「実は身近にも引きこもっている人がいるんです。」
私が名刺を渡して何をやっているか説明すると、
そんな風に打ち明けられることが良くあります。

聞いてみると、勉強が良くできたり、
仕事をバリバリしていたり、
大学で専門の勉強をしていたり・・・
それまで特に問題が無かったという人が多いのです。

ご本人とお会いできた時は、
私はその方を良く知ろうと努力しています。
何がひっかかっているのか?
それが分からないと、
本当の解決には至らないからです。

現在どりぃむスイッチに通って来られる方には、
作業を一緒にやってもらっています。
パソコンのスキルアップにつながるのだろうか?
と思うような単純な作業もありますが、
実はその中でいろいろ気づくことがあります。

例えば名刺データ入力作業です。

最初は単純で簡単だと思われた作業ですが、
仕事をする上で必要な様々なスキルが要求されることに気づきました。

◆判断力

名刺のデータを入力なんて簡単なようですが、
意外に書式や記載されている内容がバラバラで
どこまでデータ入力するか判断するのが難しいものが多いのです。

最近の名刺は本当にバラエティに富んでいます。

これでは名刺リーダーにも限界があるはずです。
先方もOCRで対処しようとされたのですが、
あきらめたと言われていた理由が良く分かりました。

ある程度項目名に分けて、当てはめて入力するのですが、
大手の会社の部署名や役職名が長かったり複雑だったり・・・
記載の仕方もいろいろなので、
どこまでが部署名でどこから役職名なのか判別しにくかったり。

また本社や部署の住所が記載されているのですが、
名刺のご本人へ案内をお届けするには
どの住所へ送ればよいのか分かりづらい名刺など、
何の予備知識も無い人が受け取った場合
あとで分かりづらい名刺がありました。

PRしたいことが沢山あるのはわかるのですが、
名刺というものはやはり相手に分かりやすいという視点を
忘れてはいけないな・・・と思いました。

そして、入力作業の中で意外にこの判別・判断に時間をとられてしまったことから、
なるほど、こういうことで時間がかかると、
社会へ出た時にひっかかってくるのだな・・・と痛感しました。
こんな時、的確に判断しある程度割り切り、
テキパキと進めることが社会に出ると求められてくるのです。

◆コミュニケーション力

些細なことで悩んでいたり、一人で考えていると時間ばかり過ぎてしまいます。
困ったことや判断に迷うことは
上司や先輩・同僚に聞くのが一番です。
誰にどのタイミングで声をかけるか・・・
そんなコミュニケーション力が職場では重要だったりします。
一人では仕事はできませんから。

◆要領の良さ

作業を指示する方が、曖昧な言い方をすることもあります。

それでも、指示内容から適切な判断をしたり、
分からないことは質問したり・・・
その際も要領の良さが求められます。

分かる分だけを先に入力して
後でまとめて質問するとか、
同じ会社の名刺を先に仕分けしておくとか。

その辺はみんなで話し合って対処しましたが、
仕事では効率よい作業手順を考えるスキルも必要になります。
優先順位も重要。
仕事では大事なことや急ぎのことを瞬時に判断し、
行動していく必要があります。
それも効率よく・・・

◆スピード

判断力と要領の良さを駆使しつつ
トータルの作業スピードを上げるには、
細かく言うと”手さばき”や”視点の動き”のスピードも必要になります。
キーをタッチする速さ、
入力する名刺をめくる手さばき、
必要な入力項目を見つけて正確に読み取る目の動き。

たかが名刺データ入力、
されど名刺データ入力。

実際に作業しながら、皆で要領よく行うにはどうしたら良いか、
話し合い教えあいながら作業を進めて、
だんだんとスピードがアップしていきました。


簡単な作業を通して、
実際の仕事をするうえで必要な
様々スキルを体感し自分の強みを弱みを発見する。

活動を通して、
自分たちで話し合って課題に気づき、
自分で解決策を考えて、
協力しあって作業を進める過程で、
自分の強みに気づき自信を取戻したり、
弱点を少しでも克服したいと自分で思う。
それが”どりぃむスイッチ”の良いところだと思います。

いかに中間就労というものが重要であるか、
実感させて頂きました。