Kが中学2年の冬休みのことです。
私は仕事を二つしていて毎日クタクタでした。
でもKが冬休みの宿題が出来ないと、
クラブのメンバー全員が次の大会へ参加出来ないという
問題が浮上しました。

年末年始といえど二つ目の仕事は忙しい時期です。
毎日私はKに「宿題出来てる?」と声を掛けました。

でも、Kは側に誰かが付いていないと宿題が出来ないのです。
多分簡単な宿題なのですが・・・
この”出来ない”がどうにもこうにもクリア出来ないのです。

なんでしょう?このやりたくない病は。
大概の子は、あまりに酷く叱られたり、
叩かれたりすると宿題をすると思うのですが・・・
どんなにしても、側に人がついていないと宿題出来ないんです。

頑なに、頑固な程に、宿題が出来ないんです。

そのうち酷く叱られることになるぞと分かっているハズなのに!

日にちは1日1日過ぎていき、仕方なく
最後には私も手伝い何とか形だけ宿題を仕上げました。

そうでもしないとKのせいでクラブの子全員が
大会に参加出来ないのですから。一生懸命練習したのに。

Kに対して私が叱る口調も内容もドンドンきつくなり
本当に酷い言葉まで言ってしまったと思います。

私にとって人に迷惑をかけるというのは最悪なことだからです。

しょっちゅう担任の先生から注意のお電話を頂き、
他の保護者の方から「しっかり見てあげて」と言われ・・・
追い詰められた私は、Kを追い詰めました。

そのうち、段々Kは体調不良を理由に学校を休むようになりました。

今度は休むことを責めました。
Kは段々私の言葉に返事をしなくなってきました。

どうして黙ってるの?!と聞くと
「どうせお母さんは俺の話を聞かないから」と言いました。


Kは言葉が少ない子でした。
また言いたいことをまとめるのに
すごく時間のかかる子でした。
すごーく返答を待っても返ってこないことも度々でした。

だから説教している方は、反省の弁を述べるでもなく、
反省の色を浮かべるでもないKの様子を見て
「分かってるの?!」と余計腹立たしくなりました。

2年後になってKから聞いた言葉ですが、
学校でも良く「叱られてるのに、ヘラヘラするな!」と
余計に怒られたそうです。
そんなとき先生は近くの机を蹴ってKを威圧したそうです。
でも、K曰く・・・
「叱られているのにヘラヘラする筈がない。
 俺はヘラヘラしていないのに、ヘラヘラするなと叱られても、
 どうすれば良いのか分からない。」

この、言葉が少ないとか、文章が書けないとか、
全て時間がかかるとか、
時間の感覚が薄い、先が読みにくい、
行動のコントロールが出来ない・・・

これらはKの特性によるもので
K自身は一応ちゃんとしようと心の中では思っていることや、
これらを解決するには”療育”という観点と手法が必要であることなど
このときの私は全く理解出来ずにいました。

何となく、
『やり方が違うんだろうな、ただ叱るだけではダメなんだろうな』
と感じていましたが、ではどうすれば良いかとなると
さっぱり分からないのでした。

誰もどうすれば良いか教えてくれないし
甘やかしだと批判されるし
子どもを叱ってもどうしても改善出来ないし
仕事が忙しくて側に四六時中ついていてやることは出来無いし・・・
八方ふさがりのまま時が過ぎ
不安を残したままKの中学2年生は終わったのでした。