私の家は昔商売をしていました。
両親とも遅くまで仕事をしていることが多かったので
揃って晩ご飯を食べるのは大体夜8時を過ぎていました。

皆が食卓につくと、
父はお酒を飲みながら
今日あった事などを話してくれて、
私たちはそれを聞きながら食事をしました。
私たちも学校であったことなどを話し、
毎日宴会のようにワイワイ賑やかだったのを覚えています。
食卓を囲むのは平均2時間くらいだったでしょうか?

その時、多分私はいろんな言葉を父から聞きました。

「鶏口となるも牛後となるなかれ」
大きなものに従うよりも、たとえ小さくてもかしらになったほうがよいことのたとえですが、
ただ言われるままに仕事をするよりも、
組織を引っ張っていくような存在でいたいと思っている
父の考え方がよく表れていると思います。

社会でどう振る舞うべきか、
父も母も自分の意見を強く持っている人なので
自分はこうやってきた!だからこう思う!というのを
自慢話を含めて良く聞かされてきました。

今思うとそれらは私の人生に大きく影響を及ぼしています。

キャリア形成に関する考え方も
両親から聞かされる話を元にして築かれていった気がします。

こんなことがありました。

私の両親はPTA活動や地域活動を積極的にやってきました。
人脈が広がる、経験できないことを経験できる、
学校のことも良く分かる。
両親はPTA活動をそのように捉えていたと思います。

私が子どもを持ち小学校に入学したとき
私は専業主婦になっていました。
折角だからPTA活動に参加してみようと思い
新聞作りに興味があったので広報部会に入りました。

最初の一年目、会合には毎回とにかく参加しました。
出来ることは少なかったのですが、
得意なパソコンを活かして出来そうな事は積極的に引受けました。

次の年、長年やってこられた部長が辞めることになりました。
そして突然本部の役員さんにその部長を
引き継いで下さいと頼まれました。
どこを見込まれたのか分かりませんが、
両親がPTA会長等をやってきたのを見ていたので
私はそれを引受けました。

この学校ではPTA新聞は
自分たちでWordを使って学校のコピー機で印刷していました。
けれどこの時私が得意なパソコンというのはMacで、
Windowsはほとんど使ったことがありませんでした。
勿論WordもExcelもAccessも使ったことがありません。
昔、私はSEをしていたのですが当時はオフコンでした。
PCはDOSの時代だったのです・・・

部長を引受けたことで
私はこれらと突然格闘することになりました。
分厚いバイブル的な本を買ってきて、
毎日寝る間も惜しんで勉強し
なんとか最初の4月号を発行したのを覚えています。

文章の書き方にしても、この広報誌を作るという作業を通して
学ばせて頂きました。
人に伝える文章を書くというのは思った以上に大変でした。

また、人を纏めるというのも苦労の連続でした。
PTAは好きでやっている人ばかりではありません。
そしていろいろな考え方を持った方がおられます。
けれど悩みながら躓きながら
沢山の方の助けを頂いて何とか3年間部長を務めました。
その間、PTA新聞作りで県の最優秀賞を頂いたりしました。

その後、福祉施設の経理事務に就いた時、
苦労して学んだことはとても役に立ちました。
WordもExcelも既にかなり使いこなしていましたし、
Accessも役に立ちました。
また新聞作りの経験を買われて
施設だよりの発行も任されるようになりました。

昔SEをしていた事もあり、PCに強い経理事務として立ち位置が確立し、
その内に、施設便り、対外的な文章作り、
そして人の話を聞くスキルを買われて利用者さんの苦情受付係りなど、
いろいろ頼まれることが増えていきました。

また次の職場でもそうです。
社内報づくりや議事録作りを任されて、
結構重宝して頂いたような気がします。

父の教えの中でこのようなものがあります。
”あなたがいないとダメだ”と言われる人になれ!

どの職場に行っても、言われた仕事を日々こなすだけでなく、
積極的に関わって自分の存在感を発揮し
いずれ君がいないとダメだと言われる人になりなさい。
そうすれば人員削減の対象になるようなことはないし、
やったことは必ず次に繋がるから・・・ということでした。

そのような考え方から、仕事に役立つと思われる資格は
会社に取れと言われなくても取りなさいとも教えられました。
仮に人員削減の対象になっても、
その後の転職で自分のキャリアを証明する武器になるということです。

さっきの広報作りなどは些細な例かもしれませんが、
そうやって自分に出来ることを増やすと、
”あの人がいないと困るね”と言われるような
自分の立ち位置を作ることに繋がっていくというのを
私は感じる事が出来ました。

何か頼まれたり、やる機会が与えられたとき、
それをどう捉えるかは人それぞれだと思います。
面倒なことを頼まれた・・・なるべく楽にすまそう。
そう思う人もいるかもしれません。

けれど私は父が教えてくれたように、
それを良い機会だと捉えて自分の力にしていくという考え方が好きだし、
それで大いに人生を救われてきたと感じています。

転職の際、私は広報で賞を取ったことを特技の欄に書きました。
私にとっては広報誌作りは大切なキャリアの一つだったからです。

やることそのものよりも、
それにどのように自律的に関わるかによって
得られるものは違ってくるのかもしれません。

そして、未経験のことをどう捉えるか?
「やったことが無いから無理です」と言ってしまえば、
折角の経験をする機会を失ってしまうような気がします。
「やったことは無いのですが、やってみたいと思います」
そういうとそれはキャリアへと繋がっていくようなそんな気がします。