Kは第一希望だった私立の普通科へ合格しました。

中学3年生の1年間はほとんど足を運ぶことが無かった
中学校の卒業式へは普通に参加し、
私はちょっと複雑な気分でした。

私立だけに入学準備にはかなりお金がかかりましたが、
Kはやりたいことならすると私は思っていたので、
これでKが高校へ通うのならと準備しました。

高校には専用バスで通うことになりました。
少し遠方のため、朝が早いのが気がかりでした。
なにせKは昼夜逆転のような生活を続けていたので
朝起きて支度出来るか凄く心配でした。

入学前にKには何でも確認しました。
朝が早いんだよ?大丈夫なの?
Kは「大丈夫、ちゃんと行くよ」と答えました。

入学式は一緒に出席しました。
その高校は仏教色の濃い学校でした。
(それは入学するまで良く知りませんでした。)
祭壇が壇上に飾られ、先輩がテルテル坊主のような衣装を着て、
献花や献火?(ローソクを供える)などをしていました。

そして、すぐに研修旅行がありました。
京都のお寺でいろいろ教えを聞くというものでした。
入学式、研修旅行、オリエンテーションが終わり、
いよいよ高校の授業がスタートしました。

朝7時に家を出て、夕方7時頃家に帰ってきました。
宿題(課題)も沢山出たようでした。

Kは入学したらクラブにも入ろうか・・・等
いろいろ話をしていました。
でも、普通の授業が始まって2日目です。
Kは登校を渋りました。

こっちは「え~~?!まだ2日目じゃない!」
とビックリです。
その後も登校を渋るのは変わらず、
スクールカウンセラーの先生に相談したり、
担任の先生も家庭訪問してくれたりしましたが、
Kはやっぱり学校へ行きたがりませんでした。

遅れてでも学校へ車で連れて行きました。
いろいろ話もしました。

K曰く、
「本気で学校へ行こうと思うんだけど・・・
 朝になるとどうしても行きたいと思っていた気持ちが、
 火に水をかけて消すように消えてなくなってしまうんだ。」
と自分の心を表現しました。
「だから、一生懸命火を燃やそうとしてもダメで、 
 結局水が現れていつも火を消してしまうんだ。」
「でも、例えばゲームとかはするじゃない?」
と私が聞くと、
「ゲームしたいという気持ちは地面のようなものなんだ。
 だから水がかかってもしみ込んで水は消えてしまうんだ。
 火が消えない程、燃えている木がしっかりしていると
 良いと思うんだけど・・・どうしたら良いか分からない。」

その話を聞いて、多分学校へ行こうと思う動機か゛弱いと
そういうことなんだと思いました。
「だって学校へ行って楽しいことなんかひとつも無いんだ。
 将来の為に行きたいとは思うんだけど、
 そうやって寝る前には火を点けてても、
 朝になるとどうしても水がかかって行きたくなくなるんだ。」
というのがKなりの表現でした。

友達とか、クラブとか、学校へ行きたいという気持ちの湧くものが
何かあると良いんだけど見つけられないという事でしょうか?

理屈は何となく分かりましたが、
大金を払って入学準備をしたこちらとしては、
はいそうですかと聞ける筈も無く
私はもう説得する、泣く、叩く、Kの好きな物を取り上げる・・・
と、取り乱しつつも、自分が考えつく事を全部しました。

前に受診した小児科とは別の
発達障害を扱う小児科を受診したり、
前に発達障害の相談に行った「クローバー」にも相談に行ったり。

でも、Kの火が消えないようにする方法は
見つかりませんでした。

水はなぜ朝になると現れるのか?
水が現れても火にかからないようにする方法はないのか?
でも、分かりませんでした。

結局、Kにとって地面となるものを見つけなければ、
ダメってことなのかな?
それもまだ良く分かりません。
けれど、高校は義務教育と違って
欠席が増えると単位が取れません。
あっという間に留年決定になってしまいます。

学校側とも何度も相談し、私の両親とも相談した結果、
留年が決定する前に自主退学することにしました。
Kは学校を辞めたくないと言いましたが、
毎月かかる費用も高かったし、
「○日までに学校へ行けなかったら辞めよう」
と決めた期限も過ぎたからです。

高校を自主退学した後、私の父が説明会に行ってきた、
福山市勤労青少年センターで行っている
ひきこもりの人向けの”社会活動体験プログラム”へ
参加することにしました。