪問する身になってはじめて、
訪問してくれた人の気持ちが分かる。

客観的に見る機会があるのって凄く大事なんですよね。

一人で家に居続けると、
そういう機会が非常に少なくなってしまうのが難点だと感じます。
何でも良いから、外に出て、いろいろな体験をすること。
人に出会うこと。
それが凄く大切だと思います。

まだ家から出られない時は、家でできることもあります。
家事などを手伝ってもらうこともその一つ。
お小遣いを欲しいなどの条件がついてもOKだと思います。
やってみる体験が大事ですし、
役目があることで家族として属すことが出来ます。
感謝されることで承認欲求も満たされます。

変化はゆっくりと、でも確実に起きています。
じっとしている時でも、
全てを諦めて閉ざしきっていない限り。

まずはやってみたいことを、とにかく試してみる。

成功体験も必要ですし、失敗体験も必要です。
どの体験からも学べるような
試行錯誤できる捉え方、感じ方が出来ることが大切だと思います。

私は、Kが決めるまで待てるようになりました。
失敗も見守ることができるようになりました。

一緒に活動する過程で、
Kが私を認めてくれるようになったとも感じます。
お互いに良いところも悪いところも認め合い、
適度な距離感で付き合えるようになったと思います。

人との出会いや体験、また私自身の変化が、
Kの成長と相まって変化をもたらしている。
そんなふうに感じています。